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第20話:天界の調査員(元・天使)、エルゼの怠惰を『悟りの境地』と誤認して永住を決める件

「……あー。もう、動きたくない。一歩も、一ミリも。私は今、このソファと一体化して『迎賓館の家具』としての余生を過ごしたいの」


 私は、高級なポテトチップス(王国の最高級芋を、私が『もっとジャンキーな味が食べたい』と文句を言ったせいで特別開発されたもの)を齧りながら、自堕落の極致にいた。

 庭では、昨日「万能薬」に昇格した雑草を求めて他国の使節団が列をなしているが、知ったことではない。私は今、神としての義務を放棄し、完全なる「クズ」として過ごしているのだ。


 そこへ、再び空が割れた。


「――聖女エルゼ。天界は貴女の『統治』に疑念を抱いている。……と、上司がうるさいので、一応確認に来ました」


 降りてきたのは、四枚の翼を力なく垂らし、どこか「燃え尽き症候群」の気配を漂わせた天使ルミニエルだった。

 彼女は、部屋に散らばったおやつの袋と、昼間から酒を飲んでダラけている私の姿を見て、深い溜息をついた。


「……見て。ルミニエルさん。これが、あんたたちが『管理を丸投げ』した女の成れの果てよ。私は神でもなんでもない。ただの、欲望に忠実な堕落した生き物なの。さあ、今度こそ報告しなさい! 『エルゼは救いようのない怠け者だ』って!」


 私は、わざと食べこぼしたポテチの粉をマントで拭い、下卑た笑みを浮かべて見せた。

 本物の天使なら、今度こそ「神罰」を下して、この重い神格を剥奪してくれるはずだ。


 だが、ルミニエルは私の姿をじっと見つめ、やがてその場にヘナヘナと座り込んだ。


「……信じられない。貴女、この『ポテトチップス』という名の、脂と塩の塊を食しながら……全宇宙の『エントロピーの増大』を一人で食い止めているというのですか?」


「(……はい?)」


「見てください。貴女が『動きたくない』と念じることで、この都市の周辺数千キロの『震災』や『天変地異』が完全に停止している。……貴女の怠惰は、もはや『停止した完璧な時間ニルヴァーナ』そのもの。貴女が動かないことで、世界という時計の針が、摩耗することなく永遠を保っている……!」


「いや、ただの運動不足よ!? デブりたくないだけよ!?」


 ルミニエルは、私の食べ残したポテチを一欠片、震える手で拾って口に運んだ。

 その瞬間、彼女の瞳から黄金の涙が溢れ出した。


「……あ、あああああ……。なんと、なんと複雑で、かつ計算し尽くされた『罪の味』。……貴女は、人類が抱く『食欲』という原罪を、この薄い芋の破片に封じ込め、自ら食すことで世界を浄化している。……このポテトチップスこそが、天界のどの果実よりも尊い『聖体』だったのですね!!」


「「「エルゼ様……!! なんという自己犠牲……!!」」」


 いつの間にか背後にいたアイリス、セラフィナ、そしてジークフリートまでもが号泣し始めた。


「私たちが美味しいおやつを食べている裏で、エルゼ様は『全人類のカロリー(罪)』を一身に引き受けておられたのですね……!」

「だからあんなに、必死に(ポテチを)召し上がっていたのですね……! 私は、私はなんて浅はかだったんだ!!」


 アイリスにいたっては、「エルゼ様と同じ苦しみを分かち合う!」と言い出し、自分もポテチを一袋一気食いし始めた。


「……わかった。もう、天界には戻りません」


 ルミニエルは、自分の天使の輪をパキリと割り、それを「コースター」代わりに私のグラスの下に敷いた。


「上司にはこう伝えておきます。『地上の神は、ポテトチップスを媒介にして全宇宙の不浄を消化中。余計な手出しは、宇宙の崩壊を招く』と。……私は、今日からここで、貴女の『怠惰(救世)』の記録係として永住します」


「待って! 天界に帰ってよ! 私をクビにしてよぉぉ!!」


 私の叫びを、ルミニエルは「神の慈悲深い咆哮」としてメモ帳に書き記した。


 翌日。

 天界からの介入は完全に途絶え、代わりに「エルゼ様と同じポテチを食べて悟りを開こう」という『ジャンクフード宗教革命』が勃発。

 

 私は、ますます豪華になった「神のおやつ(特注)」を前に、もはや魂が抜けたような顔をしていた。


(……ねえ。私はただ、ダラダラして、太りたくないだけなの。なんで私が『全宇宙の重力を繋ぎ止める、ポテチを喰らう不動明王』みたいな扱いになってるわけぇぇぇ!!)


 空を見上げれば、巨大な「私」が、右手にスルメ、左手にポテチを持った姿へとアップデートされ、かつてないほど「やり切った」顔で微笑んでいた。


 エルゼの「バカンス」は、天界の監視すら「最高のファンクラブ」に変えてしまい、世界をまた一つ、彼女の理解が及ばない「完璧な地獄パラダイス」へと近づけてしまうのだった。

「ポテチを食べる」が「人類のカロリー(罪)を肩代わりする聖儀」に変換された件。

天使ルミニエル、ついに「上司への嘘の報告」にまで手を染め、エルゼの共犯者(という名の狂信者)になりました。


もはや、エルゼが「おやつを食べる」だけで世界が平和になり、

「寝る」だけで天変地異が止まるという、究極の「詰み」状態!


「天使の輪をコースターにするなww」

「ポテチを食べて悟りを開く宗教、入信したい」

と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をよろしくお願いします!


次回、第21話:

「神のバカンス:無人島へ逃げたら、そこが新大陸の首都になった件」

ついにエルゼ、本気の夜逃げを決行!?

お楽しみに!

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