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告白の情感進路(ルート)  作者: 奈瀬朋樹
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エピローグ

今日の授業が終わって一学期が終わり、今から夏休みが始まる。黒川さんとはぎこちないけどメールや電話が出来る関係になり、明日は近所の図書館で一緒に夏休みの宿題する予定だ。もちろんデートもしたいが試験前に2人で勉強をしたあの時間をまた再現出来る事も十分魅力的だ。しかも今回は黒川さんと並んで座る配置だ。もの凄く楽しみだし、宿題も早く終わりそうだ。


それに僕はまだ黒川さんから「好き」という返事を受けていないので無理に近づく事が出来ない。もしかしたら僕達はまだ彼氏彼女の関係じゃないのかもしれない。それでも2人の関係は良好なので多分大丈夫だ。黒川さんにも考えたり気持ちを整理する時間が必要な筈だ。


因みにあの後のカラオケは本当に酷かった。開始早々に全員が一番好きなラブソングをそれぞれ歌う事になり(磯村さんだけBL系)その後にナル部長が告白までの経緯説明をご丁寧にも僕が恋愛相談をした所から開始してきた。


ナル部長が身振り手振りで説明を進め、途中から僕を磯村さん・黒川さんをナル部長が演じながら話が進行していった。みんな凄い楽しそうだったけど、僕にはただの地獄絵図でした。せめて情報を最低限に絞って早く終わらせようとしたが、告白後の翌朝に黒川さんとの経緯をナル部長に全部喋ってしまっていたので、それすら叶わなかった。


告白のセリフはどうだったのと質問された時も一語一句そのまま口に出してみれば「重すぎだよ!」「もうそれ告白じゃなくてプロポーズじゃん!」「ふつーに返事に困りますよそれ」と散々な言われ様だった。告白は自分の気持ちを真っ直ぐ伝えるものだと思っていたが、正解ではなかった様だ。実際、黒川さん逃げちゃったし。


寸劇が終わった後は女子から色々とアドバイスを受けたが内容はよく覚えていない。だがナル部長から今後もアドバイスをすると言われた事だけは覚えている。その後は他の部員の恋愛状況をハイテンションで確認した後、カラオケ大会?は終了した。因みに部活連絡は一つもありませんでした。


ナル部長の胸元から僕の財布が救出されて返してもらった後、放心状態ながらも何とか帰宅する事は出来たが、ただいまを言う気力すら残っておらず部屋に直行した後に着替えもせずにベッドに倒れ込んでそのまま一日が終わってしまった。


翌朝に目覚めた後、黒川さんのメアド登録と返事・父への経緯説明を忘れていた事に気付いて激しく悶絶した後、急いで連絡と説明をする事になってしまい2日連続で朝ランニングが出来なかったが、その翌日からは無事に再開して、今日も朝に走ってから登校できている。全てが順調になって夏休みを迎える事が出来た。


     * * * * * * *


ナル部長から召集があったので帰宅せずに部室に向かい、ドアを開ける。


「やぁ優太君、やっぱり今日も無駄に暑いねー」


いつものテンションでナル部長が声をかけてきた。

まだ他の部員は来ていなかった。


「お疲れですナル部長、今日も髪綺麗ですね」


そう返事をした後に2人で笑ってしまった。


「告白騒動があった日の朝かよ! あの日は本当に大変で疲れたよー」


そう言われてしまったが、それはこちらも同じである。


「そういえば僕がナル部長を残して逃げた後、どうして図書室に居るって分かったんですか?」


告白騒動を思い返した時、その理由が分からなかったので質問してみた。


「だって図書室は優太君と黒子(くろこ)ちゃんがよく一緒にいた場所なんでしょ? だからそこに無意識に逃げ込んで感傷に浸っちゃってるかもなーって思っただけだよー」

「……知らない方が幸せな事実でした。てゆーか黒子ちゃんって誰ですか? 黒川さんの事ですかそれ」


黒川奈子を省略してそうなっちゃったの?

しかも僕より親しい感じがするんですけど。


「まぁメル友だしねー。黒子ちゃん裁縫得意らしいよー。冬に手編みマフラーとか期待出来るかもよー。私も教わって冬に作ろうかなぁ」

「ナル部長は大学受験ありますよね。今年の冬は自重して下さい。そして何で黒川さんのメアド知ってるんですか?」

「ふっふっふ、黒子ちゃんが告白騒動の事で3年クラスに来て謝罪してきた時に教えてもらったのだよ。明日は図書館デートなんだってねー」


僕だけじゃなく黒川さんまで掌握されてる。ちょっと怖いんですけど。


「ちゃんと干渉しすぎない様に気を付けるから安心していいよ。それより二人の仲が進展したら私の彼氏とダブルデートしようねー。凄く楽しそうだし」

「それが目的ですか。……まぁ確かに楽しそうですね」


そう感じた時、部室のドアが威勢よく開いた。


「なっつ、やっす、みー、ふぉおおおおおおおおおお」


磯村さんは今日も元気だった。すぐ後ろに丸山さんと雪下さんもいた。


「おー優太じゃん。彼女と進展あった? 私の助言は役にたったかね?」

「あれ悪戯メールじゃなかったの? 決め台詞は『俺様の美技に酔いな』って何!?」

「私は、こういう台詞を言われたい!」

「知らんがな!」


磯村さんの価値観がよく分からない。そして理解したくない。


「優太先輩、私のメールも良ければ参考にして下さいね」

「ありがとう雪下さん。女子視点の意見は凄く参考になって助かるよ」

「それは何よりです」


雪下さんは普通に女子力が高い印象だ。


「ゆ、優太先輩。私も何か分かったらメールします」

「ありがとう丸山さん。でも無理しなくていいからね。あと話せる範囲で色々連絡するから」

「了解です」


何故か告白以降、女子部員とメールする機会が増えた。以前は部活連絡くらいだったのだが今ではそれ以外のメールも届く様になった。嬉しい事だが僕が女子との付き合い方を知らないから皆で支えていこうという意思が動いている気がする。もしそうだとしても問題はないのだが、何故か複雑な気持ちになってしまう。


「うぃーっす。遅れてすまん」


最後に下野先輩がやってきた。


「遅いよー下野。女子を待たせるとは配慮に欠けるねー」

「掃除が長引いたんだよ。仕方ないだろ」


 部員が揃ったのでみんな席に座ってナル部長が前に出る。


「んじゃー夏休みの部活日程の確認するよー。予定ある人は言ってねー。今なら大体調整できるからー。あと明日は部活ないから安心してねー」


最後は僕の顔を見て言われた。普通に恥ずかしかった。


「あと集まれたら花火大会とかプールとかみんなで行こうぜ! イベント表持ってきたよー」

「いいですねー。高校生の青春って感じしますね」


雪下さんが嬉しそうに賛同した。周りも好感的だ。みんなで予定確認をしているだけなのに凄く楽しい。夏が始まった感じがする。それに今年の夏は今までと違う。本当に楽しみだ。




これからの関係を大事にしていこう。黒川さんの事はもちろんだが、今の部活メンバーも同じくらい大事に感じる。高校を卒業しても連絡しあえる仲になれたら嬉しいなぁ。それに黒川さんと破局したら一生ネタにされる。そんな未来は欲しくない。何より告白自体もう二度とやりたくない。あんな大変な思いは一生に一度で十分だ。だから、大事にしていこう。

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