〜始まりの街に現れた双子〜01
00.双聖
【身体強化+身体強化+身体強化+身体強化+身体強化+調整+集中】
エクストラスキル【獅子奮迅】を使用しますか?
「うむ。」
ラビスの振り下ろした剣は眩い光に変わり地面が吹き飛んでいく。遅れた爆風と轟音が上がる中、それを利用して宙に舞ったリズは危機感もなくポーズをキメながら詠唱をしていた。
「深淵の闇より出でし…ガフッ」
飛んできた瓦礫がリズの顎をかすめる。
「また遊んどる!そんな詠唱せんでもだせるじゃろが!」
ミノタウロスの斧を片手で払いながらラビスが注意する。
「ボ、ボクの勝手でしょイメージが大事なんだから!」
リズの背後から大きな影が現れる。
「ギャワアアアアアアアア!!!!」
5階建てのビルほどはある大きなドラゴンがリズを丸呑みにしてしまった。
【プロミネンス】
ジュワッ…
丸呑みにした竜の首は途中から円形に途切れ、勢いのまま地面に跳ねて転がり胴体は力が抜けた水風船の様に膝から崩れて足元の魔物を押し潰しながら倒れる
「うえッ!汚ねぇ〜」
竜の唾液に汚れたリズがトッと靴を鳴らして着地する。
「はよぉ唱えんからじゃ」
ニヤリと笑いながらミノタウロスの頭を吹き飛ばす。
一国を襲った脅威はSランクの派遣を待たず、年端も行かないEランクの双子によって危機を逃れた。
「な…なんなんだあいつら…」
ギルドで散々2人を罵倒していたギルバードが自分のスキル【心眼】を疑ったのは後にも先にもこれっきりだったという。
ーーーーー
01.落ちこぼれの双子
ここは山に囲まれた小さな街「カランカ」
街の1番奥に位置する木造の古ぼけた建物。
栄華を誇った装飾が黒ずみ欠けて時が経ったのが分かる。これがこの街のギルドだ。
中に入ると、だだっ広い情報交換の場所。酒屋が広がり、その奥に受付がある。
「うわぁ〜今日も妖精さんがダブって見えんなぁ〜俺のお願い叶えてくれよぉ〜」
「おいおいきいてんのか?」
「お前らだよお前ら!」
「おーい!」
「お前ら【能無し】なんだから冒険者なんてやめちまえってぇ〜なぁ?」
入り口から入ってきたきれいな双子にやけにつっかかる酔っ払いが嘲笑う。
怯えるリズを背中に隠し、慣れたラビスが歩みを止めずに受付に向かう。
「毎日毎日よく飽きねぇなぁ!!!ここは遊び場じゃねぇんだよ!ガキ!!!」
「同感じゃ。」
キッと睨み返すラビスの迫力になぜか一瞬たじろぐ酔っ払いは頭を振り我に返って言い返す。
「あ、ああん!!??」
「はいはいはいはい!そこまでですよ!も〜飲みすぎです!ギルバードさん!」
「邪魔すんじゃねぇ!!!お前らギルドがこんな能無しのガキにライセンス与えるからだろうが!!」
「それは何回も説明してるでしょ!!身寄りがないラビちゃんリズちゃんは外れの山から来てるからこのギルドでライセンスを発行したら途中で採取クエストができて一石二鳥なんですって!ギルバードさんも酒ばっか飲んでないで仕事してくださいよ!し、ご、と!」
「ケッ!ろくなクエストもねぇだろうが!」
このカランカ付近では、ここ10年ほど大きな危機や異変はなくなり、冒険者で活気付いていた街は平穏を取り戻すと同時に冒険者も比例し少なくなっていた。
「まぁ、これが平和っちゃ平和なんですけどね!ギルバードさんも変なプライド捨てて低ランクのクエストもやってくださいよ!いざって時に体が鈍って動けなくなりますよ!」
「鈍ったぐらいがちょうどいいんだよ!簡単なのは他のやつにやらせとけ!金にゃ困ってねぇ!!…ケッ!用が済んだらエール持ってこいよ!」
「はいはい!」
「…間違ってもこいつら【能無し】に期待なんかさせんじゃねぇぞフェルナ」
真剣な表情でフェルナの耳元で囁き、テーブルに戻るギルバード。
「ごめんなさいね!!!…ほら!おいで!怖くないよー!よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
ラビスの後ろで怯えるリズを猫を懐かせるようにおびき寄せ、捕まえて撫で回しまくって落ち着かせるフェルナ。
「お…おい!にゃめ、にゃめろぉおおおおおお!」
「んもぉ〜かわいすぎ!…あ!!!換金だよね!」
やりきったフェルナが仕事を思い出しボサボサになったリズと手を繋ぎ受付に向かう。
「いやぁ〜でも毎回凄いわね!薬草、毒草、マヒ茸にネムリ草」
「あ、あぁ〜…あと、銀狼が少しあるんじゃが、またやりすぎたかの?…」
「いやいや、やりすぎに越したことはないわ!でももし深い山まで探しに行ってるんだったら危ないからやめてね!あなた達は冒険者ってくくりになってるけどまだ子供なんだから!無理はしないこと!」
「それにね、ラビちゃんは一応1番下のEランクギリギリのスキルを持ってるけど、リズちゃんはスキルがないんだからね!」
「ああ。わかっておる。」
「っくぅ〜!!!(愛くるしいリズちゃんにしっかり者のラビちゃん!癒されるぅ〜)」
奇声を発するフェルナの小動物を見る様な目は返事をしたラビスにも長々と向けられていた。
「おい!!!エールまだかぁ!!!!」
「はいはい!今お持ちしますよー!!」
「あんなの気にしなくていいからね!またね!」
小声でウインクをするフェルナから換金したコインの入った皮の袋を受取り、騒ぐギルバードを横目にギルドを出ると、うずうずしたリズが前に出て話しかける。
「ねぇねぇ!結構溜まったかな???」
「うむ。さっきの採取で800ペルと、明日には今日渡した銀狼2匹の査定が終わるじゃろーから約10,000ペルとして合わせて45000ペルぐらいかの…」
「明日お買い物いけるんじゃない!!?」
「うむ!食料も買わんとだしの!」
「やった!!!まだあの服あるかなぁ!」
「じゃあ明日は少し装備を整えようかの!」
「ひゃっふぅーーー!!!」
「ひやふー…ひやっふー?…」
喜んで先を行くリズと同じ道を言葉の意味をさぐりながらカランカを出るラビス。
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