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政略結婚

作者: Snowy village

二人きりの部屋。

テーブル越しに向かい合うアキラとヒナコ。




アキラ 「……なぁ、俺たち続けられると思う?」


ヒナコ 「いやー、きついと思うよ。これ政略結婚だし。」


アキラ 「俺のこと愛してる?」


ヒナコ 「んー…、あんたこそ私のこと好き?」


アキラ 「質問を質問で返すんじゃねぇよ」


ヒナコ 「あんたの得意技でしょ?」


アキラ 「したことねえよ。」


ヒナコ 「出た出た。これが無くて七癖って奴ね。」


アキラ 「はいはい、もうそれでいいですよーだ。要するに、2人の総意は、政略結婚とかいう愛のない結婚はクソカスだ。で、いいんだよな?」


ヒナコ 「言葉遣いが汚い。直しなさい。」


アキラ 「はいはいすいませんすいません。」


ヒナコ 「はいは一回。」


アキラ 「すいませんもだろ?」


ヒナコ 「あーもう、話脱線してる!それでいいから進めて。」


アキラ 「進めてと言われてもだなぁ…。んじゃまあ、こうなった経緯とか考えて順を追って判断しようぜ。一応付き合い自体は長いよな。あーっと……。」


ヒナコ 「20年。」


アキラ 「そうそれだ。ていうかそんなにか。とてつもない腐れ縁だな。」


ヒナコ 「全くね。初めて会ったのはどんな時だっけ?」


アキラ 「たしか3歳。引っ越してきたときの挨拶に。」


ヒナコ 「覚えてるの?気持ち悪いな。」


アキラ 「お前だって覚えてんだろ?」


ヒナコ 「……別に。忘れたし。」


アキラ 「嘘つけ、絶対覚えてんだろ。」


ヒナコ 「忘れたの。わ、す、れ、た。」


アキラ 「あー、忘れたのね。じゃもうそれでいいよ。そんな出会いから、同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学を経てからの同じ高校ってわけだ。ご感想を。」


