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キカセル 2

「まさか本当に呪いなんですかね」


 美玖の表情は半信半疑といった感じだった。田所の死からそれほど間を空けずに、また奇怪な死が現れた。

 次に死んだのは間瀬というこれまた配信者で、しかも死の直前に配信していた内容が田所と同じく見谷村についての事ときた。しがないオカルト雑誌の記者からすればネタ記事としては十分過ぎる。いつもの笠原なら適当に補強材料をあしらって纏め上げて終了だが今回は違う。


 三猿の掟。見谷村。真美。彼方に追いやられた忌々しい記憶との対峙。そこから逃げるわけにはいかなかった。

 どうして自分は忘れてしまっていたのか。突如失踪した妹。彼女が残した言葉と今起きている奇怪な事件にどうしても繋がりがある事を考えざるを得ない。

 真美は何故消えてしまったのか。その答えが今回の事件の果てにあるかもしれない。

 真美が俺を導いている。そう思えて仕方がなかった。


「何なんですか、その見谷村って?」

「よくは知らない。ただ妹がオカルト好きでよく話をしてくれてな。その中で一度見谷村という言葉が出てきた。その直後に失踪しちまったがな」

「失踪? 今も見つかってないんですか?」

「ああ。生きてるかどうかも分からん」

「そんな……」


 人の記憶というのは本当に都合が良い。自分の身を守る為とはいえ、簡単に大切な出来事を忘却してしまう。記憶を消した後遺症というものなのか、残っている真美の記憶は見谷村に関連する姿だけだった。


「とにかくこの村について調べる。どっちにしろ書かなきゃ食いっぱぐれる」

「出来る事は手伝いますよ。妹さんの手掛かりに繋がるかもしれないですし」

「助かるよ」


 早速笠原は情報収集を始めた。間瀬の配信はアーカイブがなく直接確認できなかったので、田所がYoutubeに投稿した動画を再度確認し、改めて分かった事を纏めてみた。 


・見谷村はダムで沈んで今は存在しないが、村人たちの遺体は一体も発見されていない

・三猿の掟というものが存在していた

・掟の内容は外界との接触を禁じる為のもので「外に見せるな、外の声を聞くな、外に語るな」の三つ

・掟を破った者は生きたまま「三猿封じ」という恐ろしい刑に処された


 村ホラーでよくあるような因習といった感じの内容だ。ただ気になったのが田所がこれだけの情報をどうやって収集したのかだ。その答えは動画内でも語られていたが、視聴者からの情報提供だという。。

 どういった形で提供があったかまでは語られていなかったが、おそらくはSNSを通じてのものだろう。となると間瀬のアカウント関連を洗う必要があるが中身まで確認するにはログインが必要となる。このあたりは自力では無理なので第三者の協力が必要だ。


 見谷村についての事実確認もしなければならない。そもそも本当にそんな村が存在するのか。この手のものに詳しい人物に確認するのが手っ取り早いし手堅い。

 やるべき事を纏め整理していく。いつもの記事と違って感情が乗っているせいか前のめりになっている自分がいる。


 真美。事件の真相を解いたからといって会えるわけではない。ただ解かなければ会える可能性すら放棄する事になる。

 生きて会える事を願いながら、笠原は妹を想った。


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