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第17話:天界からの使者(本物の天使)、エルゼの圧倒的格差に絶望して帰る

私は、絶体絶命のピンチに陥っていた。

 迎賓館のバルコニーで、昨日「おやつ代」のために発行した『エルゼ札』を数えてニヤニヤしていたら、突如として空が二つに割れたのだ。


 巨大な私のホログラムを切り裂くようにして降りてきたのは、背中に四枚の白い翼を持ち、頭上に黄金の輪を浮かべた、正真正銘の「天使」だった。


「――地上を騒がす偽りの神よ。私は天界の監視者、ルミニエル。貴様の身勝手な奇跡と、不敬極まる偶像崇拝を止めに来た」


 その天使は、この世のものとは思えない美貌に、氷のような冷徹な瞳を宿していた。

 ……キタ!! 本物だ! 本物が私の「詐欺」を暴きに来てくれた!


(チャンスよ! この天使に『こいつはただのクズだ』と認定してもらえば、神様なんていうブラックな役職から解放されるはず!)


 私は、わざとらしく豪華なソファに寝そべり、高級な酒をラッパ飲みしながら、ゲップをして見せた。


「あー、お疲れ。天使さん。見ての通り、私は神でもなんでもない、ただの強欲な女よ。この札束も全部自分のために刷ったし、世界を救うなんて一ミリも興味ないわ。さあ、今すぐ私を天罰で『ただの人間』に戻して、どっかの島にでも追放してちょうだい!」


 完璧な「クズの告白」だ。これなら本物の天使なら即座に怒り狂って、私を「神格剥奪」してくれるはず。


 ところが。

 天使ルミニエルは、私の姿を凝視したまま、その場に固まってしまった。


「……信じられぬ。貴様、その酒(魔界の霊薬)を水のように飲み、その紙切れ(エルゼ札)にこれほどの信仰を宿らせているのか。……さらに、私の放った『神聖なる威圧』を、寝そべったまま無効化するだと……?」


「いや、ただ行儀が悪いだけなんだけど。ほら、見て。私、今からこの高価なスルメの残りカスを床に捨てるわよ? 聖女失格でしょ?」


 私は、ルミニエルの足元にスルメの破片をポイ捨てした。

 だが、その破片が地面に触れた瞬間、そこから新種の「黄金の薬草」が芽吹き、庭全体に天界以上の神聖な香りが立ち込めた。


「なっ……!? 『不浄を生命の源に変える』という、天界の最上位法術を……無造作に、それも『ポイ捨て』という傲慢な形で披露するとは……!!」


「(……なんでよ! ただのゴミ捨てよ!?)」


 ルミニエルは震える手で剣を抜いた。

「認めん! 貴様のような不遜な者が、神であるはずがない! 死ね、偽りの――」


 彼女が振り下ろした「天の裁きの剣」。

 私は「ああ、これでやっと楽になれる」と目を閉じた。

 ……が、私の懐に入っていた「太陽銀貨」の残り枚数が、勝手に自動防御魔法を展開。天使の剣を「パキンッ」と、爪楊枝を折るかのような軽さで粉砕してしまった。


 折れた剣の破片は空中に飛び散り、街中に降り注いで「どんな病も治す雨」に変化した。


「……あ、あああ……。私の、神から授かった聖剣が……。ただの『懐にある小銭』に負けた……?」


 ルミニエルは、その場に膝をつき、絶望の表情を浮かべた。

 そこへ、騒ぎを聞きつけたアイリスと財務大臣セラフィナが、武器を手に駆け込んできた。


「エルゼ様! 天界の回し者ですか!? 我らが神に刃を向けるとは……!」


「お待ちください、アイリス。……見て。あの天使、エルゼ様の『圧倒的な格差』を見せつけられて、完全に魂を折られているわ」


 セラフィナが冷たく眼鏡を光らせる。


「ルミニエルと言ったかしら。貴女たちが天界でチマチマと行っている『救済』なんて、エルゼ様にとっては『鼻をかむついで』に終わる程度の作業なのよ。貴女の剣が折れたのは、エルゼ様が『暴力はもう古い』と、貴女の存在意義そのものを否定したからよ」


「……違うの、ルミニエルさん。これ、本当にただの事故なのよ」


 私が必死に言い訳しようと一歩近づくと、ルミニエルは「ひっ……!」と悲鳴を上げて後ずさりした。


「……わかった。理解した……。貴様は、天界の法を超えた、別の『宇宙の理』を体現している怪物だ。……我々天使が、何千年もかけて行ってきた奇跡を、貴様は『怠惰』の中で数秒で成し遂げている。……馬鹿らしい。私が神だと思っていたものは、貴様の足元に転がっているスルメ以下の価値しかなかったのだ……」


 ルミニエルは、自らの翼を折りたたみ、ボロボロと涙を流した。


「……帰る。天界に帰って、神(上司)に伝えてくる。『地上には、天界を上請け(アウトソーシング)できるレベルのバケモノがいる。もう我々の出番はない』と……!」


「待って! 報告しないで! 私はただの人間だって言ってよぉぉ!!」


 私の叫びも虚しく、ルミニエルは「私は今日から、神を辞めてニートになります」という書き置きを残して、光の中に消えていった。


 翌日。

 天界では「エルゼ神」への恐れから、地上の管理業務をすべて彼女に一任(丸投げ)することが決定。

 空に浮かぶ巨大な私のホログラムには、新たに「天界公認・宇宙管理者」という肩書きが金文字で追加された。


「……ねえ。私、神様の上司になっちゃったの?」


 私は、ますます豪華になった朝食を前に、もはや涙も出なかった。

 私の「クズの証明」は、天界の権威を粉砕し、全世界を「エルゼという名の独裁的平和」へと突き落としてしまったのである。

「本物の天使」が「エルゼのクズっぷり」を見て、

「天界の努力がバカバカしくなるほどの圧倒的な奇跡(事故)」に絶望して帰った件。

天界すらもエルゼに「管理業務」を丸投げし、彼女の労働環境はさらに悪化(神格化)しました。


天使ですら「ニートになりたい」と言い出す、エルゼの負の影響力……!


「スルメのポイ捨てが最上位法術w」

「天使がアウトソーシング宣言してて草」

と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をよろしくお願いします!


次回、第18話:

「隣国王子ジークフリート、溝掃除の経験を活かして国家改革へ」

お忍び(パレード)が続く中、王子の「溝掃除」がとんでもない革命を起こす!?

お楽しみに!

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