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魔道少女の瞑歌  作者: れるり
8/8

柩2

つむぴょんを追いかけようとするご主人様を、ひつぴょんは抱きとめていた。


「まったく。こまった人形(ドール)ですね。そう思いませんか?」


「でも……つむぴょん、普段はあんなに怒ったりしないのに」


「あなたは騙されているんです。見たでしょう、いきなり切りつけようとしてくるような、

 あんな出来損ないの人形(ドール)、あなたには必要ありません」


「ひつぴょん……。本当に、つむぴょんには何もしてないの?」


「はい。何度聞かれても、私の答えは同じですよ? 今日、初めて会ったんですから」


でも、つむぴょんは。

ご主人様を抱きしめる腕に、力が籠められる。

ひつぴょん、苦しいよ。


「あなたは。私ではなく、あの人形(ドール)を選ぶのですか」


「僕、は」


「駄目ですよ、あなたは私といないと。私なら、あなたの()()()()にだってなれるんです。……いいえ、そうなるはずだったんですから」


「お母さんは……お母さんだし。ひつぴょんは、ひつぴょんだよ」


ひつぴょんが、ご主人様の頬を撫でる。

そうですよね、と呟いて。


「少しの間。眠っていてください」


ご主人様の額に、キスをした。


「おかしくなりそうなんです。()()()があなたと生きていると」



つむぴょんは、不貞腐れて眠っていた。

なんですかアイツは。不快です。

()()に対する恐怖とも怒りとも違う、もっと別の嫌悪を覚えていた。

だいたい何がひつぴょんですか。そんなにぴょんが好きなら、ぴょんと結婚でもすればいいんです。


でも、なんだかお腹がすいてきました。

アイツがまだご主人様と一緒にいるのかは知りませんが、りんごでも採りに行きましょうか。

そして、美味しいりんごを、いつものお店に持っていて食べるんです。

嫌な時はおいしい物を食べるのに限りますからね。

同じ()()でも、どうしてこんなにも。


ガチャ。


扉が開いた気がした。

……ご主人様?

そろそろちゃんと謝ってもらうのも良いかもしれません。

りんごを採りに行くついでに……。


そこまで考えて、身体が動かなくなっていることに気が付いた。

どうして。身体が。

何かの足音が近づいてくる。


ーーさようなら、


身体に蛇が巻き付いてくるような気がしたつむぴょんは、泣きながら飛び起きた。


「ああああっ!!! 蛇ッ、なんなんですか!!」


「……はぁ?」


蛇はどこにもいなかったが、目の前にはひつぴょんが立っていた。


「この()()……なぜ動いているんですか」


「動けるに決まってるじゃないですか、何しに来たんですか! 帰ってください!」


「まぁ別に。どうでも良いですね……大人しく、()()()()()()


「嫌で……っ!?」


視界から全てが消える。また身体が動かなくなる。

気が付くと首が絞めつけられていた。


ひつぴょんが、つむぴょんの首を絞めていた。


「ただの()()のクセに。私でなければいけなかったのに。それなのに寵愛を受けて」


呼吸が出来ない。攻撃の仕方も、毒の放ち方も分からなくなった。

これは。だめかもしれません。


突如、部屋の窓ガラスが砕け散った。

それでもひつぴょんは、首を絞める手に力を籠める。

つむぴょんは、何故かその感覚を知っているような気がした。


「マスター」


ひつぴょんに対し言葉を発し、その腕を掴んだのは、

窓ガラスを割って部屋に飛び込んできた人形(ドール)だった。


「わたしは、モナを殺させない」


「邪魔。消えなさい」


「駄目」


人形の身体が僅かに光を放つ。

その瞬間、首から手が離れ、つむぴょんは倒れ込んだ。


ガラスの破片が服に、身体に刺さる。

何なんですか本当に。


「つむぴょんっ!?」


ご主人様……。


「うわっなにこれ!?」


「こっちが聞きたいです」


「あれ、くらぴょんがいる……?」


また。

……また、ご主人様と知り合いの人形で。また、ぴょんですか。

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