第一話
血をこぼしたような紅色の空の下、俺は一日の仕事を終えて、帰宅途中にばったり会ったシュンと、体に残る軽い倦怠感と共に、馬車の轍が続く薄暗い林道を歩いていた。
少しいった所に烏の目が6つギラギラと輝いている。闇に溶け込み、何かに群がっているそれは、こちらをじっと睨みつけているようにみえる。
人々は忙しなく、見向きもしない林には、紙屑に始まり、犬猫、ソファーに至るまで、様々なものが捨てられる。そのためこの辺りは烏の恰好の餌場になっていた。
餌に群がる烏達をあまり見ないように、シュンには普段から言い聞かせてはいるが、好奇心大勢な年頃の子供だ。やはり好奇心が勝ってしまうのだろう。じっと見つめていた。
例のごとく注意しようと口を開いたその時。
「ねぇ、あれって…」
シュンはそう言って烏達を指差した。
その指のさきを見る。
烏がとりかこむそれ、ぼろ布の隙間からは小さな人の手がのぞいていた。背筋がぞっとした。
……おいおい、死んでないだろうな?
鞄を肩から降ろし、道に転がっていた枝を武器にとる。倦怠感など欠片も感じてはいなかった。
「ここでおとなしくしてろよ? 」
シュンに言い聞かせる。道を外れ林の中へと歩みを進める。烏を追い払うため、わざと音を大きくたてて近づく。
しばらく睨み合いを続ける。少しずつ縮まる距離。痺れを切らした烏が、バサバサと力強い音を立てて1羽が飛び立ったのを合図に、散り散りに飛んでいった。
それを見て走り、駆け寄る。すっとそれに手を伸ばす。うるさく鳴り響く自分の鼓動が俺を支配する。抱き起こすと、シュンよりも幼い、物乞いか何かだったのだろうか、痩せ細った少年だった。
……息はある。ほっと息をついた。体の緊張がそっと吹いた風にさらわれていった。忘れていた倦怠感が力を増して、どっと襲ってくる。
さて、こいつはどうするべきなんだろう…まぁ、取りあえずつれて帰れば、ばぁちゃんがなんとかしてくれるか…
軽い少年を背負い、ゆっくりとシュンのもとへ戻る。シュンは俺が戻って来るのをみて走って駆け寄ってきた。
「……だれ? それ」
俺の荷物を持ったシュンが背中をのぞきこむ。
「さぁ? 誰なんだろうな」
俺が首をかしげると、シュンも首をかしげ静かに笑いあった。
何時の間にか太陽が隠れ、空には星が輝いていた。背中の温もりを感じ、あまり揺らさないように気をつけながら、家への道を気持ち少し速めに歩いた。
読んでくださった方々ありがとうございます!
小説を書くのは初めてです。
わからないことだらけなのでアドバイス等よろしくお願いします!
誤字脱字等のミスについても教えていただけると嬉しいです。
更新のペースは速くないと思いますが、どうぞよろしくお願いします!
感想お待ちしています!
まだまだ始まったばかりですが… 笑