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北風と太陽
「どうかしたのかの?」
「先に食べちゃってください。」
ゼウスは両手に焼き芋を持っている。
「すまんの…」
「改めて、どうしたのかの?」
(いつ、着替えたんだろう・・・)
さっきまで、「作業服姿」のゼウスだったが、
いつもの衣装になっている・・・
「私、家から童話を持ってきたのですが、ここからでも、本の中に入れますか?」
「おぉ、もちろん大丈夫じゃぞ。」
「確認したい事があって…」
「何のことじゃ?」
「この、ペンと消しゴムです。」
あの時に貰った、羽ペンと消しゴムをゼウスに見せる。
「この2つは本の中でも使えるのでしょうか?」
「それは、やったことがないからの〜」
「一緒に行って貰えませんか?」
「儂は、世界には不干渉の身なので…」
「焼き芋食べてましたよね?」
「わかった!行こうな!」
「どの本に入るんじゃ?」
「今日は、この本にします。」
「北風と太陽」。どっちが旅人のマントを脱がせるかって言う内容の噺。
場所は何もない荒野で、登場人物も3人。
これは、初めての実験に持って来いの噺じゃないかしら?
「では、行こう!」
「ゆめ、儂もしっかりと、届けてくれよ。」
ゼウスはゆめの肩に手を添えた。
私は「北風と太陽」の本に左手を翳した。




