第25話:宇宙人襲来! 聖女、おやつを奪われ銀河系を再定義する
月面の露天風呂(青いマナの湯)。
私は、宇宙の絶景を眺めながら、最高級の「スルメ」を火に炙っていた。
地球は相変わらず騒がしいが、ここなら誰も私を「神」とは呼ばない。……AIのマザー・ステラを除いては。
「マスター・エルゼ。残念なお知らせです。貴女が掘り当てた『青い光』に誘われて、銀河系最大の軍事国家『ヴォルガ・ゴルド帝国』の艦隊が接近中です。数にして約三万隻。彼らはこの月を『宇宙の心臓』と見なし、占領を試みています」
「……はぁ? 何よそれ、せっかくお湯加減が最高になったところなのに! 三万隻? 邪魔よ、どっか適当なブラックホールにでも捨ててきなさいよ!」
私は、手に持っていた「食べかけのポテトチップスの袋」を、苛立ちのあまり宇宙空間(といっても今は大気があるが)に向かって投げ捨てた。
――これが、全宇宙の歴史を終わらせる「一撃」になるとは、誰が想像しただろうか。
私が投げ捨てたその袋。
そこには、私の「動きたくない」という強力な拒絶の魔力と、月の温泉から吸収した「始源のマナ」が残留していた。
袋は空中で、超新星爆発にも匹敵するエネルギーを宿した『質量兵器』へと変貌。
音速を超え、因果を超え、一直線にヴォルガ・ゴルド帝国の旗艦へと突き刺さった。
「な、なんだあの光る物体は!? 盾が紙のように切り裂かれるだと!? ……ぐわああぁぁぁ!!」
旗艦、沈没。
それだけではない。袋から飛び散った「ポテトチップスの粉(塩分)」が、帝国のナノマシン兵器と化学反応を起こし、艦隊全体のシステムを「エルゼ様万歳」という讃美歌のループへと書き換えてしまった。
「お、おのれ……。たった一枚の『乾燥した芋』で我が艦隊を無力化するとは。……そうか。これは警告だ。『お前たちの文明など、私の食べかす以下の価値しかない』という、神からの宣告なのだ!!」
帝国皇帝は、モニター越しに私の「お風呂でのびのびしている姿」を見つめ、恐怖と畏怖で失禁した。
「我々は愚かだった! 宇宙の理を支配しようなどと! 聖女エルゼ様……貴女こそが、銀河の新たな法だ!! 全艦、武器を捨てろ! 今日から我々は、彼女の安眠を守るための『宇宙の守衛』となるのだ!!」
――わあぁぁぁぁぁ! エルゼ様、銀河を征服されたぞ!!
地球では、空に浮かぶホログラムが「帝国軍をポテチで粉砕するエルゼ様」の姿を実況中継していた。
「見たか! 聖女様は一言も発さず、ただ『ゴミを捨てる』という動作一つで、宇宙最大の脅威を排除された!」
「『どっかへ行け』……。それは、『暴力の連鎖から解き放たれ、新たな次元へ進め』という神の慈愛!!」
財務大臣セラフィナは、帝国の全技術(特許)がエルゼ個人に譲渡されたという通知を受け、白目を剥いて倒れた。
「……無理。もう経済学とか無理。全宇宙の富が、エルゼ様の『ポテチの袋』一つに集約されちゃったわ……」
一方、月面。
私は、マザー・ステラが勝手に翻訳した「銀河全域・降伏宣言」を聞きながら、スルメを喉に詰まらせていた。
「……え、待って。なんで私のゴミが銀河最強の艦隊を壊滅させてるの? しかも、なんであのタコみたいな異星人たちが、私の庭で『警備員』の面接を受けてるわけ!?」
マザー・ステラが無機質に告げる。
『おめでとうございます、マスター。貴女は今、銀河系に存在するすべての知的生命体の「唯一絶対の主」として登録されました。これより、全宇宙の全ての出来事は、貴女の「あー、面倒くさい」という溜息一つで決定されます』
「……嫌。そんなの嫌よ! 責任が重すぎるわよ!!」
私は絶望し、要塞のコントロールパネルにある「一番大きくて、絶対に押しちゃいけなさそうな赤いボタン」を、やけくそで叩いた。
「もう知らないわ! 全部リセットしてやる! 私はただ、誰にも邪魔されないところで寝たいだけなのよぉぉぉ!!」
――瞬間。
月が、そして銀河が、真っ白な光に包まれた。
(よっしゃ! 自爆成功!! 今度こそ、私は『無』になれるのね!!)
だが、そのボタンの正体は、宇宙の寿命を強制的に一周させ、全次元を「再構成」する『ビッグバン・リスタート』のスイッチだった。
エルゼの「究極の家出」は、ついに宇宙の法則そのものを破壊し、彼女を「物理法則の神」という、逃げ場のない永遠の座へと押し上げてしまったのである。
「ゴミを投げたら銀河が降伏した」の巻。
エルゼが「リセットボタン」を押したことで、物語はいよいよ最終回へ!
次、いよいよ完結です。
「ポテチの粉で艦隊が沈没w」
「自爆ボタンがビッグバンのスイッチだった絶望w」
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最終回:
「聖女エルゼの絶望:宇宙そのものになったら、寝返りを打つだけで新星が生まれる件」
エルゼが辿り着いた、究極の「スローライフ(永劫労働)」の結末とは!?
お楽しみに!




