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我が心の板間敷

作者: うめ

私は、わりと特別なほうかと思う。

素質的に、人とすこし離れたところから俯瞰するのが得意ではある。

より的確で最適な答えを思いつくし、なにより改善点を発見するのは得意。

哲学もあって、最適なアドバイスには最適な距離感、肌感覚みたいなものが大事だと思っている。

いきなりよそよそしく具体的な改善点だけあげても、効果は期待できないだろう。

ずっと見守っていかないと経過もわからない。

そういう気持ちは自然と伝わるはずで、私に声をかけられたものは感謝をしたり、より多くのアドバイスを求めてくるはずだ。

敬語やマナーを重んじてから、という人もいるだろう。しかしそんな事だから改善しないのだ。

私の衝撃を受けた方法で、それをより先鋭化した親しみ方でアプローチすれば衝撃間違いなし。

それで感銘を受けないものは、おそらくかわいそうにも感覚を鈍らせているのだろう。だからといって見捨てはしない。

刺激を与え続けて、いつか理解できた日に一言感謝があればいい、そう思っている。




夏休みの準備段階になり授業もなくなり時間が空いた夏。

スマホの操作もまだ時間内だ。なんとなく、心が人恋しいというので、チャットを探してみる。

遊びにいかなかったり、雑談する友人がいないのは受験シーズンなだけで、タイミングがわるい。ただそれだけだ。

受験がおわれば、忙しくなるだろう。私もその時の雑談にむけて知識を仕入れておかなくては、感覚を磨いておかなくてはならない。

「小説家になりたい雑談チャット」

おあつらえ向きだ。おそらく自分たちで書いたあたりさわりのない作文を褒めあっているだけだろう。

具体的な指示や感想をもって、ちょっとわからせてあげるのも悪くない。プロデビューでもしたら育ててやった感謝の一つも聞けるかもしれない。

入室を、してみる。ハンドルネームは、サイレントマンでいいか。


サイレントマン「よろっす」

イモータル「はじめまして」

ゆき存「初めまして。よろしくお願いいたします。」

霧笛丸「はじめましてーようこそ!お茶でもどうぞズズズ…」

血無き地「ようこそいらした 存分に楽しまれよ」


まず、掴みはオーケーだろう。そんな硬い挨拶で物書きが務まるのか、先が思いやられるがこれは想定範囲内だ。心を開かせるのは私くらいでないと無理だろうからな。

そんな距離感で話をしていては核心に触れることは難しいだろう。本質のなかにある真理というのはあまりに輝いて眩しく、慣れていないと耐えられないものだ。

私はそれに一度触れている。経験者がここは語るべきだろう。しかし、知の足りない者に伝わるかどうか難しい問題でもある。


サイレントマン「アップしてある小説、読ませてもらったんすけど、非モテの妄想全開でちょっと恥ずかしいっすね こういのは経験者からみたらすぐ解るのでw」

霧笛丸「・・・」

ゆき存「・・・」

イモータル「・・・」

血無き地「・・・」


図星か。これだけで解る程度には実力があるらしい。すこしきついかもしれないが愛の鞭を受け取ってくれ。その恥ずかしい稚拙な内容さえ克服できれば、期待はまだあるぞ。


ゆき存「そういう侮蔑はいらないです」


図星で恥ずかしいのだろう。擁護をする気持ちもわかる。痛みになれていないから他人も庇い自分も痛みから逃れるつもりだろう。やさしさとは何かが解っていない。

所詮その程度の集まりなのだから、それもちゃんと理解したうえでその先の問題のさらに改善点の結果論から話してやらなくてはならない。


サイレントマン「私は読んだ率直な感想を言ったまでなのでww ただそういう所だけ直せば才能はあると思いますよw」


こちらの余裕の俯瞰も伝わっているだろうか。核心をついてくるぞという、真理の片鱗に触れる準備はよいだろうか。


イモータル「言い方ってものがあるとおもう そう言われてどう受け取られると思うんだ」

血無き地「気に入らないというなら それ相応に物言いの手立てもあるであろうに」



伝わらないか。褒めて才能も認めたというのに、まだ会話の経路がつかめていないようだ。なかなかに知の不足している相手に説明をするというのは骨が折れる。


サイレントマン「そもそも主人公の都合のいい不条理ばっかり解決させる無双って、読んでて恥ずかしいんですよw」


霧笛丸「それは読み手の問題なんかじゃないのかなあ・・・ そんなことをいうべきではないと僕はおもうんだけど・・・いや思ってるだけなんだけどね・・・」

ゆき存「作者が伝えたい事がはっきりしているのが伝わっていいんじゃないですか それを受け取りたくなかったら受け取らないだけでいいと思います」


サイレントマン「いや読んでしまったんだからそれはもう遅いでしょw その上でまだ望みはあるから、いってみればその恥辱の汚泥のそこから息できる程度にアドバイスできるよって事でw」

