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こんどは、僕が書く
彼は、書き慣れていない手つきで、
ペンを持っていた。
会社の掲示板の前。
誰も見ていない時間帯。
あの問いは、もう使われていない。
使えないことになっている。
だから、
同じ言葉は、使わなかった。
迎えに来ると言われた日。
何も言わなかった自分。
黙ることを覚えた自分。
それらを、
問いに変えるには、
少し時間がかかった。
彼は、一度書いて、消し、
もう一度書いた。
責めないこと。
答えを限定しないこと。
紙を貼り終えたとき、
彼は初めて、
自分が「読む側」ではなくなったことに気づく。
問いは、
返事をもらうために書くものではない。
次に黙らないために、
置いておくものだ。




