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魔道少女の瞑歌  作者: れるり
3/8

廻 3

鏡に映る自分の姿は、本当に、()()の様だった。

ピンクで真っすぐの肩まで伸びている髪に、ぱっちりとした暗い赤紫の眼。

頭には、帽子。これもまたピンク色で、おでこのあたりから耳?が垂れ下がっている。

背丈はそう高くない……むしろ低い方になるのだろう。

マントに、薄い緑の服。やたら大きな袖。

変な気がするけど、なぜか、これで()()()()()ような気がする。


「この服は、というか、この帽子はなんですか?」


「ラフィナ――さっき、君に会って欲しいと言った子が、描いたものだ。

 ……君自身も、ラフィナの描いた絵の少女が元になっている」


男が壁に掛けられた小さな絵を手に取った。

色鉛筆で描かれたのだろう、子供の落書きにしか見えないその中に、わたしがいた。

そして、どことなくうさぎの様な顔の、かたつむりみたいな生き物も。

この生き物は、この服のお腹のあたりにも刺繍されている。


()に対して抱いてしまう不快感は、この絵からは感じない。

会ってみたい、と思った。

その、ラフィナという、人に。


「ラフィナ……ですか。とても、綺麗な名前だと思います」


「綺麗、か」


男は、ずっと、わたしを見ていた。

もしかしたら、妙な事を言ってしまったのかもしれない。

ただ、それでも、<ラフィナ>という名前、その音の響きが、何よりも()()だと。

何度も心の中で反芻して、声に出して言いたくなる程に、好きだと、思った。


「私も。そう思うよ――……」


最後、何かを言っていた気がしたが、

きっと私には()()()()()言葉だったので、

また、絵の中の()()()を見つめる。

誰と、何を思って、この絵を描いていたんだろう。

絵の中のわたしは、何を見ているんだろう。


ラフィナの思う()()()に。

()()()も、なれるのだろうか。


「はやく……会いたい、です。ラフィナ……という、人に」


知りたい、と思った。

人に対する怖さは、きっと、ずっとあり続けるだろうけど。

それでも、この男と。そして、()()()に対してなら。


……造られたばかりの自分が、そう感じるのも変だと思うけど。


「行こうか。ラフィナのいるところへ。君の……大切な、場所に」


わたしの造られた部屋は、ベッドやいくつかの棚が並んでいるだけの、何もない部屋だった。

頷いて、男の後に続いて部屋を出る。

少しだけ進んだところで男は足を止め、振り返って部屋を見ていた。


――すぐに戻るから


何もない、誰もいない部屋に向かって。

そう、言っていたように思う。


不思議な人だ、と思った。

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