ヒナコ 「最悪ね。」


アキラ 「傷つくなぁ……。」


ヒナコ 「これ以上傷つく場所がどこにあんのよ?」


アキラ 「文字通り傷口をえぐってんだよなぁ……。」


ヒナコ 「んで、じゃあ、私たち、仲は良かったんだっけ?」


アキラ 「聞かなくても分かんだろ。」


ヒナコ 「これ、確認作業でしょ?分かることも口に出すの。」


アキラ 「分かった。ざっくり言って、俺はお前が嫌いだったし、お前は俺が嫌いだった。」


ヒナコ 「そうそう、あんたには散々嫌な目にあわされたしねー。お気に入りのぬいぐるみ壊されたりとか、勉強教えさせられたりとかねー。」


アキラ 「それはお互い様だろ。お前がある事無い事ふかしまくったおかげで女子に嫌われまくって、彼女も出来たことないんだぞ。」


ヒナコ 「逆にその顔面でよく好かれると思ったわね。」


アキラ 「うるせー。」


ヒナコ 「ま、その顔を十秒以上見つめていられるのなんて私くらいなもんよ。」


アキラ 「俺の顔超ハードル高いな。泣きそうになるわ。」


ヒナコ 「がんばれ!」


アキラ 「応援すんじゃねーよ。あー、何聞こうとしたか忘れた。」


ヒナコ 「何?質問忘れるって?馬鹿なの?」


アキラ 「すいません、現夫からイニシアチブを奪うのはやめてくださいー。」


ヒナコ 「じゃあ男らしいとこ見せなさい。」


アキラ 「男らしくなくて悪かったな…。デート的なことってしたことあったっけ?」


ヒナコ 「あった。名古屋の街をぶらり歩きとかいうふわふわした名目でいった気がする。」


アキラ 「うわ、よく覚えてんな。」



ヒナコ 「だって、初めて手をつないだ場所だし…(ボソリと呟く)」


アキラ 「え?なんて?」


ヒナコ 「べ、別に何でもない!」


アキラ 「んで何したっけ?」


ヒナコ 「イルミネーション見た」


アキラ 「あぁ、そうだそうだ。なんか思い出した気がする。急に前の日に明日イルミネーション見に行くって言われてビビったもん。」


ヒナコ 「あんたいつも暇みたいだったし、大丈夫かなーって。」


アキラ 「んなわけねぇだろ。結構忙しいですよ?俺。」


ヒナコ 「手ェつないだ気がする。」


アキラ 「マジ?お前と?」


ヒナコ 「(ショックを受けたような顔をする)は?私だって別にしたくてしたんじゃねぇし。人が多すぎたからATMと離れるの嫌だっただけだし。」


アキラ 「ATMと呼ぶのはやめなさい。たくさんの人が傷つきます。」


ヒナコ 「……あとは、キスしたね。」


アキラ 「結婚式の時な。それ以降俺の憧れだった、いってらっしゃいとお帰りなさいのちゅうはされたことがない。」


ヒナコ 「幻想ね。」


アキラ 「男はみんなロマンチストなの。夢を追いかけるのをやめた時こそ、俺の死に時だよ。」


ヒナコ 「大富豪の息子の発言とは思えませんね。」


アキラ 「成金起業家の娘さんに言われてもなぁ…。夢ありすぎの波乱万丈じゃないか。お前の親父さん見たくなりてぇよ。」


ヒナコ 「なんか夢があるの?」


アキラ 「そうだな、今は学生の身だけど、もっともっと会社をでかくして、世界長者番付に名前を載せるってことかな。」


ヒナコ 「うっわ。無理そ。」


アキラ 「……挑戦しない奴はみんなそう言うな。」


ヒナコ 「ま、期待せずに待ってるよ。」


アキラ 「おーよ、待ってろ。んで何だ?だいぶ脱線した気もするぞ。」


ヒナコ 「政略結婚として、結婚を強要された私たちが反発して、離婚するか否かって話だったわね。」


アキラ 「いやまぁ、それは親父たちが原因なんだけどなー。そもそもあのおっさん達仲悪くねーし。政略結婚いらねーだろ。」


ヒナコ 「お父さんたちは、私たちが離婚したいって言えば聞いてくれると思う」


アキラ 「だったらいいんだけどなー」


ヒナコ 「だって、お父さんたち、多分私の気持ちに気付いてるし…(ボソリと呟く)」


アキラ 「何て?」


ヒナコ 「ひとりごとー」


アキラ 「二人で話してんのにひとりごとって、俺話し相手としても不釣り合い?」


ヒナコ 「そうじゃない」


アキラ 「そうなんだろ?」


ヒナコ 「そうじゃないって」


(二人とも居心地悪そうに黙り込む)


ヒナコ 「…んで、どうする?離婚する?」


アキラ 「まぁなー、政略結婚ってのは現代にはそぐわんなー」


ヒナコ 「うー、あんたってさ、本当煮え切らないわよね。恋愛結婚がしたい!って言えばいいのよ。」


アキラ 「 …お前こそまた判断を俺に任せようとしてる。いつもそうじゃないか。結局責任逃れをしようとしてるだけだ。こういう時くらいお前が決めたらいい。従ってやるよ。」


ヒナコ 「決めたらいいって何よ。それに何?いつもはイエスマンでいないと不満げな顔するくせに、こういう時だけ責任逃れとかこじつけて。あんたってやっぱり最悪ね。」


アキラ 「はっ、どうせ俺は最悪だよ。女はいつもそうだ。被害者面しとけば、男のせいになると思ってやがる。」


ヒナコ 「そんな考え方のやつが、どうせ恋愛なんてできるはずないのよ。結局次もお見合い結婚でしょうね。」


アキラ 「いーや、出来るね。少なくともお前よりもいい女をものにできる自信がある。」


うつむくヒナコ。


ヒナコ 「…嫌い。」


アキラ 「知ってる。」


ヒナコ 「大っ嫌い。」


アキラ 「知ってるっての。」


ヒナコ 「…うぐっ、あんたなんか…大大大っ嫌い。」


アキラ 「な、何泣いてんだよ。」


ヒナコ 「あんたの顔が悪すぎて涙が出てきたのよ。見続けたせいね。」


アキラ 「俺の顔、業深すぎんだろ。いや……なんかすまん。」


ヒナコ 「なんで謝ってんの?」


アキラ 「悪いと思ったから。」


ヒナコ 「そんなんじゃ謝ったことになんないからね。謝罪の裏に必要なのは反省なんだから。」


アキラ 「 異論の余地もないな。じゃあ、もうここからはさ、腹を割って話すことにしよう。」


ヒナコ 「へぇ、今までは腹割ってなかったんだ。」


アキラ 「そう取ってもらって結構。俺はお前に言えてないことあるし、お前も、俺に言ってないことあるだろ。先言うか?」


ヒナコ 「んーん、全然まとまらない。」


アキラ 「はぁ、それなら俺もまとまらない。」


ヒナコ 「それならって何?先に言わせようとしてんの?」


アキラ 「いや、そういうわけじゃない。言葉を間違えた。ただ、おれもまとまんないだけ。」


ヒナコ 「じゃあ少し考える時間ね。何も話さず、自分の中で話を整理するの。」


アキラ 「そうしてみるか。」


ヒナコはうつむき加減に、アキラはヒナコの顔を見ながら物思いにふける。


ヒナコ 「なに私の顔見てんだよ。考えはまとまったの?」


アキラ 「別に俺が何見てたっていいだろうよ。」



ヒナコ 「まぁまぁ、人の顔をジロジロ見てたくせにこの言い草酷くない?」


アキラ 「わかったわかった、悪かったよ。反省もする。」


ヒナコ 「んで、私はまとまんないよ。」


アキラ 「じゃあ、俺話すよ。」


ヒナコ 「うん……。」


アキラ 「……んー、言えない。恥ずかしい。」


ヒナコ 「恥ずかしいことを言おうとしてたのかこの男!」


アキラ 「ええい、ちゃかすな!」


アキラ、深呼吸をする


アキラ 「わかった言うぞ。」


ヒナコ 「言って。」


アキラ 「離婚しよう。」


ヒナコ 「うん。」


アキラ 「そして、恋愛結婚として、もう一回結婚しよう。」


ヒナコ 「……いいの?」


アキラ 「いいに決まってんだろ。それとも嫌か?ごめんなさいか?」


ヒナコ 「ううん。」


(ひとしきり見つめ合った後、ヒロイン思いっきり抱きついて二人で後ろに倒れこむ)


アキラ 「いってー、お前何すんだよ。」


ヒナコ 「好きって言って?」


アキラ 「は?」


ヒナコ 「好きって言ってよ。」


アキラ 「あー、……好きだ。(横を向きながら)」


ヒナコ 「その言葉、やっっっっと、言ってくれた。待ってたんだよ。ずっとずっと昔から。」


アキラ 「待たせて、ごめんな。」


ヒナコ 「許さない。罰としてこれからも一緒にいなさい。」


アキラ 「あーあー、もう離れる気はねぇよ。理由もねぇしな。んでまぁ、言えよ、お前も。」


ヒナコ 「何を?」


アキラ 「俺のことどう思ってんのかだよ。」


ヒナコ 「はぁ、ハグされた上でこんなこと聞くとかあんた日本人じゃないんじゃない?」


アキラ 「お前の口から聞きたいんだよ。」


ヒナコ 「 ……大好き。」

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