勇者になんかなりたくない
神々の視線がゆめに集まった。
「ゆ、ゆめ…何故、来た…?」
ゼウスがしまったとばかりに口を開く。
「お父さん、お母さんと一緒にご飯を食べようと思って・・・。」
神の一人が気付いた。
「ゆめ殿では、いけるのではないか!?」
ヒソヒソと話合いが始まった。
「ゆめだけは駄目じゃ!」
ゼウスが声を荒げる。
「しかし、神々の加護を受けた今のゆめ殿ならば、この危機を救ってくださる可能性があるのだぞ!」
神々の皆が賛同した。
「危機?可能性?何の話をしているの?」
ゆめが不思議そうに尋ねると
「ゆめ殿は知らぬのか?今、世界で起こっている事が。」
「何の事?」
「悪魔ダイモーンが復活したんだ!世界中で、人間が奴の養分となって消えているんだ!」
ゆめはテレビのニュースを思い出した。
あの事か・・・。
「その悪魔と私と何の関係があるの?」
「解らんのか?」
「はい。」
「ダイモーン討伐は「現実世界不干渉」の我々、いや、力のない我々では不可能なんだよ。」
ゆめは不思議そうに
「私の方が力がないはずですけど・・・」
「確かに難しいかも知れん・・・しかし今は、ゆめ殿に託すしかないんだ!」
神々が訴えるように話を進める。ゼウスは、俯きながら、何も言わない・・・。
「お父さん、お母さん・・・」
ヘーラーが、ヒステリー気味に、神々に訴えるように叫ぶ。
「ゆめは私達神々の力を授けた唯一の人間、言わば我々の娘なのです!その娘に死地へ向かえと言うのですか!それでも貴方がたは神ですか!私は反対です!可愛い我が子を送れません!」
話を聞いているうちに、ゆめにも神々が何を言わんとしているのかが解ってきた。
「私に悪魔討伐をしろと言うのですか?」
神々が、一同に黙り込む。
「そういう事じゃよ、ゆめ。」
口を開いたのは意外にも「お父さん」だった・・・。
「ゆめや、お前は我々の加護、いや、「力」を取り込んでおる。しかも一人だけの力ではない・・・この意味がわかるかの?」
いつものように、ゼウスは優しく話す。
「貴方・・・」
ヘーラーは悲しそうに、ゆめを見つめた。
「ゆめは、今や我々神々の中では最強と言われる存在となっておる。今、悪魔討伐が出来るのは、ゆめ、お前だけなのじゃよ。」
「私に悪魔と戦えと言うの?」
ゆめは全身の血が引いて行くのを感じ、恐怖から身体の震えが、止まらない・・・。
「そうじゃ、我々もゆめに出来るだけの支援をしてやる。ゆめしかいないんじゃ。頼まれてくれんか?」
「お父さん…ひどいよ・・・。」
永遠とも感じる時間が過ぎた・・・
神々は固唾を飲みながらゆめを見ている・・・
「少し、考えさせて・・・」
ゆめは消えてしまった。




