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掌編小説集4 (151話~200話)

意思

作者: 蹴沢缶九郎

橋本学者の自宅に知り合いの小川がやってきた。小川は挨拶がてら橋本学者に質問した。


「先生、どうもご無沙汰しております。先生は最近どういった研究をされているのでしょう」


「物の意思だ」


「意思…ですか?」


小川は腑に落ちないといった様子で聞いた。


「そうだ、意思だ。私は生物に意思があるのなら無機物にも意思は存在するのでないかと考えたのだ」


「面白い考えですが、さすがにそれはどうも…」


「君の言いたい事もわかる。ところで君は九十九神というのを聞いた事があるかね」


「名前ぐらいは…。確か昔の妖怪と認識していますが…」


「うむ、まあそのようなものだ。昔の人々は物に神や精霊が宿ると考えていた。私はそこからヒントを得て、今回の研究を始めたのだ。例えば、スマートフォンがある。これを人間は自分の意思で操作していると思っているが、私の考えでは違う。スマートフォンの意思で人間に操作させているのだ」


博士は続ける。


「君は今日、自分の意思でここに来たと思っているだろうが、それは君の履いている靴の意思だし、今日着ているその服も、服の意思で君に着られている。物事の因果はそうして成り立っているのだ」


小川にはなんとも信じがたい理屈であったが、そこは高名な学者の言葉、妙な説得力があった。


小川がふと窓の外に目を向けると、ポツリポツリと雨が降りだしていた。


「参ったな、雨が降りだした。天気予報では晴れだったのに…。あ、ひょっとすると、これは天気の意思ですか?」


「違うな」


「では、てるてる坊主? いや、神ですか?」


身を乗り出して尋ねる小川に、橋本学者は頭を掻きながら答えた。


「いや、それも違う。これは単に予報がはずれただけだ。そこの見極めがまだ研究中であって…」

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