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没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで 【書籍発売中】  作者: 八神 凪
勝利の鍵を掴むために

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第四百九十八話 人間とドラゴン


 「うわ、ドラゴンが四体も居る!?」

 「壮観だな……サージュは居ないのかな?」

 「この島がドラゴンの棲む……」

 「ヒサシブリだな。スコシとんでくる」

 

 ワイバーンのアングリフが馬車の屋根から飛び立ちどこかへ行く。道中結構話していたから会話が上手くなってきた。

 きっとあの時俺と戦ったもう一体のワイバーンのところへ行ったのだろう。


 「ダンジョンの成果があのドラゴン達かな? ロイヤルドラゴンってどれだろう」


 馬車を近づけていくと、こちらに気づいたアイナとセフィロ、それと背の高いイケメンがこちらに駆けてくるのが見えた。


 「おかえりー、ラース兄ちゃん!」

 「久しぶりだあ」

 「おっと、ただいま二人とも。それにアッシュも元気そうだな? ちょっと逞しくなったか?」

 「くおーん♪」

 「ホント、ラースのこと大好きだよね」


 ウルカが苦笑しながらアッシュの背中を撫でると、ヨグスが眼鏡の位置を直しながら驚愕の声を上げる。

 

 「デッドリーベアの子供がこんなに懐いている……凄いな……あそこに居るのが親かい?」

 「そうそう。俺がテイムしているってことになっていて、あのヴァイキングウルフもそうだよ」

 「おお……群れでしか行動しないヴァイキングウルフが!?」


 ヨグスは興奮気味に遠くでラプトールドラゴン三体と戦っているシュナイダーを見ながらそわそわしていた。

 さて、それはともかく――


 「そっちのイケメンは誰かな?」

 <はっはっは、つれないなラースよ! 我だ、サージュだ>

 「え!?」


 ウルカが短く驚くが、俺も声には出さないものの驚いていた。

 

 「サージュ!?」

 「そうだよー! サージュは人間になれたの。アイナも一緒に見てたんだ。ね、セフィロちゃん」

 「うんうん。ロイヤルドラゴンさんは凄く大きかったよ」

 「へえ、見てみたいな……ってそれよりおめでとうサージュ。これで悪魔達と臨機応変に戦えるな」

 

 すると柔和な笑顔で微笑み、俺達に言う。


 <うむ。この島はどうやら我の故郷らしい。……ロイヤルドラゴンは我の父だった>

 「そ、そうなのか……?」


 情報がどんどん増えていき、俺は久しぶりに驚くことばかりだ。ロイヤルドラゴンが父親……となるとサージュって相当強くなるんじゃないだろうか?


 「じゃあ後で俺と戦ってもらおうかな、ダンジョンどうだったんだ?」

 「あそこにいる四体のドラゴンと戦ったんだ!」

 「ほほう、それは拙者も興味深い話」

 「あ、スケルトンのおじさん」

 「オオグレと申す。ウルカ、早速ドラゴン達のところへ行こう」

 「いいかな?」

 「俺はもうちょっとサージュと話すから先に挨拶してきなよ。ヨグスもみんなと会うのは久しぶりだろ?」

 「そうしよう。フフ、ドラゴン……いっぱい……珍しい……」


 不敵な笑みを浮かべてウルカとヨグスとオオグレさんがリューゼのところへ向かうのを見送りつつサージュ達との会話に戻る。


 「なんにせよダンジョンから無事に帰ってくれて良かったよ、ロザがかなり脅してきていたから」

 <そうだな。もしかすると最初から分かっていたのかもしれない。ロザが一目で、我が父の子だということを見抜いて先手を打った>

 「確かに、修行させている感じだったもんね」


 セフィロが俺の背中によじ登りながらそんなことを言い、アッシュも足元で抱っこをせがむので抱え上げてやる。


 「あー、アイナも!」

 「後でな。ちょっと重くなったなアッシュ」

 「くおん!」

 

 修行の成果だと言わんばかりに勇ましく鳴き、俺の肩に手をぺちぺちと叩くアッシュ。セフィロは樹だったころの癖が抜けていないのかな?

