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第22話:第2章・完:全世界聖女連合(エルゼ・ユニオン)の発足

新大陸『エルゼ・メトロポリス』の黄金神殿。

 私は、窓の外に広がる「たった一晩で完成した超近代都市」の夜景を眺めながら、遺書をしたためていた。いや、正確には「全人類への最後通牒」だ。


(……もう無理。物理的に逃げ場がないなら、社会的に死ぬしかないわ。人類全員が『こいつについて行ったら破産する』と絶望するような、最悪の要求を突きつけてやるんだから!)


 神殿の広間には、旧大陸の諸国の王たち、教団の幹部、そして魔王軍の投降した将軍たちまでもが集結していた。彼らは皆、私の「神託」を、一言も漏らすまいと息を呑んで待っている。


「……皆さん、聞きなさい。私は、この新大陸の統治を引き受ける条件として、以下の三点を要求します」


 私は、あらかじめ練りに練った「クズによる、クズのための、クズな要求」を読み上げた。


「第一に、全世界の全国家予算を、私の個人口座に集約すること! 第二に、今後一切の『労働』を禁じ、全員が私と同じようにポテトチップスを食べてダラダラ過ごすこと! 第三に、私を『神』と呼ぶのをやめ、『ただの居候』として扱い、三食昼寝付きの生活を永遠に保障すること! ……以上よ! これが飲めないなら、私は今すぐこの大陸を海に沈めるわよ!」


 どうだ。

 国家予算の私物化。勤労の義務の廃止。そして「神」としての責任放棄。

 これほどの暴論を吐けば、合理主義者の国王フリードリヒも、経済にうるさいセラフィナも、正義感の強いアイリスも、愛想を尽かして私を追放してくれるはず。


 ……静寂が、広間を支配した。

 一分、二分。

 やがて、フリードリヒ国王がガタガタと震えながら、膝から崩れ落ちた。


「……おお……。おおお……! なんと……なんという、慈悲の極致……!!」


「(……は?)」


「予算の集約……それは、国境という概念を消し去り、全人類の資産を共有財産とする『世界連邦』の創設! 労働の禁止……それは、魔導技術による完全自動化社会を構築し、人類を『生存のための苦役』から解放するという宣言! そして『居候』……。それは、神が支配者として君臨するのではなく、家族として人類に寄り添うという、究極の共生の意志……!!」


 フリードリヒの言葉に、財務大臣セラフィナが狂ったように電卓を叩いて追従する。


「計算が合いましたわ! 全世界の軍事費をゼロにし、エルゼ様の『怠惰(効率化)』をシステム化すれば、全人類が一生遊んで暮らせるだけの富が、複利で無限に増え続けます! 貴女は、たった三か条で、数千年の歴史が解決できなかった『貧困』と『戦争』を根絶してしまわれた!!」


 ――わあぁぁぁぁぁ!! エルゼ様! 永遠の平和の母!!


 広間は狂乱の渦に包まれた。

 アイリスは「エルゼ様と家族になれる……居候……素晴らしい響きです……」と鼻血を出して倒れ、天使ルミニエルは「ついに地球そのものが、天界より高度なパラダイス(ニートの楽園)になったか……」と悟りを開いている。


 その日のうちに、全世界の国家は解体された。

 そして、私の名前を冠した唯一の統治機構『全世界聖女連合エルゼ・ユニオン』が発足。

 私は、全世界の全資産を所有し、全人類を「扶養家族」とする、名実ともに地球のあるじに据えられてしまった。


「……ねえ。私はただ、お金を独り占めして、誰も働かずに私を養ってほしかっただけなの。なんで私が『人類を経済的苦痛から救った伝説の解放者』になってるわけ?」


 私は、新大陸の中央銀行の金庫(という名の私の寝室)で、山積みの金貨の上に寝そべり、虚空を見つめた。

 窓の外では、私のホログラムが「全人類の保険証」の裏面にも印刷され、病気になれば「エルゼ様のお陰で無料です!」、お腹が空けば「エルゼ様のお陰でパンが降ってきます!」と、世界中が私の名で埋め尽くされている。


 ……もう、逃げ場はない。

 この星のどこへ行っても、私は「神」であり「家族」であり「給料袋」なのだ。


「……いいわ。わかったわよ。地球がダメなら、もうあそこしかないわね」


 私は、黄金のバルコニーから夜空を見上げた。

 そこには、地球の奇跡を冷ややかに見つめる、無機質な「月」と、その先に広がる「宇宙」があった。


「あそこに逃げれば、流石に誰も追ってこれないでしょ。……待ってなさいよ、宇宙。私のバカンスは、これからが本番なんだから!」


 エルゼは知らなかった。

 彼女が「月」に指を差した瞬間、それを見た魔導科学者たちが「聖女様が宇宙開発フロンティアを命じられた! 月をエルゼ様の別荘に改造するんだ!!」と、大陸間弾道ロケットを「観光用シャトル」に改造し始めたことを。


 第2章『現人神、うっかり世界を統一して人類を養う羽目になる』――完結。

 物語は、星の海を舞台にした第3章「聖女、月を蹴ったら銀河帝国が建国された件」へと、絶望の加速を続けていく。


(どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

第2章、完結!

「世界中を私の口座にして!」と言ったら「世界統一連邦の誕生」に。

「みんな働くな!」と言ったら「高度な自動化社会ベーシックインカムの実現」に。

エルゼのクズな要求が、人類を「不労所得の楽園」へと導いてしまいました。


もはや地球上にエルゼを「ただのクズ」と呼ぶ者は一人もおらず、

彼女の「ただの居候になりたい」という願いは「全人類の守護神」という名の永遠の拘束に書き換えられました。


第2章までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

「月の別荘(帝国)が気になるw」

「エルゼの心が宇宙規模で折れるのが見たい」

と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をよろしくお願いします。


第3章、宇宙進出編

「聖女、月を蹴ったら銀河帝国が建国された件」

お楽しみに!

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