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第五百三十五話 ヘレナの我儘


 レオールさんがウチを尋ねてきたことに喜びを隠せなかったが、次の瞬間ヘレナとアイナが顔を出して来たことで俺は動揺してしまう。すると、さらに顔を出してきた人物が申し訳なさそうに口を開く。


 「おかえりー、ラース君! ごめんね、お義父さんもサージュもこっちに来てるからってアイナちゃんが行きたがっちゃってー」

 「ノーラも居るのか……兄さんは?」

 「お留守番ー。って、サージュは?」

 「父さんとガストの町に帰ったよ。アイナ、サージュを追わないと」

 

 俺が帰宅を促すと、アイナは唇に指を当てて考える仕草をしてから笑顔で返してきた。


 「んー、ラース兄ちゃんとアッシュと遊んでから帰る!」

 「そ、そうかい? サージュが寂しがっているかも……」

 「サージュはロザが居るから大丈夫、二人きりにしないとだよ!」


 むう、我が妹ながらませた発言をする。それなら旅立つ前の時もマキナと二人きりになる時間をもっと欲しかったよ。

 まあ、逆に言えば友達とか知り合いが増えたから色々と考える余地ができたということでもあるので長期的に見ればいいことかなとも思う。


 「あ、そうだグランドドラゴンのボーデンも父さんたちと一緒に行ったぞ。アイナとティリアちゃんに会いたいってさ」

 「じいじも来るんだ! わーい!」

 「くおーん♪」


 なんだかよく分かっていないけどアイナが嬉しそうということで抱っこされているアッシュも喜んでいて……庭の中へ入っていった。


 「アイナ、家に帰るんじゃないのか!?」

 「あーとーでー! セフィロー、シュー、おいでー」

 「あ、待ってよー」

 「わふ」


 ゴムボールを蹴りながらアイナはシュナイダーと庭を駆け出したので、俺は口をへの字にして頭を掻く。


 「まあまあ、いいじゃない。ノーラもここまでお疲れ様」

 「うん、ありがとうマキナちゃん。お散歩で王都まで来れるのはいいよねー! ちょうどヘレナちゃんが来たから一緒にお留守番してたのー」


 マキナが苦笑しながら労うと、ノーラは微笑みながらもうひとつの疑念について口にしたので、俺はヘレナに目を向けて尋ねる。


 「……で、ヘレナはなんでここに居るんだ?」

 「んー、まあいいじゃなぁい。お友達の家に遊びに来るのに理由ってあんまり必要なくない? それより、レオールさんをこのままにしていていいのぉ?」

 「ああ、僕は最後でいいよ? 今は忙しくないしね」

 

 とは言うものの、わざわざ訪ねて来てくれたのにこのままというのも失礼な話なので俺はため息を吐いてから玄関へと向かう。


 「ごめんレオールさん、とりあえず家の中で話そうか」

 「はは、相変わらず苦労性みたいだね。お邪魔するよ」

 

 嫌なことを言うレオールさんを尻目に、リビングへと向かう。全員が揃ったところで、俺はノーラとヘレナに声をかけた。


 「さて、と。ノーラとヘレナはマキナの部屋に行っててもらえるかい? 今から大事な話をするんだ」

 「はーい」

 「断るわあ♪ この話って向こうへ行く計画の話し合いでしょう? アタシも行くんだから参加するわよ」

 「は?」


 手を上げて返事をしたノーラに対し、ヘレナは笑顔で拒否してきた。俺は変な声を上げてしまうが、咳ばらいをしてヘレナに言う。


 「まだそんなことを言っているのか。ダメだって、ヘレナはアイドルの仕事があるだろ? いつ帰ってこれるか分からないし、なによりずっと戦っていないんだから危険だ」

 「ラースの言う通りね。ただ他国の町に行くだけならいいけど悪魔達がね……」

 「正直、ヘレナは目立つからひっそりと行きたいあたし達には合わないと思うよ?」


 マキナとファスさんも同意して援護射撃をしてくれる。しかしヘレナはニヤリと笑って俺の腕に絡みついて目を細める。


 「んー、心配してくれるのは嬉しいけど、ルシエールも行くんでしょう? あの子だって戦いからは遠ざかっているわよねえ? だったらアタシでもいいんじゃないのお?」

 「む……」


 そういわれるとその通りなのだがルシエールは商人としての知識があるので、不自然ではない。だけどヘレナにそう言った偽装する役割が必要ないのだ。

 そのことを伝えると、ヘレナは少し考えてから口を開く。


 「行商人に世話になっている旅芸人で良くない? 町から町へ移動して、踊りと歌で生計を立てている、なんてどお?」

 「歌って踊ってたらアイドルだってバレるだろ……レフレクシオン王国にしか居ないんだから」

 「うーん、そこは普通のエッチな衣装とかで! ね、いいでしょ話を聞いても」

 「う、うーん……」


 胸を押し付けて腰をくねらせるヘレナが煽情的なので、目を逸らしながら生返事をしていると、マキナが笑顔でヘレナの方に手を置いた。


 「へ~レ~ナ~? ラースが困っているじゃない! あんたはアイドルなんだから、大人しく町に居なさい!」

 「えー、ヨグスやウルカも行くんでしょう? ノーラとアタシと入れ替わりで入ったパティも連れて行ったら久しぶりにAクラス全員で活動できるわよ♪」

 「ノーラを巻き込んだら兄さんに殺される、それは止めてくれ。仕方ないな、話を聞くくらいならいいけど、国王様との話し合いでヘレナは予定には入っていないから連れて行けないけどな」

 

 あまり使いたくない手だけど、さすがに国王様のことを言えば諦めると思い口にすると、


 「げっ、そういうことぉ? それはつまらないわねえ」


 と、苦い顔をして俺から離れてくれた。そろそろマキナの顔が怖かったので良かったと思いながら、ヘレナに苦言を言ってやる。


 「ヘレナを楽しませるために旅に出るわけじゃないからね。それじゃノーラも聞いていくかい?」

 「うんー! アイナちゃんも戻って来ないし、どうするのか面白そうー」

 「オッケー。というわけで、待たせちゃったけどいいかな? あ、マキナ、レオールさんにお茶を出してもらえるかな」

 「分かったわ!」


 マキナが台所へ向かい、ずっと苦笑していたレオールさんがようやく喋れるといった感じで俺に顔を向けて話し始める。


 「それで、話ってのはなんだい? 僕は衣装以外の服も作れないか相談に来たんだけど」

 「あー、衣装もだけどちょっと仕事を受けられなくなるんだ。俺達はベリアース王国へ行く」

 「……ベリアース王国? あのエバーライドを占領したキナ臭い国にかい? あの国は僕達も商売をしようと思わないくらいいい噂が無いんだけど」

 「まあ、福音の降臨っていう連中のせいだと思うけど……俺達は裏で実権を握っている福音の降臨の教主を倒しに行くんだ」


 俺が言うと、レオールさんは一瞬真顔になり、口元に笑みを浮かべてから口を開いた。


 「商売の匂いがするね、聞かせてくれるかな?」

 「ああ、少し協力してもらうことになると思う」


 俺はレオールさんにことの顛末を話し始めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……外敵の悪魔より身内女性のフォローをしないと危険かも!?
[一言] 流石のヘレナも国王の言葉は 無視できないか?(笑
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