〜始まりの街に現れた双子〜03
03.行商人レオナルド
カランカに続く山道は陰り、不穏な鳴き声が辺りに響いていた。
この山道はここ数年、事故や事件、襲撃などがなくなり安全になっていたが、各地の情報を知るレオナルドは商人としての感が警鐘を鳴らしていた。
「こ、こんなにもこの道は物騒だったか?」
単身で荷馬車を走らせ護衛を付けなかった事を後悔しながら、素早く駆け抜ける事だけを考え荷馬車を走らせた。
が早々にレオナルドの嫌な予感は的中した。
「…気配が…増えてる?…う、うああああああああ!!!!」
馬のいななく鳴き声と共に荷馬車が揺れ、山道のわきにそれて車輪が溝に落ちてしまった。
「く、くそ…囲まれてる…」
茂みをかき分ける音が荷馬車の周りをぐるぐると包囲しながら近づいてくる。
「たたたたたしかこの辺に…」
ガサガサと音を立てて焦りと震えで荷物の隙間からやっと取り出した護身用のブロンズソードを構えるレオナルド。
近づく気配が茂みから現れる…
「ぎ、銀狼!!!まさか…この気配全て…!!?」
銀狼は単体を好むモンスター…
群れを作る事は珍しく、群れとなった銀狼の護衛にはCランクの手練れを雇ってなんとか凌げるほど格段に難しくなる。
「く…くそおおおおおお!!!」
銀狼が襲いかかった瞬間。ブロンズソードに隠れるように叫ぶレオナルドが異変に気付く。
「おおおおおおおお!!!!お?」
真っ先に襲いかかった1番大きな銀狼が空中に凍って寸前で止まった。
茂みから何か言い争う2人の声が近づいてくる。
「できた!!!!」
「出来とらんじゃろ!まだおるぞ!」
「かしこみかしこみもうす…もおす?…
なんかちがうよね!和風過ぎ??」
「それは、そんな意味があるんかの?…」
「???…小さな双子??」
森の影から道に出てきたのは小さな双子だった。
「やっぱりボクは洋風なのがいいな!」
「どうでもいいが、はよぉ倒さんか!」
「よーし!ふぅ〜…水の精霊ウンディーネよ…我の右手に宿りし龍と…地よりその身を解き放て…冷酷監獄!!ホワイトアウトォオオオオオオ!!!!」
女の子がなにか上にポーズ。右手を構えてポーズ。そして地面に手を置いてポーズをする。
クネクネ変な動きをしていた少女を不思議に思っていると、地面に右手を下ろした少女が何かを叫ぶ。
空気中の水分が少女に引き寄せられていく。
ピキィ…
「んな…(な、な何をしたんだ!!)」
少女の触れた地面から伸びた白い結晶は取り囲んでいた銀狼を全て氷像のように固めてしまった…
「ほら!できた!!!見てた?ラビス!!」
「まぁ…まあまあじゃな!」
「ええええええ!」
護身用の剣を置き、意を決し2人の前に出て行く。
「た、旅のお方でしょうか?…助けて頂き有難うございます!!!」
「ひ!ひひぃヒト!!!?」
先ほどまで、元気に話していた少女が少年の影に隠れる。
「なんじゃ?気づいておらんかったのか?さっきから荷馬車の裏におったじゃろ!」
まとわりつく少女に呆れながら落ち着きを放つ少年は話を続ける。
「怪我はないかの?」
「は、はい!大丈夫です!!!」
グルルルルルルルルル…
「ひ…ひぃ!!!」
空中で氷から顔だけ出している銀狼がパキパキと氷にヒビを作りながら喉を鳴らす。
「そいつ氷がきいとらんの!…リズ!」
さっきまで意気揚々としていた少女が少年の後ろに隠れなから返答する。
「だ…だめ…恥ずかしくて…魔力が使えない…」
「んな!さっきまで出来てたじゃろ!クネクネせんのか?」
「ク、クネクネしてないもん!集中しないとダメなの!」
「う〜ん…しかたないのぉ…」
【身体強化】を腕に【集中】+【調整】
【剛腕】に派生します。
ガンッ!!!!
割れかかった氷ごと喉を鳴らして威嚇をしていた大きな銀狼は地面にめり込んでしまった。
「ヒィ!!!」
「大丈夫じゃ。わしはラビスこっちの隠れてる奴がリズじゃ。おぬしは商人で間違いないかの?」
「は、はい!!!私は行商人のレオナルドと申します!」
「わしらは街を探しとるんじゃがこの近くにあるかの?」
「はい!あと馬を2時間ほど走らせた場所にカランカという街がございます!このあたりじゃ1番大きな街ですよ!」
「おおおおお」と目を輝かせるリズ。
の前で無表情なラビスは少しだけ鼻を広げて喜んだ。
ーーー
「え?いや、え?それは本当にリズちゃんとラビスちゃん?」
顧客が通されるギルドの客間からフェルナの声が響いた。
「ええ!間違いなくリズさんとラビスさんでした!小さな体であんな素晴らしいスキルを操れるなんて…空気中の水分を氷に変換するスキルがあるんですね!?」
「ちょ!え!!?ないないない!!そんなの!空気中の水分が氷に!!?馬鹿なこと言わないでください!それじゃあまるで御伽噺の魔法みたいじゃないですか!」
ーーー
一般的なスキルしか持ち合わせていないはずのラビスちゃんが1番大きな銀狼を地面にめり込ませ…スキルを持っていないはずのリズちゃんが銀狼8匹を一瞬で氷像に変えた…加えてエンチャントアイテムも持っている?
受付に戻ったフェルナは混乱しながらも、なんとか現状の把握に勤めようと大きくため息を漏らしていた。
「ただし8歳の子供で有力スキルを持っていない…やはり死と隣り合わせの冒険者には…」
こんなあやふやな状態でライセンスを発行していいの!?…何か決め手があれば…
「嬢ちゃん!!!査定がおわったぜ!こんな上者久々だな!銀王を倒すなんざ期待のルーキーじゃねぇか!」
「ぎ、ぎ銀王!!!!??」
うおおおおおおお!パニック通り越して楽しくなってきました!!!頑張るぞおおおおお!!!
ご意見・ご感想・応援おねがいします。
ここだけの話。
下の広告の下の星を願いを呟きながら5つ輝かせると願いが叶うらしいです。(嘘です)