表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

〜始まりの街に現れた双子〜04

4.異変


「このへんかの?」

ジャリ…


「ほんとにフェルナさんに何も言わなくてよかったのかなー!」


カランカのギルドに申請をした次の日。

約束通りギルドにライセンスを受取りに行き2人は無事ギルドの受付フェルナからギルドのEランクライセンスを「2人が銀狼を倒した裏付けがとれたからライセンスの発行できたよ!!!でもこのEランクライセンスは冒険者ってくくりじゃないの!1番下のランクの見習いライセンスだからね!仕事も採取系のクエストしかできないの!モンスターに襲われたりした時はもちろん自分の身を守る事はしかたない事だけど自分からは進んで戦わない事!危ない事はしないの!絶対だよ!」と強く念を押されながら貰った。


商人のレオナルドからカランカに送ってもらう途中に聞いたダンジョンの入り口を見に行こうと、カランカの西門の門番の前をさりげなく抜けようとしていた。


「ん?子供!?…どっか行くのかい?この先ダンジョンがあるから中に入らないようにね!」


「な、なんじゃ!!?わ、わかっとる!ほれ!ギルドのライセンスじゃ!ダンジョンになんか近寄らん!す、少し薬草を取りに行くだけじゃよ!」


ラビスの後ろに隠れながら自分のライセンスを自慢げに見せるリズ。


「ん?緑色の…ライセンス?あ!採取者か!そうか!気をつけてな!」


何故かフェルナに怒られるのが怖いラビスは、問題にならないように最新の注意を払っていた。


カランカの西門から見える少し離れた小さな丘。

所々岩肌が剥き出しになり、歩みを進めると大きな洞窟が見えてきた。その入り口は自然な洞窟を保ちつつ所々に装飾が施され、まるでその大きく開けた口で息をする様に風が2人の髪をなびかせた。


「い…生きてるみたい…」


「結構立派なダンジョンじゃな…」



ーーー



「ぎ、ぎ銀王!!?」


椅子を倒して立ち上がったフェルナが受付の後ろにある、査定所と繋がった小窓から顔を覗かせて叫んだ。


「ぎぎ、銀王って本当ですか!!?」


「のおおわ!!!どどどうした嬢ちゃん!ほ、本当も何もあっしの目を疑うんですかい!!?」


「馬鹿言わないでください!それを持ってきたのは8歳の子供ですよ!!?」


「は、8歳!!?じょ、嬢ちゃんいくらなんでも、うううそ言っちゃいけねぇ!!!」


「おおおおい!エールまだかー!!!?」


「うるさい!!!」

「うるせえ!!!自分で入れろ!!!」


「ど…どうした2人とも?」


「少しだけ静かにしていて下さい!ギルバードさん!!!」


「お…おう…」


銀王は銀狼の群れを束ねるリーダー。

その発現率は極めて少なく。

多くの場合ただの銀狼で編成された、

「銀狼が集まっただけ」なのに対して、

銀王が率いる群れには統率が見られ、

戦術を使う。


特別な個体とされる銀王は単体でBランク。

その銀王が率いる群れの討伐はBランク以上を有したパーティーに限り任せられる。


受付の椅子に座り直したフェルナは双子の項目を埋めたライセンス申請書を見ながら頭を抱えてブツブツと状況を整理していた。


「レオナルドさんの話からすると1番に襲って来た大きな銀狼が『銀王』…それを拘束したのがリズちゃんで地面に叩いて倒したのがラビスちゃん…しかも一撃で?…」


「いやいやいやありえない!いくらレオナルドさんの話でも信じられない…」


「2人が査定所で取り出した8匹の中で7匹は私も銀狼である事は確認してる…もし銀王の可能性があるとしたらおそらく1番状態が良くなかったあの銀狼…」


「…銀王の特徴である黒い立髪が手違いでレオナルドさんの荷台の荷物から入り込んだとか?」


「いや、自身で解体と査定を行うダンさんに限って間違える可能性は低い…ただ、ダンさんの腕を疑うわけじゃないけど、いつもより銀狼の査定量が多かったのも確か…」


「もし…これが全て本当だとしたら…2人ともBランク以上の大型ルーキー?…」


「…でも私は…あの子達のスキルを知っている…カードに表記されるスキルは絶対…」


「…残るは…2人の身体能力…」


「…よし!決めました!そもそもスキル以外の身体能力を測るための試験が銀狼の討伐です。」


「とりあえず気が動転していたレオナルドさんの言っていた氷のスキルとダンさんの銀王は何かの間違いだったとしても銀狼8匹の討伐は事実。仮ではありますがEランクの見習いからならライセンスを発行しても問題ありません!」