ゆき存「なんでそんな上から目線なんですか」


実際に顔を合わせてるわけでもなく、文字だけでは私の真意の本質は見えないので仕方がないだろう。これを説明するのは非常に難しい。


サイレントマン「なんというか、全部がダメって訳じゃないんすよw せっかくの才能がもったいないなーってw」

イモータル「そういう事言う前に、言うことあると思いますよ」


なんだ。答えがまちきれないのか。それとも気づきはじめたのか。そうせかすもんじゃない。しかし次の話のはなしごろということか。


サイレントマン「つまり、作者としての意図を隠して表現しないと幼稚で恥ずかしいんですよw 要するに作者がダメっていうのが透けてみえるっていうかw」

霧笛丸「それは普通に失礼な発言かと思われ・・・」



真実は時に人を傷つけるものだ。たしかに正体をバラされることはつらいだろう。しかしそれは養分となり次は、次もまあ駄作だろうけれども改善はされる気がする。

期待はしないが、言いつけを守って私の表現を取り入れたと書き加えるならば、すこしばかりは読んでやろうと思わないでもない。


サイレントマン「はっきりいって、初期設定の段階で感情移入ができないですねw そんな設定実際あるのかよっていうw」

ゆき存「すこし黙ってもらえますか」

イモータル「会話をするのに、一方的すぎやしませんか まず相手も人なので気持ちを考えてそれに沿った会話ってできないんですか?」

血無き地「なによりもまず、気持ちとしてかける言葉があるはずでござる」


少し難しく入りすぎたか。理解ができない雛鳥たちは飢えて声を荒げてしまっている。

嚥下しやすい例え話にしたほうがいいか、いちどぴしゃりと真理を話してわからせるか。私も人の心は重んじる。まずは分かり合うことが先決か。


サイレントマン「いやそれらは解ったうえで話してるんですがw そういうのは常識の範疇でしょうw」


さあ、ついてこれるところまで押し下がってきてあげたぞ。先生と呼ばなくてもよいが教えを乞う準備はしたまえ。


ゆき存「なんで上から目線なんですかね」

イモータル「まじ会話になってねーわ 無視でいいんじゃね?」

霧笛丸「それでは僕の短編をアップしてみようかなあなんって するかな・・・ あとでがいいかな・・・」

血無き地「取り付く島もないとはこの事でござるな」


まったくあきれる。小説の話をしていたんじゃないのか。なにを見ているのかさっぱり理解に苦しむ。物語の作り方から説明しなくてはならないのか。

しかしそうなると膨大な語りになってしまう。おおよそ理解もできないだろう。

マンツーマンの指導、に近いが複数人が同時だとこうも歩調がそろわないものなのか。


ゆき存「だいたい否定とかする意味なくないですか? 嫌だって思ってるのは自分1人なわけですよね それ共有しようっていうのキモくないです?」

イモータル「作品ならばそれもありでしょうね 感想文を書くこととそれを見せる事 しかも書いた人にみえるように自分の感想をアピールするのは異常ですね」

霧笛丸「もっと読みたい よくなってほしい 楽しみたいというなら全然別の手段がありますよね・・・」

血無き地「義を通さねば なにも通らぬ そういう事ですな」


サイレントマン「いや感情って当然のことでしょww それは仕方がないww 観客1人も楽しませられないのは問題でしょww」

イモータル「客がどう感想を持つかはそれぞれの権利だ だがその感情を抱いたからそこで何してもいいわけじゃない」

霧笛丸「ライブ会場で 自分に目線が来なかったこと プロとして失格だ とか思うのは勝手ですけど ライブに集まっている客に説教しはじめる事じゃないですよね・・・」

