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没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで 【書籍発売中】  作者: 八神 凪
ラースとマキナの新しい力編

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第三百八十五話 集合


 「爺さん大丈夫か?」

 「お、おお……お前は?」

 「ボクはリースという。アフマンド王に謁見しに来たんだけど、ちょっと見逃せない状況みたいだから加勢させてもらうよ」

 「俺のことは気にするな! 嬢ちゃん、お前も巻き込まれるぞ……ごほ……」

 「おっと、喋らせたのはまずかったな。腹か……」


 リースは阿鼻叫喚となった城の広場の中、ディビットの下へ駆けつけると片膝をついて話しかけていた。直後、近くでリカムが忌々し気な声を上げていた。


 「一体どういうことだ!? 私は味方だぞ! ……正気じゃないのか……! 絶好のチャンスだと言うのに、邪魔をしてくれる……!!! <フリーズランス>!」

 「運は悪そうだね。ボクがここに来たことで君のツキは落ちたんだよ」

 「……な!? ま、魔法が霧散した!? うお……!?」


 リースが小瓶をフリーズランスに投げつけると、フリーズランスは霧のようになって消え、リカムは驚愕の表情を浮かべ、もやに捲かれた兵士に襲い掛かられ距離を離していった。リースは興味が無い表情ですぐに目をディビットに向けると別の小瓶を取り出して蓋を取る。


 「チッ、傷が深そうだな。とりあえず魔力があれば逃げれるかい?」

 「……ああ、何とかするぜ」

 「ならこいつを飲め、その間に腹の傷を塞ぐ」


 ディビットに緑の小瓶を渡し、赤い小瓶を腹に振りまくと、ディビットの目が見開く。


 「うおおお、く、くせえ!? なんだこの薬!? で、腹に激痛がはしってんぞオイ!? おおおおお……いてぇぇぇぇ!?」

 「ふん、さっきまで死ぬ覚悟をしていた顔だったくせに、これくらいでなんだ」

 「にしても臭すぎ……お?」

 「傷は治したし、魔力も少しは回復したろう? っと、本当に邪魔だなこいつら」


 ディビットは涙目で起き上がると、身体に魔力がみなぎるのを感じ首を傾げる。瀕死だったはずだが、こいつは何者だと目を細める。


 「何者だ? って顔をしているな。怪しい者じゃない!」

 「めちゃくちゃ怪しいが……今は礼を言うぜ!」

 「さて、ボクは他の人間を助けるから、後は任せ――」


 リースが立ち去ろうとしたところで、空から何かが降ってくる。それは――


 「あはははは! クリフォト、構わないから皆殺しをお願いね? ああ……体が人間の【不安】で満たされていく……【不安定】で操り、仲間が襲わせ不安を煽るのは楽でいいですね。回復したし、全員操ってあげましょうか」

 

 空に居たアイーアツブスが塞がった傷を舐めながら目を細めて笑う。リースは舌打ちをしながら口を開いた。


 「チッ、悪趣味な女だ。私は他の人間を治療しに行く。魔力と傷は回復したが、血と体力は失ったままだ、無理をするなよ」

 「そっちもな! あの女をぶちのめせば木も止まるだろ……おっと、タバコ切れちまったか、仕方ねえ<レビテーション>」

 

 回復したディビットは上空に舞い上がり、アイーアツブスを目指す――



 ◆ ◇ ◆

 

 「ええい! 何やっている!? うわ!?」

 「ダルヴァ様、味方が攻撃してきます!?」

 「見れば分かるわ馬鹿者! アイーアツブスめ、追いついて来たと思えば邪魔をしおって……! い、いや、これはチャンスか? 私は城内へと向かいゲイリー様を救出する! 一気に抜けるぞ!」

 「おおおおお!」

 

 「しまった!? 城に!」

  

 多くの兵が混乱する中、遠巻きで見ていたダルヴァが隙ありと見て馬を走らせ始め城門を抜ける。黒いもやの動きはそれほど速くないのでおっかなびっくり避けながら突き進み、馬に乗ったままエントランスへ突撃し、それを見ていたアフマンドが声を上げた。


 「ま、これは仕方ないですよ」

 「そうですね。折角ですし、前王を解放させてあげましょう」

 「レ、レッツェル殿……?」

 「一体何を……?」

 「きっと面白いことになるかと思いますよ。さて、アイーアツブスに見つかる前に僕たちも城へ戻りましょうか。ヘレナという子に何かあったら困りますし」

 「う、うむ」


 襲い来る兵士をいとも簡単に制しながら、涼しい顔で言うイルミとレッツェルに寒気を感じながらも、アフマンドとアボルは城内へと向かう。

 