 

 「まあ、結果的に人化もできたしお父さんにも会えたからサージュにとってはいいことだったな」

 <そうだな、この島に来てそれほど時間は経っていないが、安心する場所だ>

 「わ」


 サージュはまた微笑み、アイナを抱っこして続ける。


 <だが、我の家はやはりアーヴィング家だな。こうやってアイナを抱っこもできるようになったし、成長を人として見続けられるのは嬉しいものだ。父も会おうと思えば会えるしな>

 「はは、ずっとアイナの面倒を見てくれていたから、父さんよりもお父さんしてたもんな。……俺達が爺さんになって、死ぬまで見守ってくれると心強い」

 <もちろんだ。そういえば、ジャックは大丈夫だろうか>

 

 急にジャックの名前が出てきてきょとんとする俺に、サージュは言う。


 <あそこにいる濃い青色のドラゴンはアクアドラゴンというのだが、どうもジャックに惚れているらしい。人間は先に亡くなってしまうが、人間とドラゴンの恋愛という物は成立するのかと思ってな>

 「どうかなあ……」


 人間同士の恋愛ですら初心者の俺にはハードルが高すぎる問題だと頬をかく。それにしてもジャックとドラゴンとはなかなか面白い組み合わせだ。


 「本人たちがいいならそれで問題ないんじゃないか?」

 <ならラースもルシエールとクーデリカを嫁にもらったらどうだ?>

 「……俺が良くないからダメだよ」

 「ボクも居るもんね」

 「お前もダメだぞ」

 「ぷう」


 セフィロを背中から降ろしてアッシュを両手で抱えながら俺の恋人に目を向ける……ってあれ?

 

 「そういえばマキナが居ないけどどこ行ったんだ?」

 <あ、ああ……>

 

 サージュの目が泳ぎ、気づかれたみたいな顔をしたので問い詰める。


 「サージュ、マキナになにかあったのか!? 大けがをしたとか!? あ、いやそれならベルナ先生が治療してくれるか……マキナがドラゴンと戦うのを怖がるわけないし……」

 <……ラースが帰ってくる前に起きてくれれば良かったのだが、仕方あるまい>

 「なにがあったんだ?」

 <マキナは今、眠っている。命に別状はないが、無理をしたみたいだとファスが言っていた>

 「そ、そうか……無理をするのはなんとなくマキナがやりそうだけど……」


 それでもこの場に出られないくらいというのは珍しい。そんなことを考えていると、ファスさんがこっちへ歩いて来た。


 「あ、ファスさん! マキナになにが?」

 「戻ったようじゃな。修行はまずまずといったところ……で、その修行中に新しい技を教えたのじゃが、どうもその技が原因のようじゃ」

 「技……?」

 「ティグレとベルナから聞いたが、学院に通っていたころ、マキナは魔法が苦手だったらしいのう」


 懐かしい話だなと目を丸くして驚く俺。確かに十歳のころ、マキナは魔法が全然ダメだった。


 「だけど、少しは使えるようになったよ。ライトニングも使えたし」

 「うむ。じゃが、どうもマキナは魔力を出すのが本当に苦手だったようでな、新しい技は魔力を相手に流し込んで内部から破壊する技なのじゃが、それと【カイザーナックル】を混ぜたせいで急に魔力が外に放出され、急激な魔力不足になったとベルナは言っておった」

 「ああ、そういえば俺が古代魔法を使った時に魔力をごっそり持っていかれて、死にかけた時ベルナ先生に怒られたな……それと同じ感じかな」

 「恐らくは。すまん、わしがついていながら……」


 そう言って頭を下げるファスさんに驚きつつ、俺は返す。


 「大丈夫だよ、ファスさんがマキナを苦しめるようなことはしないだろうし、わざとじゃないのは分かっている。命に別条がないなら特にね。目が覚めたら好きなものでも作って食べさせてやろうと思う」

 「ありがたい。しかし、マキナはわしが思うより強くなるかもしれん。ラースと並び立つには十分なくらいにな」

 <それはいいな。人の最強夫婦というのも面白い>

 「王様になれるかも?」


 ファスさんは困った顔で俺の肩を叩き笑うとサージュがそんなことを言うと、アイナが首を傾げていた。

 俺はそれはないよと言いつつ、マキナの様子を見に家へと向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「人の最強夫婦」…… 自分としては、そんな両新の元に生まれる 子供が大変だと思う(笑
[一言] 更新有り難う御座います。 ある意味人族最強!?
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