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5://現実感


「嘘……でしょ」


 灯里は、そのことに否応なく気付いてしまったのだ。

 この体験は、紛れもなく《現実》なのだと。

 自分は、ちょっとロボットが好きなだけの普通の女子高校生だ。

 まさか……本物の宇宙に身一つで放り出されてしまうとは。


「いや……シロが一緒、か。おかげで早速助かったし……やっぱり私の相棒だね」


 灯里は物言わぬコンソールを撫でる。硬質だが、これ以上に頼もしい相棒もいない。

 そうしてしばらくはシロの内部構造をチェックして、損傷具合を確認していた。


「武装は……腰部バルカンは破損、かつ弾切れ。リボルバーは片方が電子系破損で使用不可。エネルギーソードは三本中二本が欠損……、シラヌイが生きててよかったけど、他に使えるのはリボルバー一丁とエネソ一本、か。補給は必須だなあ……」


 どこに行けば何が補給できるのかなんて知らないけど、と呟いてシステムコンソールを閉じる。

 レーダーには、ゆっくりと近付いてくる三つの影。先ほどの戦闘でこちらの存在がバレたらしい。


「やるしかない……か。まだ、死にたくないし」


 ここがどこかもわからない。元の世界に帰れるのかもわからない。

 わからないことしかないものの、状況は待ってくれない。

 自身が機体に習熟していることを除けば、ロボットアニメの巻き込まれ主人公のようだ、と自身を評価してしまう灯里であった。




「一つ!」


 懐から抜刀したエネルギーソードが一瞬だけ励起状態になり、青白いエネルギーの刀身が瞬くように出現して敵機を切り裂く。

 シロに搭載されたエネルギーソードはゲーム内で《居合タイプ》と称されるタイプであり、インパクトの一瞬だけ刀身が出現するものだ。通常タイプと比べて鍔迫り合いができなかったり使いこなすのが難しかったりはするものの、一瞬の攻撃力では数倍にもなる。

 大太刀のシラヌイよりも圧倒的に小回りが効くこともあって、灯里はこの武装をシロに乗り換える以前から愛用していた。


「二つ!」


 次に、背中から斬りかかってきていた二機目の敵機を振り向きざまに両断。

 初心者の頃こそタイミングを掴めずに何度も空振りをしていた灯里だが、感覚はもはや手足の延長線上といっても過言ではない。


「三つ――!」


 遠距離から迫るミサイルに対して、リボルバーマシンガンを連射。

 ミサイルを迎撃して誘爆させつつ、その先の敵機に弾丸を集中させてこれを撃破。


「終わった…………ん?」


 額に浮いた汗を軽く拭った灯里は、敵陣にコンテナ船が浮かんでいるのが見える。

 先ほどの敵機がステルス機能を提供していたらしく、ステルス機能の切れた黒いマントがそばを漂っていた。


「戦利品……と言っていいのかな。シロ、アクティブスキャン」

『希少金属を含む多数の資源を確認。不明デバイス一つを発見。可燃性物質なし。火力発揮の可能性なし。トラップの可能性は限りなく低い模様です』

「不明デバイス……強化パーツとかだと嬉しいけど。それじゃあ、開けてみよっか」


 灯里はコンテナ船に近付いて、シロのマニピュレータから共通規格の接続ケーブルを伸ばし、コンテナに接続する。

 電源が生きている船ならもっと簡単にオンラインハックできるのだが、今回のように沈黙した船にはこうして有線接続するのが定石である。

 ハッキングツールが解錠に成功し、コンテナの側面板が外れる。

 その中身は、シロのスキャン通り、希少金属などが詰められたパッケージが大量に入っている。ゲーム時代であれば、小型船一隻が買えてしまいそうなほどの収入である。


「シロ、収容しといて」

『了解しました』


 シロが手をかざすと、それらの物資が光の粒子になって手のひらに吸い込まれていく。

 これは高級な人型ロボットが主に持つ異空間運搬機能、通称アイテムボックスだ。設定的には宙域跳躍技術の応用だとかで、一定の重量までの無機物を異空間に収納しているのだとか。

 低出力なエンジンしか持たないコンテナ船にはその機能はないものの、総合的な収容能力や航続距離、燃料費などの面ではコンテナ船に軍配が上がるため、運搬の際の優劣は一長一短である。


『不明デバイスの収納に失敗。内容に有機物――生命体が含まれている模様です』


 コンテナ内に残されたのは、不明なデバイスが一つ残されていた。

 灯里の目には、それはコールドスリープの装置のように見えたのだった。



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