〜始まりの街に現れた双子〜02
02.【能無し】の双子
「あっちも筋肉。こっちも筋肉。そっちにも筋肉。はぁ〜…いい加減…いい加減…むさ苦しい…」
「かわいい冒険者とか現れないのぉおお!?」
私が働く始まりの街「カランカ」のギルドに2人が来たのは1週間ほど前。冒険者達のむさ苦しさが凝縮した様な溜まり場「ギルド」に現れた天使。
これが神の御心かーー
綺麗な顔立ちの子供が2人。後光に照らされながら入ってくる。あんなにも小さい足で、でもしっかりとした足取りで、ゴツゴツした冒険者しか行き来しないはずの扉から入って立ち止まり、無表情の男の子の後ろからひょっこり顔を出している女の子が「おおお」という顔で目を輝かせながら周りを見渡している。
前の子がお兄ちゃんかな?…お兄ちゃんの袖をつまんでいるけどほとんど体が出てきちゃった…
か、かわいい…
「…い!おい!受付はここでいいのかの?」
「ハッ!!!ご、ごめんなさい!!どうしたの?道に迷ったの?」
「いや、ここなら換金とライセンスの発行が出来ると聞いたのじゃが。」
「!!!(しっかりした子!!)」
この男の子もこんなにちっちゃいのになんてしっかりしているの!!!落ち着いた顔も凛々しく見える…双子かな…双子の天使。あぁ…かわい…だ、だめだめ!
とろけてる場合じゃないわ!仕事しなくちゃ!
「ら、ライセンスと換金ね!私がギルドの受付をしてるフェルナよ!今準備するわね!」
ーーー
「では、まずライセンス、ギルドカードの発行ですね!このギルドでのライセンスは身分証も兼ねています!とれればギルドの仕事もできるようになるよ!この真ん中に置いてあるカードからちょっと出てる針に指を押し当ててください!ちょっと痛いけど我慢してね!」
模様の入った円形の石板の中央の黒いカードは小さな針で貫かれている。
「ああ!血で情報が記されるのか。」
ラビスが躊躇なく、人差し指を刺すと真っ黒だったカードがチリチリと焼けて文字が現れた。
「はい!これで完了よ!なになに…」
□□□□□□□□□
名前…ラビス・リベット
年齢…8歳
スキル
「身体強化」…一時的に体の強化ができる。
「調整」…調整する事ができる。
「集中」…集中する事ができる。
□□□□□□□□□
「あぁー…えーっと…どうしよう…あ!あなたもやってからね!」
頭を抱えかけてラビスの後ろに隠れていたリズにもライセンスをうながす。
嫌々出てきたリズが人差し指を震わせながら針に指を近付けていく。
「がんばれ!ちょっとだけ我慢よ!」
「うぅ…」
ツーっと少しだけ血が流れカードに情報が現れる。
「えらいえらい!ちょっとみてみるわね!」
リズの頭を撫でて浮かび上がった情報を読み上げる。
□□□□□□□□□
名前…リズ・リベット
年齢…8歳
スキル
なし
□□□□□□□□□
「ス…スキルが無い!!!?そんなこと…ごめん!もう少し出して!」
スキルが無い事が信じられないフェルナはリズの指をしっかりと針に押し付ける。
「んにゃあああああああああ!!!!」
ギルドに変な悲鳴が響く。
「な、なんだ!?」ガチャ!
酒場でくつろいでいた冒険者が椅子に立て掛けた武器を取って身構えキョロキョロとしている。
この世界では生後すぐに神の恩恵である「スキル」を少なくても2つ、多い人で5つ必ず持って生まれる。後天的にスキルが芽生える事は無く。職種に応じたスキルを所持しているかで選定され、そのほとんどの人が生まれながらに人生が決まる。
「そんな…どうしてスキルがないの…」
ーーー
「結論から言いますね!あなた達のスキルじゃライセンスは難しいわ…」
「そうか…」
肩を落とす2人。
「ごめんね…お姉さんもすごい辛い…私の癒しが…」
「…ん?あまりきこえなかったのじゃが…」
「い、いや!こっちの話よ!ちなみに、ご両親はいるのかな?」
「いや、わしらは2人で暮らしておる。」
「なるほど…身寄りがないんだったら…1番下の救済措置に入れない事もないんだけど、試験がね…」
「ラビスちゃんはスキルを持っているけど、冒険者になるには基準として攻撃スキルの有無が大事になってくるの…ラビスちゃんのスキルには実用的な攻撃スキルがなくて…試験を受けるにはちょっと危な過ぎるの…」
「それに今まで前例はないんだけどリズちゃんに関してはスキルの表記がされてなくって…スキル以外の身体能力を測るために一応試験はあるんだけど、8歳の身体能力でどうこう出来る試験じゃないの…だからおすすめできないわ…」
「なるほど…こまったのぉ」
「ごめんね…力になれなくて…教会の養護施設を尋ねれば一応身分証なら発行してもらえると思うわ!ギルドのお仕事はできないけど街の他のお仕事はできるわよ!」
「なるほど。」
「あ!あと換金だったよね!薬草とかかな?」
「いや、道中に出てきたイヌを数匹…」
おもむろにラビスとリズが空間収納から
仕留めたイヌを取り出し始める。
「まってまってまって!!!ちょ!どこから!?え!?」
「あなた達エンチャントアイテムを持っているの!!?いやいやいや、それよりこのモンスター銀狼じゃない!!?」
「あ?え?(しまった…一般的ではないのか!)」
「一旦戻して!ここじゃ人の目があるからこっちに来て!!」
受付の前の騒ぎをなんとか誤魔化し、裏口へと2人を連れて行く。
「…ふぅ!ここなら大丈夫よ!」
「銀狼」と呼ばれるモンスターを全部で8匹取り出す2人。
「…(ちょ、ちょっと…これ…本当に2人で!???)」
「コホン!ま、まず、エンチャントアイテムなんだけど、人前で見せるのは絶対にしないように!それはね、ダンジョンの至宝と言われるスキルに変わるような力が付いているアイテムなの!超一流の冒険者がもっているような代物よ!この世界に数えるほどしか確認されてなくて、それだけで国が動く事もあるの!」
「しょ…承知した…」
びっくりしたような顔で目配せをする2人。
「あと、この銀狼だけど…本当にあなた達が倒したの?リ、リズちゃんも?」
「ああ。道中行商人の荷馬車が襲われておったので2人で倒したんじゃが…これもなにかまずかったかの?…」
「えっと…銀狼の単体での討伐はそんなに難しくは無いんだけど…1匹の討伐でDランクのクエスト。ただ、群れを作った5匹以上の銀狼の討伐の場合はCランククエストなの…」
不安そうな2人をなだめる様に話を続ける。
「全然、まずい事は無いんだけどね!受付で話してた試験って言うのが銀狼1匹の討伐なのよ!」
「その商人の名前は分かるかな?」
「う、うむ。」
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