第五話
色々なことを教えてもらった。
あの力のありそうながっちりした青年の名前はレスター。
隣町の工事現場で働いているそうだ。
口調はぶっきら棒だが、優しいひとだった。
ばぁちゃんにはベネットという子供がいていまは国軍に所属していてたまに帰ってくるらしい。
今そのベネットの部屋を模様替えして僕の部屋として使わせてもらっている。
おばあさんとレスターは人間だ。
シュンは魔族。ベネットも魔族。
あ、ちなみに僕も魔族。
魔族は特有の瞳を持っている。
それ以外見た目は人間とかわらないが、魔力を持っていて魔法が使えるんだとか。
魔法の種類は人それぞれでシュンはシャボン玉のように魔力を膨らませるんだといっていた。
全く想像できずに首を捻っているとこんど見せくれるといってくれた。
魔法を見たことがないので楽しみだ。
僕は一体どんな魔法を使えるのだろう?
「そっちに魚いったぞー。」
「あ!…」
あれから1週間がすぎた今、僕たちは今日の夕食の魚を近くの川で調達中。
綺麗な川だ。
初めて川に入った時、水面は短く髪を切りそろえられた僕を写した。
まるで別人のようだった。
ばぁちゃんが切ってくれたのだ。
なんだか今までの自分とは違うような、なんでもできるような、そんな気がした。
2、3回魚を取りにきたことがある。
いつもは僕が追いかけてシュンが捕まえのだが、最終的には一人で捕まえなきゃと言われ、今日は僕が捕まえる係。
川の下流でシュンが上流から追いかけてくる魚を待つ。
きらりと背中を光らせながら、流れにのって魚が泳いでくる。
タイミングを見計らって網を魚に向けて走らせる。
が、捕まらない。
シュンが簡単そうに捕まえるから、簡単なのかと思ったらどうやらそうではないらしい。
するすると僕の手やら足やらを抜けて行くのだ。
一体何匹逃がしただろう。
「はい!時間切れ!」
顔をあげる。
シュンが山にいまにも隠れようとしている太陽を指差した。
始めた時はまだ真上らへんにあったはずなのに…
ずっと川に入っていたようだ。
結局まだ1匹もつかまえていない。
「ちゃっちゃっと捕まえて帰ろう!」
そういうと、右手を口の前に持っていき、人差し指と親指をくっつけて円をつくった。
よくみると円のなかが川の水面のように輝き、波打っていた。
円のなかに、シュンがふーっといきを吹き込むとシャボン玉のように膨らみ、細い筒のようにのびていった。
シュンが円をすぼめると、一瞬にしてそれが銛に変わった。
足下の逃げる魚を仕留めると、2匹、3匹と次々に捕まえて行く。
役目を終えた銛は先の方から砂のようになり、輝きながら風に吹かれてとばされていった。
魚を網にうつす。
「はいっ!完璧!」
にっこりと笑う。
不意に理解した。
あぁ、これが魔法なんだ、と。
頬が熱くなる。
「これが魔法…」
「そー。まだ練習中だからまだそんなに長くもたないけどなー。」
すごかった。
僕も魔族なんだからできるんじゃないか。
やってみたい!
「僕に教えて!」
シュンは困ったような顔をした。
「んー、でも一人一人違うからなぁー。俺には教えらんないんだよー。」
そうだった。
自分で見つけていくしかないのか。
でもどんな風に探せば…
シュンが思い出したようにいう。
「あ!でも俺、ばぁちゃん隣町につれてかれて、その店で俺がどんな魔力なのか教えてもらったんだ。」
「じゃあ!そこに行けば…」
「わかるかもな!」
シュンがにっと笑った。
胸が躍る。
「ばぁちゃんに頼んでみようぜ!」
「うん!」
家までの道を走って帰った。