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第21話:神のバカンス:無人島へ逃げたら、そこが新大陸の首都になった件

「……ふふふ。勝った。今度こそ、私は勝ったわよ」


 私は今、夜の潮風に吹かれながら、一人乗りの小さなボートの上で歓喜の震えを噛み締めていた。

 背後に遠ざかるのは、私の顔が空に浮かび、ポテトチップスが聖遺物として崇められる狂気のソルステイム王国。

 私は、宝物庫の隅に転がっていた「一番ボロくて、今にも沈みそうな手漕ぎ舟」を拝借し、誰にも告げずに海へと漕ぎ出したのだ。


(アイリスもセラフィナも、あの天使のニートも、今頃は私が『瞑想中』だと思って扉の前で跪いているはず。……ざまぁ見なさい! 私はこれから、地図にない無人島で、誰にも邪魔されず、自分でおこした火でスルメを焼いて暮らすのよ!)


 私が選んだ目的地は、古くから『沈黙の海域』と呼ばれる場所にある孤島だ。

 そこは強烈な磁場と荒波のせいで、どんな有能な航海士も近づけない「何もない岩塊」だという。


「……ん? なんかこの舟、漕いでないのにめちゃくちゃ速いわね。あと、オールを漕ぐたびに海が黄金に光ってる気がするけど……まあ、気のせいよね。夜だし」


 ……実は、私が選んだその「ボロ舟」は、千年前の勇者が神界から賜ったという伝説の聖挺『次元を穿つ方舟アーク・ノヴァ』。

 そして私が適当に漕いでいたオールは、海の因果を操作する『ポセイドンの錫杖』。

 私が「早く着け!」と念じるたびに、舟は海上の空間を圧縮し、不純物(海獣や嵐)を片っ端から浄化しながら突き進んでいたのである。


 そして、ついにその場所へ辿り着いた。

 目の前には、月明かりに照らされた、殺風景な黒い岩の島。


「……これよ! この『何にもなさ』! 最高じゃないの!」


 私はボートを降り、岩場に足を下ろした。

 あまりの解放感に、私は足元の邪魔な石ころを、思いっきり海に向かって蹴っ飛ばした。


「あははは! さらば人類! さらば重税! 自由万歳!!」


 ……その瞬間。

 私の足元から、大陸が震えるほどの轟音が響き渡った。


 私が蹴った石ころ。それは、数万年前に沈没した伝説の失われた大陸『アトランティス(仮)』を封印していた『世界のくさび』だったのだ。

 封印が解かれたことで、海底から巨大な大陸が急浮上。

 私の立っている「岩場」は、瞬く間に標高三千メートルの神殿の頂上へとせり上がり、周囲には古代の魔導技術で維持された超近代的な都市遺構が、黄金の輝きと共に再起動を始めた。


「……え、待って。地面が高くなって……え? ビルが生えてきた?」


 さらに、私が「自由万歳!」と叫んだ声が、島全体の防衛システムに『王の帰還』のパスワードとして認識された。

 島を覆っていた荒波と磁場は霧散し、代わりに周囲数千キロの海を「常夏の楽園」に変える気候操作装置がフル稼働。

 空に浮かんでいた私の巨大なホログラムが、この新大陸の「太陽」として中心に鎮座した。


 夜が明ける頃。

 水平線の向こうから、何百隻もの大艦隊が押し寄せてくるのが見えた。

 先頭の船には、血走った目をしたアイリスと、電卓を叩きすぎて指が震えているセラフィナ、そしてポテチの袋を持った天使ルミニエルが乗っていた。


「エルゼ様ーーー!!」


 アイリスが、艦隊の舳先から身を乗り出して絶叫する。


「まさか……まさか、沈没した古代大陸を浮上させ、全人類のための『新世界』を一夜にして創造されるなんて……! 貴女の『バカンス』とは、世界を文字通り『拡張』することだったのですね!!」


 セラフィナが、新大陸の黄金のビル群を見て、鼻血を出しながら叫んだ。


「……計算不能! 資産価値、測定不能よ! エルゼ様、貴女はこの大陸一つで、世界の全経済を『過去のもの』にしたわ! 今日からここが世界の首都、いえ、全宇宙の経済の中心『エルゼ・メトロポリス』よ!!」


 ルミニエルは、新大陸から溢れ出す濃密な魔力を吸い込み、満足げに頷いた。


「……ふむ。天界の管理が行き届かなかった『失われた領域』まで自力でサルベージ(救済)するとは。……もはや貴女は神ではなく、宇宙の設計者アーキテクトですね」


「…………」


 私は、黄金の神殿のテラスで、差し出された「新大陸の不動産登記簿(全域エルゼ所有)」を前に、魂が抜けた顔で膝をついた。


(……ねえ。私はただ、誰にも見つからない岩の上で、スルメを焼きたかっただけなの。……なんで私が、一夜にして『人類史上最大の領土を持つ女帝』になってるわけぇぇぇ!!)


 空を見上げれば、巨大な「私」が、新大陸の誕生を祝して、これまで以上に「やってやったぜ!」というドヤ顔で微笑んでいた。


 エルゼの「バカンス」は、失われた古代文明を復活させ、世界の地図を書き換え、人類を「宇宙進出目前」の超文明へと無理やり引き上げてしまったのである。

「無人島への逃亡」が「失われた大陸の浮上(救済)」になった件。

エルゼが蹴った石ころ一つで、世界の領土問題と資源問題が同時に解決してしまいました。

アイリスたちは、エルゼが「人類の居住圏を広げるために、あえて危険な海域に一人で乗り込んだ」と解釈し、忠誠心はもはや測定不能なレベルへ。


新大陸の首都、誕生! 第2章もいよいよクライマックスへ。

エルゼの望まない「世界征服」が完成しつつあります。


「ボロ舟が次元を穿つ聖挺w」

「スルメを焼く場所が、新大陸の聖火台になる予感……w」

と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をよろしくお願いします!


次回、第22話(第2章・最終回):

「第2章・完:全世界聖女連合エルゼ・ユニオンの発足」

全人類が一つになる。それは、エルゼにとって「逃げ場がゼロになる」ことを意味していた!?

お楽しみに!

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