ゆき存「人格に言及してくるのとか 常識以前ですね」


サイレントマン「経験がないのはみてとれるし そういうの少し考えたらわかる話っしょw 全部説明しないとわかんないかー しかし長くなるからなー」


人に叡智を分けるというのは、難しいものである。本題にすらたどり着けな者たちを導いていくのに私の体力はもつのだろうか。


ゆき存「無視しときましょ 会話がなりたたない」

イモータル「黄金の定理があったとしても大作家という身分があったとしての個人の感想だったにしても 批判したり侮蔑する必要などない」

血無き地「たしかに 科学の定理も不足しているなにかをいたずらにからかうなどというものは なにも一切ない」

霧笛丸「人ひとりずつ みんなを大切におもうからこそ 小説を書きたいんですよね・・・」


何を言っているのだ。無視をすれば解決すると、そう判断したのか。あまりに稚拙な。


血無き地「そこで 拙者の新作ここで発表してよろしいかな」

ゆき存「私もちょうど書きかけのがあったんだ 続きなやむなー」

霧笛丸「異世界と現世の間の空間に亀裂が入って そこから何かでてくるとかどうっすかね・・・」

イモータル「この前掲載した小説 反響すごかったですね 閲覧数かなりあがってました」


勝手な話をすすめて、現実から目をそらそうというのか。なんとむごい無知さなのか。もったいない。せっかくのチャンスを無駄にする子たちだ。

しかし知を持った者としてはそれを見せるにはまだ早く理解が難しかったのだろう。


イモータル「ぶっちゃけ人を馬鹿にする人って その相手にわかってもらうことすらできない人って事ですね」

霧笛丸「バカと言ったほうがバカ理論ですね・・・」

血無き地「もう蒸し返さなくともよいでござらぬか」

ゆき存「その態度で人に気に入られるとでも思ってるのかって話ですよね 自分が煽られたら真摯にうなづくのでしょうか」


まったく意味のない雑談になってしまった。小説すら関係がない。これは道のりが長くなってしまった。

迷えるものはその愚かさ故にさらに迷い込み、さらに深みにはまってしまう。

とりあえずくだらない話に同化して、すこしずつ矯正を試みていくしかないか。


サイレントマン「ここは宣伝ってしてはいけないんですか?」

イモータル「別に規制がかかるものでなければ大丈夫だよ」


ちゃんと会話できるじゃないか。すこしずつ引き出してやるか。

調子にのって愚かな歩みで危うい時には、ちゃんと教えてあげればよい。


サイレントマン「ここの別の作品読んだのですが、なかなか面白いですね 人物の描写が細かいというか 見えてる感じがしますw」

ゆき存「ここのチャットでアドバイスをもらったからね 磨かれてるとは思うよ」

霧笛丸「語彙力 あがりますね みなさんのおかげで・・・」


サイレントマン「でもやっぱり描写があまいところがあるというか 経験者からみたら経験不足なのが見てわかるんですよねw そこは努力目標かなw」


普段の会話からでも気づきや学びがある、お笑いのセンスがあるともよく言われるし目の付け所がさすがとも言われる。

存分に発揮できないのは致し方ないが、雑談程度ならば理解もできるだろう。


イモータル「なんで上から目線なの わかってない?」

血無き地「空想や創作に経験などない事もありますからな」

ゆき存「そのリアルがないっていってるリアルの経験も希少な個人の体験からなんでしょうね 自分の思い出に合致しないからって他人を批判する意味わかんない」

