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第二百九十話 救出作戦


 「ファスさん!」

 「任せておけ。でかいの、力だけではワシを倒すことなどできんぞ」

 「グオ!?」


 即座に作戦会議を終えた俺達はすぐに巨大オークへ向きなおり、作戦を実行するため行動に移す。まずはファスさんが動きを封じるため、振り下ろされたオークの両腕の関節を下から殴りつける。

 両腕が曲がってはいけない方向どころか肘のあたりで骨が突き出てかなりグロい感じになった。

 すかさず俺は先ほどと同じくバーニッシュの顔の下を狙うべく前進。それと同時にセフィロを肩に乗せたマキナが背後に回る。


 「グウウウウオ!」

 「腕がダメなら足を使うか、バスレー先生頼む!」

 「はいはい、お任せあれ。……【致命傷】」


 腕の再生がまだ終わっていないからか、蹴り飛ばしてこようとするオーク。しかし俺の合図でバスレー先生の投げたダガーが突き刺さり、蹴ろうとした足とは逆の足が床に縫い付けられバランスを崩した。オークが忌々しいとばかりに俺を睨みつけてくる。

 

 「よし、次はセフィロ……な!?」

 「グルォォォォ!」

 「ただのオークではないようじゃな……!」


 俺を睨んできたと思った瞬間、何と口から火球を吐き出してきた! 俺とファスさんは左右に分かれ回避すると、立派な花瓶に直撃し粉々になる。

 

 「大丈夫ラース!」

 「ラース君、もう片方の足も縫い付けましたよ!」

 「ありがとう二人とも! また火球を撃つつもりか」

 「ワシに続けラース! 雷塵!」

 「グギャ……!?」


 サッと踏み込んだファスさんが跳躍し、オークの下顎に強烈なアッパーカットのように技が炸裂した。火球が発射されようとしたたため口の中で爆発し、煙を吹く。それでもファスさんに再生した腕を振りかざそうとしたので、俺は大声で叫ぶ。


 「セフィロ! オークの腕を枝で捕まえろ!」

 「!!」

 

 セフィロはマキナの肩から両枝を伸ばし、オークを拘束してくれる。だが、流石に体格差があるので、オークはぐぐぐ……と、セフィロを引っ張る。


 「!?」

 「セフィロ!」

 「大丈夫だマキナ! 一刀両断……!」

 

 セフィロが宙を舞うと同時に、バーニッシュの顔の下の胴体を縦に切り裂き、剣を横にスライドさせて隙間を作る。そして、俺は横に移動しながらマキナへ言う。


 「やれ、マキナ!」

 「オッケー! ここね、【カイザーナックル】!」

 「グ、ガ……!?」


 マキナが踏み込み、巨大オークの背中を全力でぶん殴った。直後、胴体の傷口からバーニッシュがずるりと出てくる。


 「ここまでは作戦通り、バスレー先生、ファスさんバーニッシュを頼む!」

 「うむ、トドメは任せる」

 「うぐぐぐ……! 太りすぎなんですよこの坊ちゃんはぁぁぁ!」


 文句を言いつつもきちんと仕事をしてくれるのはバスレー先生のいいところだ。完全に胴体から引きはがされたのを確認したところで、


 「<ストレングス>! おりゃああ!」

 「グヘ……!?」

 

 剣の背で窓際へと吹き飛ばす。

 真っ二つにしないのは二つに分かれるとどういう再生をするか判らないからで、下手すると二体になったりしないか心配をしたから。それともう一つ――


 「肉片も残らなかったら再生もできないだろ? <ドラゴニックブレイズ>!」


 本日二度目のドラゴニックブレイズ。真っ二つにしなかったのは単純明快、一か所に的があった方が効率がいいからだ。


 「……よし、これで終わりだ」

 「やったぁ!」

 「♪」


 マキナが俺の下へ来て歓喜の声をあげ、セフィロが不思議な踊りを披露してくれる。屋敷の壁が吹き飛んだけど、巨大オークは魔法で消え去ったのでこれは勘弁してもらおう。

 さて、バーニッシュは無事かな? ヒーリングが必要かもと思い、マキナと共に近づいていくと――


 「うぉぇぇぇぇ……臭いんですけど……」

 「むう、これはたまらんな……」


 バスレー先生が嘔吐し、ファスさんも顔をしかめて鼻を押さえていた。近づくと確かに……臭い……。

 するとそこへルクスが来て、眉を顰めながら魔法を使う。


 「オークの匂か? 凄いな……<ピュリファイ>」

 「お、生活魔法か」

 「ああ」


 俺が習得していない生活魔法の一つ<ピュリファイ>でバーニッシュの体が綺麗になり、とりあえず息をしていることを確認してから俺達はソニアに目を向ける。


 「バーニッシュは生きている。だが、これでお前たちは終わりだ。大人しく捕まってもらうぞ」

 「……ええ……」


 ソニアはがっくりと項垂れ、肩を落とした。ザンビアも複雑そうな表情をしながら俺達とソニアを見ていると、バスレー先生が口を開く。


 「さて、はったりでも何でもなくアルバトロス達はもうここには居ません。とりあえず警護団に……あ、いやそれだと逃げられるか。ザンビアさん、どこか鍵のかかる部屋はありませんか? ヒンメル審問官が帰ってくるまで見張っておきたいのですが?」

 「う、うむ……では、地下の物置を使ってくれ。……ソニア」

 「……」

 

 ソニアは何も言わず視線を反らし、俺達はクランの男たちとソニア、それとバーニッシュを連れて地下室へと向かった。



 ◆ ◇ ◆


 

 「ま、ラース君ならあれくらいは余裕か。それにしても賢者の魂にあんな魔法を付与しているとはね。ウチの教主サマは恐ろしい男だ、まったく」


 屋敷を見上げ、レッツェルが口元に笑みを浮かべてひとり呟く。そして踵を返し、町へと向かい丘を下り始めた。


 「これで三つがラース君の手元に入ることになるかな? それとも大臣か審問官が回収するか? まあ、あの大きさならどっちでもいいか。教主サマにはもっといいものを創ってもらう必要があるかな。いや、その前に荒れるかもしれないね」


 そう言ってくすりと笑い、大通りを真っすぐ出口に向かって歩いていくレッツェルであった。

これで一先ず一件落着? いいえ、最後の締めがございます。


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『臭くてデブい……最悪だ……』

夏場のひとみたいな言い方だ……

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