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第24話:月面開拓? いえ、ただの穴掘りです(※温泉を掘り当てた)

「……汚い。最悪よ。宇宙の旅がこんなにススまみれになるなんて聞いてないわ」


 月面、新緑の草原。私は、さっきまで乗っていた「鉄の筒(宇宙仕様ドラム缶)」から出た黒い煙で、顔も服も真っ黒になっていた。

 空気はある。草原もある。だが、石鹸せっけんとシャワーがない。

 これじゃあ、バカンスどころか「月面遭難者」じゃないの。


「マスター・エルゼ。お疲れのご様子ですね。当要塞の全機能を用いて、貴女をリフレッシュさせる準備がございます。対物質消滅波による『汚れの原子分解』を実行しますか?」


 空中に浮かぶAI、マザー・ステラのホログラムが、無機質な声で提案してくる。


「やめてよ! 体が分解されちゃうじゃない! 私が欲しいのは、そういう科学的なやつじゃなくて……もっとこう、42度くらいの、ちょっと熱めのお湯なのよ! 肩までどっぷり浸かって、『あ〜……』って言いたいの!」


 私は、要塞のロビーに飾ってあった「銀色に輝く細長い棒」をひったくった。

 教会の地下で『絶対に触れてはならない、大地の龍を呼び起こす杖』とか書かれていた気がするが、見た目がちょうどいい「スコップ」っぽかったので拝借してきたのだ。


「よし。ここ、要塞のど真ん中だけど、土が柔らかそうだからここを掘るわ。私の勘だと、この地下には絶対『いいお湯』が眠っているはずよ!」


 私は、その杖を地面に突き立て、渾身の力で体重をかけた。

「出ろ! お湯! 私のストレスを全部洗い流す、最高の源泉パラダイスよぉぉぉ!!」


 ――ズドォォォォォン!!!


 月全体が、かつてないほどの激震に襲われた。

 私が突き立てたのは、古代銀河文明が星のコアに直接アクセスするために作った『始源のオリジン・キー』。

 私の「お湯が欲しい」という執念が、鍵を通じて月の中心部に眠っていた「超高濃度魔力流体」――別名『マナの海』をダイレクトに貫通したのだ。


 噴き出したのは、お湯ではなかった。

 それは、目も眩むような青白い光を放つ、液体状の純粋エネルギー。

 

「……あ、熱っ!? なにこれ、青いんだけど!? しかもなんか、浸かった瞬間に魔力が全快して、寿命がさらに千年くらい延びた気がするんだけど!?」


 私が「青いお湯」に戸惑っている間、AIマザー・ステラは、その場でシステムを緊急アップデートし始めた。


『……信じられません。失われた宇宙の根源エネルギー『ウル・マナ』を、ただの温泉として掘り当てるとは。……マスター・エルゼ。貴女が掘ったこの穴から溢れるエネルギーだけで、地球をあと三千回は再起動させることが可能です。……当要塞は、これより全宇宙への『無限魔力供給拠点』として、エネルギー革命の先陣を切ります』


 一方、その頃。

 地球上の人々は、月が突如として「青い太陽」のような輝きを放ち始めたのを目撃していた。


「……見たか! 聖女様が、月面に『青い光』を灯されたぞ!」

「あれは……マナの波動だ! 地球上で枯渇しかけていた魔力が、月から無線充電ワイヤレスで降ってきている! 聖女様は、月へ行ってもなお、我々の生活(光熱費)を心配してくださっているんだ!!」


 財務大臣セラフィナは、王宮の観測室で泡を吹いて卒倒していた。

「……計算不能よ。あんな莫大なエネルギーがタダで供給されたら……。石油も、石炭も、魔石も全部ゴミになるわ! 聖女様、貴女は一瞬で世界のエネルギー産業を完封し、人類を『完全無償のエネルギー社会』へ招待されたというの……!?」


 ――わあぁぁぁぁぁ! エルゼ様! エネルギーの女神様!!


 地球上では、電気代と魔法触媒代が無料になったことで、史上空前の「全産業無料化」が始まり、人々は「一生働かなくていい!」とさらに怠惰な喜び(信仰)を爆発させていた。


 月面では。

 私は、青く光る温泉に(仕方なく)肩まで浸かり、世界樹から落ちてきた葉っぱを浮かべて、虚空を見つめていた。


「……ねえ。これ、確かに疲れは取れるけど……。浸かっているだけで、私の魔力が勝手に宇宙中に発信されてる気がするんだけど。……これじゃあ、私の居場所が銀河中のエイリアンにバレるじゃないのよぉぉぉ!!」


 私の「お風呂に入りたい」という願いは、全宇宙のエネルギーの法則を書き換え、人類を不労所得の極地へと誘い。

 そして私の「居場所バイタルデータ」を、全銀河系に向けて最強の電波で宣伝してしまうという、最悪の自爆(奇跡)を招いてしまったのである。

「お風呂に入りたい」と言って杖を刺したら、

「宇宙の根源エネルギー(マナ)」を掘り当ててしまい、地球の光熱費が永久に無料になった件。

もはや、エルゼが「自分の汚れを落とす」だけで、世界から「エネルギー問題」が消滅してしまいました。


さらに、この青い光が「全銀河への招待状」となってしまい……?


「温泉を掘る道具が『始源の鍵』w」

「月の温泉に浸かると寿命が延びる(絶望)」

と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をよろしくお願いします!


次回、第25話:

「宇宙人襲来! 聖女、おやつを奪われ銀河系を再定義する」

ついに、光り輝く月を目指して、遠い銀河から「本物のエイリアン」がやってくる!?

お楽しみに!

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