 そして――



 ◆ ◇ ◆


 「黒いもやがあんなにたくさん!」

 「空に居るのはアイーアツブスか? 城門が破られている、遅かったのか?」


 マキナが空を見上げながら叫び、俺は地上の有様を見て口を開く。城門が粉々になり、兵士が何人も倒れていた。とりあえず行ってみなければと、オルノブさんに声をかける。


 「オルノブさんこのまま突き進んでくれ、アイーアツブスが黒もやを撒いているみたいだけど、状況を確認したい。外に兵が少ないから、中で乱戦しているかも。突入したら気を付けて」

 「わかりました!」

 「マキナとファスさんは二人で動いてくれ、ラディナとシュナイダーはオルノブさんを守ってくれるか?」

 「ぐるう!」

 「わん!」


 二頭の元気な返事を聞いて俺は頷き、セフィロを肩に乗せてアイーアツブスを見上げると、それに向かっていく人影があった。


 「ディビットさん!」

 「ひとり飛び出して心配じゃったが。無事だったようじゃな……む!」

 「様子がおかしいですねえ」


 ファスさんが、緊張した声を上げ、バスレー先生も細めて呟く。目の前には黒もやがまとわりついた兵士がついていない兵士を襲っていたのでそれも無理はない。

 

 「装備が似ているから分からないけど、混乱してない……?」

 「というかクリフォトがウロウロしてるんですけど!?」

 「突入しますよ!」

 「ひひーん!」


 バスレー先生の叫び声が響く中、馬車は城へと突入し、黒いもやがついた兵士にぶつかりながら中ほどまで行って止まる。


 「クリフォトが多いな、よし俺はディビットさんを追う後は――」


 任せた、と言おうとした瞬間、馬車に向かって魔法が飛んでくるのが見え、俺はファイアーボールで迎撃する。


 「防いだだと……?」

 「いきなり撃ってくるとはご挨拶……ってことも無いか、今は戦闘中だしな」

 「分かってやってきたということはお前達はアフマンドを助けに来たというところか? まあ、何でもいい。今、私は物凄くイラついている。ディビットを殺せなかった憂さ晴らしをさせてもらおうか! <ウインドストーム>!」

  

 いきなり魔法を放ってきたが放った言葉を反芻する。こいつ、ディビットさんと戦っていたのか? 


 「<オートプロテクション>! 殺せなかったってのはどういうことだ?」

 「な……!? くっ……今は逃げられたが、あと少しで私の名声が上がるところまで来ていたのだ。魔力が無くなったところで腹を刺し、致命傷を負わせたのだ! しかし、ヤツの力は分かった、次は必ず殺す……!」


 魔力が尽きて腹を刺された? そうか、大規模転移からさらにここに来るまで転移をしたから回復していなかったからか。しかし、今は空を飛んでいるところをみると、回復できたようだ。

 だけど、目の前のこの男はまたディビットさんを付け狙うと言っている。ならば――


 「……完全に回復したディビットさんならお前みたいなやつに負けないと思うけど……」

 「なに? 貴様、私を愚弄するか?」

 「そうじゃない。けど、お前はここで倒しておく必要があると思っただけだ」

 「倒す? お前が私をか? 奮迅のディビットを倒しかけたこの私を? 笑わせるな! <エクスプロージョン>!」

 「それはこっちのセリフだ! 疲弊していないディビットにお前が勝てるわけが無い! その前に、俺にすら勝つこともできない! <ドラゴニックブレイズ>!」

 「そ、その魔法は!? あ、おあああああああ!?」


 エクスプロージョンをかき消し、ドラゴンを模した炎が男を飲み込み燃え上がった。魔力は下げて撃ったので死んではいないだろう。

 その時、ラディナとシュナイダーが唸りを上げる。

 

 「グルルル……」

 「あおーん!」

 「シャァァァァ!」


 俺達を攻撃するためクリフォトがこちらへ集まって来ていた。


 「ラース、アイーアツブスのところへ!」

 「分かった! 任せるよ、マキナ!」


 俺はサッと舞い上がると、一直線にアイーアツブスの下へ向かう。程なくして到着すると、ディビットさんと対峙するアイーアツブスがにたりと笑い、口を開く。


 「くっく……追いついて来たか、ラース」

 「今度こそ倒すぞ、アイーアツブス」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……サラバ、名も無きライバル(噛ませ犬)よ……。
[一言] そりゃぁ、いきなり同士討ち始めたら不安にもなるわな
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