そう自分に言い聞かせて書類に判を押すフェルナは小声で2人に祝福を送った。


「ようこそ。リズちゃんラビちゃん…」


生死と隣り合わせの冒険者ギルド。

いくら、身寄りのない子供の救済措置と言えど例外はなく。癒しを求めていたフェルナだが、私情は挟まずに自分を律し厳しく公正な判断に努め、ようやく出た結論に納得し肩の荷が降りたと同時に嬉しさが込み上げていた。



ーーー



「全然人がおらんの〜」


「ちょっとだけ入ってみる???」


「だめじゃろ!」


「だってこの辺岩ばっかりだからもう薬草ないよー?」


「ダンジョンの中の情報くらいは知りたかったが…こうも人通りがないとはの…」


フェルナから念を押された手前。ギルドでダンジョンについて聴き込みすることができず、ダンジョンを行き来する冒険者達からならと、入り口周辺で薬草を取りながら世間話を持ちかけて聞き込みをするといった算段が、小1時間冒険者に出合えずに崩れてしまっていた。


「しかし…レオナルドの言っていた話は…なにか引っかかるの…」


銀狼からレオナルドを助けた後。

山道の脇に落ちた荷馬車の車輪を戻して崩れた荷物を直した。街まで向かうついでに乗せてもらえる事になり、これから向かう街について教えてもらっていた。



ーーー



「これからいく街はどんなところなのかの?」


「あ!はい!これから向かう街は始まりの街カランカとも言いまして、初心者用のダンジョンがございます!ダンジョンをクリアするとその冒険者に必要な装備が1つだけ与えられるという噂で流行った街です!」


「必要な装備?…」


「あ!あくまで噂です!大昔のお話で、近年ではめっきりその話も聞きません!なんでもダンジョンの地下深くにいるモンスターが豊穣の神の神殿を守っていてそのモンスターを倒せば豊穣の神からその人にあったアイテムが授けられるというお話なのですが…実際にはそんな神殿は目撃されておらず。そもそも神様が現れるなんて、作り過ぎたお話で。始まりの街カランカが冒険者を集める為に流した噂だという事で非難を浴びる事になってしまいました。」


「豊穣の神の神殿…」


思い当たる節があるラビスは言葉を繰り返した。


ーーー



「そうじゃ!豊穣の神…どこかで聞いたような気がするんじゃが…」


「ん?…あ!ラビス!あれ!ダンジョンの奥から人が歩いてくる!ほら!!」


日も落ちかかり、洞窟の奥から冒険者が出てくる。


「よ、よし!さりげなくじゃぞ!薬草を積んどるふりじゃ!」


「う、うん!!!」


ジャリ、ジャリ、ジャリ…


背中で足跡を感じ。

近づいてくる冒険者に最大限さりげなく、しかし緊張で肩をこわばせた2人が背中を向けながら話しかけた。


「あ、あぁーお!お疲れ様です!こ、この辺はぜ全然薬草がないのー??ダンジョンの中はもう少し生い茂ってたりするのかのぉー?」


「つつつつつ疲れたぼぼぼぼ冒険者さんがごにょごにょごにょ…ごにょごにょごにょ」


ジャリ…ジャリ…


やっとのことで出会えた冒険者からの返答は沈黙。

リズは極度の人見知りで、

目の前の岩にゴニョゴニョ言う始末。


そもそも、

リズの人見知りを考慮出来ていなかったこの作戦は…

初めから成立していなかった。


焦りを感じたラビスはさらに話を続けた。


「こ、この辺は全部とりつくしてしまってのー?ちょっとだけダンジョンに入ってみようかのー?」


「ご、ごにょごにゃごにょ…みゃー…みゃー」


リズの姿はもはやなく。茂みに隠れてさりげなく猫を演じていた。

(や、役に立たんヤツじゃ!!!)