霧笛丸「世界にたった一つの真理とか本質なんてものがあったなら 人類はなにか一つくらい見つけていても もうおかしくはないはずですよね・・・」

イモータル「みんなの中にそれぞれあることですからね」


真理も定理もたどり着いていない人間には、みな暗闇の中でしかないのか。あかりを灯してやらなくては方向も見えないか。


サイレントマン「面白いかどうかって 読んだらわかるっしょw つまらないところを指摘してるんで そこだけ改善すればいいだけの話っすよw」

イモータル「その自分とは違うっていう自己紹介を他人の創作を使って言う必要なんてないでしょ」

ゆき存「他人の作り上げた鏡を使って自分がいびつにうつる、そのゆがんだ姿をみて馬鹿っぽいって自己紹介するのは 鏡の作者に失礼だわ」

血無き地「やはり 無視が一番でござるな 相手にならぬ」



なんだろう。


人をみて、愚かだと思う心は、自分の愚かさを映してみていたのか。

共感羞恥心という言葉は、羞恥心だけは言葉にして避けて追いやりたかったから言語化されただけであって、共感は幸福にも愚鈍にもあったのか。


他人の愚かな行為を指摘して笑っていたのは、他人の行為を映して愚かになっている自分が笑われていたのか。

馬鹿と言ったほうが馬鹿、単純なやり返しの言葉だと思っていた。

愚かな行為は愚かだと分類して情報化して学ぶべきことだが、それを使うことはまさに愚かな行為だ。


単純に思っただけ、いわれたからした、だって当然だから言われてもしょうがないはず、だから言っただけ、とは自分の価値や意味さえ無くしてしまうのか。

犬を見て犬という、車を見て車という、海をみて海という、馬鹿をみて馬鹿という、そんなやつはいない。そんな愚かな行為は初めて言葉を覚えた時だけだ。

私は馬鹿をみて馬鹿だと言っていた。言葉を覚えたての時点からなにも進んでいなかったのか。


愚かな行為をまねて、愚かではない行為も愚かしくしてみせ、その姿と私自身の評価を愚かしいと一致させる行為、それを納得するという行為で楽しんでもらっていた、芸人の芸だと思っていた私の行動は、そんな恥ずかしい行為だったのか。


どういう文脈で、どういう経緯で、どこの実績で、どんな理論で、そんなものを盾に自分が愚かしく舞えるように相手を鏡にしたてようとしても、私自身が淀んで醜く歪んだ鏡だったのか。

だれも私の前に立って自分の姿を映そうとしなかったのは、私がひどく歪んでいたからなのか。


俯瞰だと思っていたのは、経験したと思っていたのは、知り尽くして理解したと思っていたのは、私と世界の距離だったのか。




サイレントマン「これ、すごい作品ですよね 見えてるなーって感じがしてすごいいいと思います」

霧笛丸「あざっすですっす・・・」

ゆき存「あのくだり 結構悩んでましたもんね 結局一晩中話してたみたいな」

イモータル「まだまだこれから閲覧数あがるって感じありますね キャラがたってる」

血無き地「拙者の場合 やはり呪縛と日本刀は欠かせないと思うでありますがな!」


私は、すこしでも世界に近づいて、だれかを映せる鏡になりたいなと、思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当に読みやすいし、皮肉が利いていて面白かったです。 こういう実体験をうまくフィクションに落とし込んだ作品は好きです。全ネットユーザーに読ませるべき名作だと思います。 [気になる点] 強い…
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