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第15話:魔王軍・第二軍団襲来! 聖女、お昼寝の邪魔なので隕石を落とす

私は今、人生で最高に「ふかふか」なベッドの上にいた。

 ソルステイム王国が威信をかけて用意した迎賓館の最上階。シルクのシーツ、羽毛の枕、そして程よい室温。これよ。これこそが、私が聖女のフリを続けて着服……もとい、貯金してきた理由よ。


(さあ、寝るわよ。昨日までパレードで立たされっぱなしだったんだから。三日は起きないんだからね……)


 私が意識を手放しかけた、その瞬間だった。

 窓の外から、不気味な「ヒュォォォォ……」という風の音と、空全体が重苦しい紫色の雲に覆われる気配がした。


「――聞こえるか、人類の希望(笑)とやら! 私は魔王軍第二軍団長、影の支配者シャドウ・ガイル! 貴様のその神々しい光、我が深淵の闇で呑み込んでくれるわ!」


 窓の外に、巨大な影の化け物たちが浮遊している。

 街のあちこちで悲鳴が上がり、迎賓館を警護していたアイリスやジークフリート王子たちの怒号が聞こえてくる。


(……うるさい。何なのよ。人の睡眠を妨げる奴は、例え魔王だろうが神様だろうが、私が許さないんだから!)


 私は半狂乱で起き上がり、枕元にあった「一番重そうなガラクタ」を掴んだ。

 それは教会の地下で「漬物石にするには小さすぎるし、文鎮ぶんちんにするには重すぎる」と思って適当に放り込んでおいた、真っ黒な鉄の球体だ。


「これでも食らって、地獄の底まで落ちなさいよぉぉぉ!!」


 私は窓を蹴破り(!)、その黒い球体を空中に漂う「影の軍団」に向かって全力で投擲した。

 ……投げた直後、私は「あ、今の窓ガラス代、セラフィナに請求されたら嫌だな」と冷静に考えながら、そのままベッドにダイブして毛布を被った。


 だが、窓の外では、私の想像を絶する「終末」が始まっていた。


 私が投げたのは、ただの鉄球ではない。

 古代魔導文明が残した、超重力崩壊を誘発する戦略級兵器『黒穴のブラック・コア』。

 神となった私の怒りの魔力を吸い込んだそれは、空中で起動。影の軍団を一瞬で中心点へと吸い寄せ、そのまま「質量」を圧縮。

 圧縮された影たちは、熱力学の限界を超えて発火し、夜空に巨大な「火の玉」となって爆発した。


 その光景は、地上にいた人々にはこう見えた。

 聖女エルゼが窓から手をかざした瞬間、空に「第二の太陽」が出現し、魔王軍の精鋭を一瞬で「蒸発」させた。そして余ったエネルギーは、そのまま遥か上空へと突き抜け、宇宙空間に漂っていた巨大な隕石を粉砕。砕け散った隕石の破片が、美しい「流星雨」となって夜空を彩ったのだ。


「……あ、あああ……」


 地上で剣を抜いていたアイリスは、あまりの美しさと威力に剣を落とした。

 フリードリヒ国王は、窓から飛び出してきた「火の玉」の爆風に法衣をなびかせ、震える声で叫んだ。


「……見たか! 狙いなどつけていなかった! エルゼ様は、背中越しに『存在を消す』という概念そのものを放たれたのだ! あの黒い球体は、我らの『闇(悩み)』をすべて吸い込み、希望の光へと変換する神の炉!!」


 財務大臣セラフィナは、電卓を叩く手を止めて絶叫した。


「計算が合いません……! あの隕石の破片……あれ、全部『魔導銀』の塊じゃないですか! 空から数千トンの貴金属が降ってくるなんて……。聖女様、貴女は一撃で魔王軍を滅ぼし、同時に我が国の国家予算を千倍に増やしたというのですか!?」


 ――わあぁぁぁぁぁ! エルゼ様! 破壊と創造の神様!!


 外の熱狂など露知らず、私はシーツにくるまって、自分勝手な呪詛を吐いていた。


(……やっと静かになったわね。……ふふ、明日の朝食はパンケーキがいいわ……三枚重ねの……)


 翌朝。

 私が意気揚々と食堂へ向かうと、そこには「隕石の破片」で埋め尽くされた王宮の広場と、私を拝みすぎて白目を剥いている数万人の信者たちがいた。


 さらに、昨夜の爆発にビビり散らした魔王軍の残党が、「これ以上彼女を怒らせたら、今度は魔界そのものが太陽に変えられる」というデマを流布した結果、大陸中の魔族が「ボランティア活動」を宣言。

 

 私は、差し出されたパンケーキ(金箔入り)を見つめ、またしても遠い目をした。


(ねえ……。私はただ、寝たかっただけよ。隕石なんて、一言も言ってないわよ……)


 私の「安眠への八つ当たり」は、世界の軍事バランスを粉砕し、資源問題を解決し、人類を「一生働かなくていいレベル」の富豪へと変えてしまった。

 

 エルゼの「バカンス」は、ますます「全知全能の神による地球改造計画」としての色合いを強めていくのだった。

「うるさいから鉄球を投げた」が「宇宙規模の資源供給」に変換された件。

エルゼの投げたゴミが、魔導銀の隕石を叩き落として一国を大富豪にしてしまいました。

国王はもはや「背中で語る神」に心酔し、財務大臣はエルゼを「歩く打ち出の小槌」として崇めています。


次は、この「異常な好景気」が招く、さらなる面倒くさい事態。

第16話:

「不景気? 私が適当に刷った『エルゼ銀行券』で解決よ!」

もはや通貨の価値が崩壊し始めた世界で、エルゼが放つ「最後のお札」とは!?

お楽しみに!

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