「た…け…て…」


聞き取れはしなかったが返ってきた冒険者からの返答に喜び2人は目配せをして振り向いた。


しかし目線の先にいたのは大怪我をした冒険者だった。


ジャリ…ドサッ


「お、おい…凄い怪我をしとるではないか!」


すぐに反応できたラビスと相対し、リズの反応はまさに初めて見るそれだった。


「え…???なに??…」


赤い絵の具を溶いた水を頭から被ったような容姿に現実味が全く湧かず焦りも感じない。ただこの一瞬は人見知りをしている場合ではない事が直感で分かった。


「え…?だ!誰か!!!なな仲間は!!?」


「ガフッ!!!…た…たすけ…ま…まだ…な…中に仲間が…」


「おい!しっかりしろ!こ…こやつ意識が…リズ!ヒールじゃ!」


「あ!!は、はい!!!ヒール!!!」


回復の為、倒れた冒険者に咄嗟に手を当てたリズはその手の平から感じる暖かさとヌメっとした血液が指の間から溢れ出る状況に頭が真っ白になってしまった。


「あれ!?ヒール!!!ヒール!!!」


ドプッ…

「だ、だだめ!止まって!!!」

深く切り裂かれた傷口から血が溢れる。


「で、できない!血が止まらない!!!」


「おちつくんじゃ!」


「こここの人まだ生きてるのに!し…死んじゃう!!!」


動転し冒険者に触れていた手が震えながら離れていくリズの両手をラビスが握る。


「リズ!!わしの目を見ろ!…大丈夫。わしがおるぞ!ほかに見とるやつもおらんじゃろ。いつも通りわしだけじゃ!いいか?イメージじゃ!なんじゃったか…あにま?の人になりきるんじゃろ?」


「う…うん!あ…アニメのキャラに…なりきる…」


「そうじゃ!いつも通り。あの長ったらしい詠唱をしてクネクネせい!」


ふぅー


そうだ…これは現実。

何度も夢見たゲームのような世界。

でも…ゲームじゃないんだ…

ワクワクして…忘れてしまうけど…

人は…死んでしまう。


でも…


もし…


こんな取り柄のないボクの厨二病が…

この世界で力に変わるのなら…


ラビスの手を握り返し。

震える唇で大きく息を吐き出すリズ。



「神聖なる光の民よ…」

目を閉じてその場に立ち上がるリズ。

両手を広げて手についた血が飛び散る。

ビチャッ!


(よし!切り変わりよった!)


「血の盟約に従い我が両手に集え…」

広げた手を激しく叩き合わせ、

飛び散る血がラビスの顔に掛かる。


ビチャ…

(お、おい…血が…血が飛び散っとる…)


バッ!バッ!ババッ!ビシッ!!!シュッ!

目にも止まらぬ速さで印を結び始めるリズ。


「ヒィイイイイイイイイル!!!」


リズの周りに小さな光が無数に現れ両手に集まる光を力強く瀕死の冒険者に叩きつける。

バンッ!!!ビシャ…

顔に付いた血を拭っていたラビスがさらに血を浴びる

あきらめて遠くを見つめるラビス。


つたっていく光が冒険者の体をうっすらと光らせ始める。


足や腕、背中に深く残った爪痕がゆっくりと閉じていく。眉間にシワを作り苦しんでいた冒険者の顔に生気が戻る。


「よ…よし…大丈夫そうじゃが…と、とりあえずなんか拭くもんないかの?」


「え…!??い…いやああああああ!!!!ラビイイイイイイス!!!!!」


「いや、お前がかけた血じゃて!!!どんだけバシャバシャしよるんじゃ!!!」


リズから薬草採取で汚れた手を拭くタオルを受取り、顔についた血を拭き取るラビス。


「しかしまだ仲間が中に取り残されとるらしい!ひとまずこやつを…1番近くの…あ!西門の門番ならおるか!!」


ピィイイイイイイイイイ!!!!

丘に登ったラビスが指笛を鳴らし異変を知らせる。


【身体強化】を目に【集中】+【調整】

【望遠】に派生します。


ピィイイイイイイイイイ!!!!

「よし!門番が向かってきよる!その冒険者は門番の人に任せよう!迷ってる時間はない!いくぞ!!!」


「うん!!!」



ーーー



2人がダンジョンに入った数分後。

カランカ西門の門番が駆け付けた。


「たしか、この辺から音が…あ!!!おい!!!大丈夫か!!?血…血が飛び散って…おい!何があった!!!おい!クソ意識がない!今、街まで運んでやる!ふんばれ!!!」


倒れた冒険者を起こして背負い込んだ警備兵はカランカまで走る間、冒険者に抱いた違和感を頭で整理していた。


(ダンジョンから続いていた血痕。倒れていた場所で飛び散った大量の血。強い力で破壊されたような装備。大きな爪でえぐられたように裂けた衣類。装備や衣類の痕跡だけを残して深いキズが見当たらない体…そして、背中に見えた3本の大きな爪痕…わ、訳がわからない…どうなってる…そもそもあの初級ダンジョンにそんなモンスターは存在しない…まるで…ドラゴンの爪に裂かれた様な…)


「ま…まさかな…」



リズ「ごごご、ごごごご意見…ごかかか…ごにょごにょごにょごにゃ…にゃー…にゃー」


kuze「ひょ!評価ボタン!お願いします!」


↓↓↓※広告の下にあります!




Twitter→@kuze45526408

最新情報やイラスト、挿絵なども載せてます!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