表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道少女の瞑歌  作者: れるり
7/8

柩 1

つむぴょんは機嫌が悪かった。


ここはつむぴょんとご主人様だけの場所で、他の誰も、踏み込んできてはいけないはずだ。

だから、例えば人形であるつむぴょんを売り飛ばそうとする人間や、

どういうわけかご主人様を狙う、得体のしれない邪教徒は、排除する必要がある。

つむぴょんの事はともかく、ご主人様の命を狙うのなら、なおさらだ。

()()()()がやってくる度に短剣を手に取り、

そして自身の武器である毒を使い、戦った。


戦いは苦手だったが、戦わないとご主人様を守れない。殺さないとご主人様を守れない。

お屋敷に踏み込んできたのが誰であれ、何であれ、

ご主人様を守るために必ず殺す事が、つむぴょんが自分に課した役目だった。

強くなるために、殺しの依頼を受ける事もあった。

人形であるという理由で逆に殺されそうになる事もあったが、

その度につむぴょんは毒を塗り込んだ短剣を相手を刺し、ひとりだけで依頼をこなしてきた。

殺しの経験も積める。依頼をこなすことが出来れば、報酬に多少のお金は貰える。


ご主人様には内緒だったが、つむぴょんはそうやって生きていくと決めていた。


だから今朝、突然お屋敷の中に上がり込んできた女も、

つむぴょんにとっては殺すべき()だった。


「ちょっと、いきなり飛び掛かってくるなんて失礼な人形ですね」


なにが人形ですか、つむぴょんはつむぴょんです。

ナイフを持ち直して女を睨む。


「私はあなたに挨拶をと思って――」


――ひつぴょん?


ご主人様の声が聞こえた。これはまずいですね。

つむぴょんは叫んだ。


「ご主人様、部屋に帰ってください! こいつはつむぴょんが殺します」


できればご主人様に誰かを殺す姿は見られたくない。


「あの子の前で、なに物騒な事を言ってるんですか」


「ひつぴょん、どうしたの? つむぴょん、なにがあったの?」


「知りませんよ、この人形がいきなり私を斬ろうとしてきたんです。

 人形(ドール)で遊ぶのは構いませんが、ちゃんと躾けてあげましょう?」


つむぴょんは、不快になった。

どうもご主人様とこの女は、知り合いらしい。

それに、ご主人様は『ひつぴょん』と呼ばなかったか。


「そんなに睨まないでくださいよ。私は、()()()()()です。

 これはあの子に頂いた名前なんです。良いでしょう?」


「ご主人様、どういう事ですか。こいつは誰ですか!」


「まって、つむぴょん怒らないで……。えっと、ひつぴょんだよ。

 お父さんとお母さんがいない時、よく僕と遊んでくれてたんだ」


そうですか。見たところ、この女も人形(ドール)ですね。

ご主人様の人形(ドール)は、つむぴょんだけじゃなかったんですね。


「……不快です。もう知りません! 勝手にしてください!」


つむぴょんはほっぺたを膨らませて、それきり口を閉じて部屋に閉じこもった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