スマイル あげいん
何気ないことで、変化を実感するのは難しいのか?みたいなことがテーマです。
ケニーは、工場から帰る途中にコンビニに寄った。
ピザパンを買って、食べる。温かかったら美味しいのにと、いつも思う。
同じ国の仲間同士で、酒を飲んでいると、もう朝だった。
工場で働いて2年経つが、日本人の仲間はいなかった。工場では重い物を運ぶことが多い。
ケニーは、指示された通りに今日も物を運ぶ。
工場の外では、時々、女の子が遊んでいた。工場長の娘だった。
ケニーは、いつも女の子が笑っているのが不思議だった。ある日、ケニーは工場長に呼び出された。解雇通告だった。今月末で離職が決定した。
31日の夕方。
この荷物を移動したら、工場から去るだけだ。
工場長の娘がいた。
やはり楽しそうだった。
たまたまケニーが荷物を置きたい場所で遊んでいた。ケニーは言った。
「ドウシテ、ワラッテイルンデスカ?」
女の子は返事をした。
「笑う門には、福がくる!」
そう言って、やはり笑った。
ケニーも、笑った。
(ナニヲ、イッタンダ?)
そしてケニーは、工場を後にした。
いつものコンビニで、ピザパンを買おうとレジに並んだ。
工場長の娘の笑顔が、ふいに脳裏を過った。
ケニーは、レジが自分の番になっていることに気付かなかった。
そして自分が微笑んでいることにも気付かなかった。
コンビニの店員の
「温めますか?」
の一言でケニーは我に返った。
fin.
世界に、もっと友達が欲しい筆者の願望が自然と出たかもしれません。