その翼は……
カイトはゆっくりと口を開き話し始めます。
「そもそも、天使には繁殖機能というものはないのだ。最上級天使様の祈りによって僕たち天使が生み出される。そういうものなんだよ」
カイトはこれまでの意気揚々と話していた声のトーンを落ち着かせて話します。彗太は頷いてカイトの話を熱心に聞きます。
「でもそれだと、カイトの生みの親はその最上級天使様っていうことになるんじゃないの?」
「天使は人手が足りなくなると補充するんだ。僕はただの労働力に過ぎない。こうやって派遣されたのも君がマイペースすぎてよく遅刻をするからだしな。」
カイトはそう言って、お茶を飲み干し彗太におかわりを催促します。
「僕がマイペースで遅刻魔だと、天界に何か不都合でもあるの〜?」
彗太は冷蔵庫から新しいお茶を取り出しカイトのコップに注ぎ、カイトに渡します。カイトは礼を言い、お茶を飲みます。
「いや、特にないが?」
「……は?」
彗太は呆気に取られて思わず聞き返します。
「え?何か不都合があるから、僕を守護するんじゃないの〜?」
「いや、特にない。強いてあげるなら、僕のスキルアップのためだ。」
「…………」
彗太は内心、今まで真剣に?話を聞いていたのが急に馬鹿馬鹿しくなってきました。
「というか、そもそも君って本当に天使なの?」
彗太は思わず聞いてしまいました。そう、カイトと名乗る少年はあるところが天使にそぐわない格好をしていたからです。
「ムッ!失礼なやつだな!僕は天使カイトだ!」
カイトは自信満々に答えます。
「いやだって……。その格好はね」
彗太はカイトのある場所を見て話します
「僕のどこが天使じゃないというんだ!れっきとした天使に失礼じゃないか!」
「だって、君の翼明らかにダンボールで作られてるじゃん。それに輪っかもダンボールだし……」
流石のマイペースでのんびりしている彗太でも、翼と輪っかにツッコミを入れました。カイトの名乗る少年の翼と輪っかは神々しい純白な翼ではなく、そこら辺のダンボールを千切って貼り付けたような見窄らしい翼でした。
「それに……」
彗太はさらに言葉を続けます
「君の言動が……。なんというか中二病感あるんだよね〜。だから本当に天使なのかどうか怪しいし……」
彗太は思ったことを正直に話します。それを聞いたカイトはイスの上に立ち上がり
「そのダンボール?中二病?というものはよくわからないが、僕は天使だ!あまりバカにするなよ!人間!」
「じゃあ、何か天使らしい能力でも見せてよ〜。そしたら考えてあげるよ〜」
彗太はマイペースながらも地頭は良く、こう言えば言葉を詰まらせると思いました。
「そ、それは……」
そして案の定、カイトは言葉を詰まさせてしまいました。
「なに?天使なのに能力もないの〜?やっぱり口から出まかせ言ったの?」
彗太はニコニコしながら、カイトに尋ねます。
「ばっ、バカにするなよ!人間!僕はまだ下級天使で能力を上手く使えないだけだ!言っておくが、僕が本気を出せば能力を使うぐらい造作もないんだからな!」
カイトは机に立ち上がり彗太を見下ろします。
「とりあえず、机の上に乗るのは行儀が悪いから降りて欲しいな〜」
彗太はマイペースとのんびりとさらには天然も兼ね備えていました。
「……なんだこの人間。もういい!僕天界に帰る!」
カイトは玄関の方へ行き、扉を開けて外へ出ていきます。
「バイバーイ」
彗太はそれを見送ります。
「……さて、とりあえずご飯の準備しないと。あの子と話してたらお腹空いてきたよ〜」
彗太は鍋を取り出して、お味噌汁の準備をします
――ピンポーン――
玄関の呼び鈴が鳴りました。
「こんな時間に誰だろう?宅配は頼んでいないし……」
彗太が扉を開けると、目を見開きました。そこにはさっき出て行った自称天使くんが涙目になりながら立っていました。
「ど、どうしたの?」
彗太は少し戸惑いつつも、少年に尋ねます。
少年は涙目になりながら口を開きます――
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