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魔道少女の瞑歌  作者: れるり
5/8

廻 5

お屋敷の扉が開き、子供が走って近づいて来る。


「うおーつむぴょんだー!」


そのつむぴょんとは、もしかしてわたしの事だろうかと思う前に、手を握られてしまっていた。

目を輝かせてわたしを見てくる子供。


「あなたが、わたしのマスターという事ですか」


「ますたー? 違う違う、それにつむぴょんは自分の事をつむぴょんって言うんだよ」


「つむぴょんってなんですか」


「つむぴょんの名前だよ。ね、お父さん」


テオラさん。この子は一体何を……。

思わず隣に立つテオラさんに助けを求めてしまう。


「あぁ……こういう子なんだ。私達の、愛した子は」


そうですか。変な人なんですね。

でも、不思議とこの子――ラフィナに対しても、不快な感覚は無いような気がする。

この子の傍にいる事が。いられる事が、何故か嬉しいような。


「ねねね、つむぴょん。つむぴょんって言って」


「……つむぴょん」


「へへへ……そうそう、やっぱりつむぴょんだ」


「あなたは何を言ってるんですか……」


「そしてねー、僕はご主人様だよ。つむぴょんはメイドだからね!」


メイドでは無く、ドールですが。

本当に。変な人だ。

ラフィナが言うには、メイドとは『ずっと一緒にいてくれる人』の事らしい。

そして、メイドは、その相手を『ご主人様』と呼ぶものだと。

それがあなたの描いた()()()なら。

『つむぴょん』なら。


わたしは、つむぴょんになりたいと、思った。


「……つむぴょんは。ご主人様の、メイドというわけですね」


「そうだよ! やったー、よろしくねつむぴょん!」


ご主人様が、抱きしめてくる。

なんだか悪くないような気がした。


「へへへ、つむぴょんはほっぺもやわらかい」


「何ですか、ほっぺを触らないでください。不快です」


相変わらずへへへと笑いながら、

わたし――つむぴょんに抱き着いたままのご主人様が、テオラさんの方を見た。

テオラさん……ではなく、お父様、と言うべきなのかもしれない。


「お父さん。僕、頑張るから」


「ああ。おまえはきっと、何だってできる。何にでもなれる。

 私と……お母さんの、希望なんだから」


「うん。まかせて。つむぴょんの事も、絶対に幸せにするからね。

 ありがとう、お父さん」


幸せですか。……ドールである、つむぴょんが。


「きみは……どうか。この子の事を、守ってあげてほしい。

 そして出来るなら。ずっと、愛してあげてほしい」


「守るのは僕の役目だけどね。最近は早起きも出来るようになったんだよ」


「そうか。偉いな……」


つむぴょんを抱きしめたままのご主人様を、

お父様は優しく抱きしめた。


「……お、お父様。つむぴょんは、何があっても、ご主人様の傍にいます」


「つむぴょん! 嬉しい、すきすき」


「もう、だからほっぺたをつつかないでください」


やがてお父様は、ご主人様から離れていって。

ただ一言、私達はずっと、ラフィナの事を愛しているよ。と。

当の本人は、何故かほっぺたを触り続けていて、

せっかくの言葉を聞いているのかいないのか分からないけど。


「いってらっしゃい、お父さん。お母さんと、ずっと幸せでいてね」


お父様を見送りながら。


お父様を見送るご主人様の、少しだけ寂しそうな顔を眺めながら。


つむぴょんにはどうしても、なぜお父様が、

ご主人様を残して()()()()()()()()()()のか、理解できませんでした。


それはつむぴょんが人形(ドール)だから、理解できないだなのけでしょうか。

それともやっぱり、つむぴょんの思う通り、変な人という事なのでしょうか。


「つむぴょん!」


「なんですか?」


でも……そんな事は、きっとどうでもいい事なんですね。

つむぴょんは、ご主人様を守らないといけないのですから。


そして、もしも。

ご主人様が、つむぴょんの事を愛してくれるのなら。

つむぴょんも、ご主人様の事を、愛せるでしょうか。


「これからよろしくね!」


「はい。こちらこそ、よろしくおねがいします。ご主人様」

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