10.自虐と後悔
人通りが少ない場所を走り続け、息が切れ始めた頃に図書室が見えたので、中に中に入る事にした。受付をした後に周りを見渡したけど、人は殆どいなくて、一番奥の本棚まで移動して適当に本を一冊取った後に壁に寄り掛かる。視線と人の気配がない事を確認した後、体がゆっくりと下がって腰が地面に到達する。
幸いにも泣く事はなかったのだが、大きな疲労感と気だるさが残っており消える気配がない。それでも呼吸が整ってきて落ち着きを取り戻す事が出来たのだが、やらかした事に気付いてしまった。
「ナル部長を残して逃げてしまった」
あの後、どうなってしまったのだろう。
もの凄く気まずくなった事だけしか分からない。
僕が逃げ出すまで二人に動きはなかったし追い駆けられる気配もなかった。つまり二人があの状況で取り残された事になるのだ。最悪としか表現しようがない。今後はもうナル部長に絶対服従する位の誠意を見せないと駄目な気がする。
もう今すぐ帰りたいと思ったが、まだ動く気にもなれない。どうしてこんな事になってしまったのだろうという気持ちが体を重くしている。考えなければいけないが考えたくなかった。原因が告白であり、後悔している自分がいるからだ。
告白が早急だった事は百も承知だった。だが試験が終わった事で一緒に図書館で勉強をする流れも途絶えてしまったのだ。接点がなくなり携帯番号も知らない状態で夏休みを迎えればただの思い出として終わってしまう可能性が高かった。そして夏休み前にメール連絡が出来る様な関係になるには告白という強行策に出るというのが考え抜いた末に出した答えだった。
告白しなければ自然消滅する関係だと思った。
だから勝負をした。
そして失敗に終わったのだ。
力技だった今回の告白が正しかったと思えば思う程、後悔という気持ちが膨らんでしまう。だから今は何も考えたくないし動きたくなかった。




