言い放たれた真実
いったいどうなっているのだろう。
ただでさえ今信じられない現象が起こっているのに、夢で出てきた声がなぜ・・・
銀髪の男が完全に出てくると、周りの空間の歪みがなくなり、元に戻った。
「・・・え?ど・・どうなってんの!?」
美雪はわけがわからずに周りを見渡した。
元に戻った空間は、まるで何もなかったかのようにいつも通りだった。
美雪が呆然としている間に、男が突然動き出す。
「あ、ちょっと待って!!」
美雪は慌ててそう言ったが、男は少しも耳を傾けずにどこかへ行こうとした。
まるで、こちらには全く気が付いていないかのように。
「ちょっと!!待てっていってんじゃん!!」
美雪は少し怒って男の腕を思いっきり引っぱった。
倒れるぐらいの勢いで。
振り向いた男の顔はかなり驚いている。
「てめぇ・・・俺が見えるのか!?」
「・・・は?何言ってんの?」
美雪はわけがわからないと言うように目を点にしたが、相手の方は突然美雪を振り払って腰に掛けていた刀を抜いて、美雪に向けた。
思いもよらなかった行為に美雪はもっと驚いた。
「ちょ・・ちょっと!!・・いったい何のつもり!?」
「てめぇ何者だ!!」
「は・・・はい?」
「さっさと言え!!」
言っている意味がわからない。
「何者って・・・ただの高校生なんですけど・・・」
「そんなに死にたいのか!?」
「ええええええ!?!?訳わかんないんですけど!!」
もはやパニック状態だ。まぁそれもそのはず。
突然訳のわからない事を言って、刀突きつけられたのだから。
だが、相手はどんどん怒りを募らせてくる。
「・・・・・・・・」
「あのさ!!何かわたし悪い事したの!?」
美雪は必死にそう言った。
「誰だか知らないけど、わたし悪い事した覚えないよ!?」
「・・・何言ってんだ?てめぇ・・・」
相手は何を言ってるんだお前という顔をしたが、突然思い立ったように声を上げた。
「お前・・・まさか・・・さ・・・・」
何か言おうとした瞬間に、また周りの景色が歪み始めた。
「クソ!!追いつかれたか!!」
「・・・!?!?」
いったい何が・・・と言おうとした瞬間に、巨大生物が数匹、歪んだ空間から出現した。
「ええええええ!?な・・何よこいつら!!」
さらにパニック状態に陥る美雪。
「んなもん見たらわかるだろ!!化け物だ化け物!!」
「わかるわけないじゃん!!」
美雪のツッコミを半分スルーして、男は続けた。
「あ〜もういい!!逃げるぞ!!」
「ぎゃあああ!!何すんのよ!!」
「うるせぇ!!置いてくぞ!!」
見た事もない化け物が現れたかと思うと、突然襲いかかってきた。
男は咄嗟に呆然と立ちつくしている美雪を抱えると、屋上のフェンスをよじ登った。
「え?ちょっと待って!?何する気・・・?」
美雪の質問に答えずに、男は美雪を抱えたまま真っ直ぐ地面に向かって飛び降りた。
「!!?〜〜〜〜!!!!!」
怖さに何も言えない美雪。
だが、急に落ちているという感覚がなくなった。
「・・・飛んでる・・・?」
男の方を見ると、背中から翼が生えている。
真っ黒で、カラスのような翼。
しかし、その翼はかなり傷ついていた。
「え・・?ちょっといったいどうなってんの・・・?」
「少し黙ってろ!!」
美雪にそう怒鳴りつけると、男は猛スピードで降下し始めた。
「〜〜〜〜〜〜!!!!??!!!」
一瞬、意識が飛んでいきそうになった。
そのあまりの速さに、巨大生物は二人を見失ってしまったようだ。
男が着地したところは学校から遠く離れた木の茂った寺の裏側。
たった一瞬だったのに、だいたい1kmぐらい離れたところに来てしまった。
「ねぇ・・・いったいあんたって・・・」
「・・・っ!!」
質問しようとしたとたん、男は急に苦しみだした。
美雪は驚いて駆け寄り男を見たが、体中痣だらけで、翼は大きな傷があった。
「手当てしないと・・・」
「触るんじゃねぇ!!」
男の身体に触れようとした瞬間、思いっきり手を弾かれた。
「なによ!!手当てしてあげようとしてんじゃない!!」
「大きなお世話だ!!・・・って痛てぇ!!!!なにしやがる!!」
傷口を軽く弾くと、飛び上がるように男は声を上げた。
「ちょっと待ってて。化膿したら大変でしょ?」
そう言って美雪は相手の有無を問わずに簡単な手当を施した。
少し暴れられてやりにくかったけど・・・。
「これで良し!!・・・・で、聞きたい事があるんだけど。」
手当を施すと、美雪はそう言って男の方をじっと見た。
「あんた・・・いったい何者なの?」
美雪の質問を聞いた男はふっと笑ってこう言った。
「それはそのままてめぇに返すぜ。てめぇこそ何者だ?」
質問を質問で返されてしまった。
「ちょっと!!ちゃんと答えて・・・」
「俺の姿はこの世界の人間には見えないんだよ。」
美雪の顔色が変わった。
それじゃあ・・・わたしは・・・・
「お前は、波長的にも、俺たちの世界の人間なんだよ。」
突然の言葉に、美雪は呆然と立ちすくむしかできなかった・・・。
「う・・・そ・・・・・・・・・・」
何かが砕ける・・・音がした・・・・・・