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第二百七十五話 セフィロ……君?


 「ん……」


 ふいに何かの気配を感じた俺はぼんやりした頭で上半身を起こす。トイレに行こうかとまどろんだ眼をしっかり開けると、そこはいつか見た夢の中だった。ここに来たということは――


 「やっぱり居たな」


 俺の隣に緑の髪をした男の子がすーすーと寝息を立てて寝ていた。今回はこいつも寝ているのかと思いつつ、セフィロの体を揺する。


 「セフィロ、セフィロ起きろ」

 「ん……んー……ふわあ」


 ふわふわとした表情で身を起こし、ぺたりと座り込んだ状態で俺の顔を見てからふにゃっと顔をほころばせて頭をぺこりと下げた。


 「おはようございます、ラースおにいちゃん。……あれ? 僕また人間みたいになってる! わーい! お話しできるよ!」

 「わわ!?」

 

 セフィロは前と同じく、あぐらをかいている俺の膝に乗ってきて背中を預けてきた。まったく重くはないんだけど距離が近い。


 「お前、抱っこされるのが好きなのか? まあでも、まだ子供だしそんなもんか。俺が同じくらいのころには山を駆け巡っていたけどなあ」

 

 俺がそう言って頭を撫でてやると、くすぐったそうに眼を細めた後上目遣いをしながら口を開く。


 「僕、男の子とか女の子とか別に決まってないよ? 精霊だからね!」

 「え!? そ、そうなのか?」

 「うん! 本体は木だし、種で増えるから性別、だっけ? 必要ないんだよきっと」


 セフィロに言われてみれば確かにそうだなと納得する。俺の膝の上でゆらゆらと嬉しそうに体を揺らしていると、思いついたように口を開く。


 「あ、でも僕、マキナおねえちゃんも好きだけど、やっぱり魔力はラースおにいちゃんの方が好きだから女の子の方がいいかなあ? ねえ、おにいちゃんは僕が女の子だと嬉しい?」

 「いや、友達なら男でも女でも関係ないしどっちでもいいぞ?」

 「むー……? 友達……僕もマキナおねえちゃんみたいにおにいちゃんとちゅーとかしたいなあ!」

 「!?」


 セフィロはいまいち納得がいかなかったのか、とんでもないことを言い出す。多分恋人という概念が無いから、単純にマキナと同じ扱いをしてほしいのだと思う。


 「ちゅーはしない。それより、なんでまたここに来たんだろうな? セフィロ、分かるか?」

 「んー、僕よくわからない……あ、そうだ、お兄ちゃんありがとうございます」

 「どうした急に?」


 話が逸れたことにホッとしていると、セフィロが俺の膝から一旦降りて深々と頭を下げた。なんのことかと思っていると、セフィロが少し寂しそうな顔をして微笑む。


 「んとね、”賢者の魂”って、おばあちゃんが言ってたとおり僕の仲間の命を集められて作られた宝玉なんだけど、あの中に僕を生んでくれた人間でいうお母さんみたいなトレントの命も混ざってたんだよ。だからすごく悲しかった」

 「そうだったのか……」


 あれを見た瞬間、セフィロが物凄く悲しんでいるのは分かったけど、母親みたいな存在が亡くなっているならそれもそうなるだろう。


 「うん……でも、おにいちゃんが持っていてくれるから僕寂しくないよ! ラースおにいちゃんもマキナおねえちゃんもいるし、ファスおばあちゃんもバスレーおばちゃんも一緒だから!」

 「ああ、バスレー先生は一応お姉さんにしておいてやってくれ」

 「え? バスレーおねえさんでいいの?」


 子供は時に残酷だなと感じつつ無言で頷き、セフィロの頭を撫でてやりながら言ってやる。


 「俺達が生きている限り、ずっと一緒だ。俺がテイマーの資格を取ったらかごから出して行動できるようにしてやるからな」

 「わあ! やっぱり優しいな! うん、約束だよ!」

 「ちゅーはやめろって!?」

 「ちえー」


 性別の話はまずかったか……しかしとりあえずでも元気になったのは良かった。俺はセフィロを引きはがした後、折角なのでもうひとつの疑問を聞いてみることにした。


 「なあ、セフィロってスキルを使えるようにならなかったか? あの宝玉を鑑定した時にそんなことが出ていたんだが心当たりはあるか?」

 「……おにいちゃんを見てるとこのあたりがドキドキするなあ……なんだろうこれ? え? スキル?」

 「ああ。俺の【超器用貧乏】みたいなやつだ」

 「あ、うん、なんか頭の中に出てきたやつかな? とう!」

 「うわ!?」

 「えへへー、抱っこ―♪ えっとね、僕のスキルっていうやつは多分【ソーラーストライカー】っていうやつだと思うよ?」


 ……セフィロの見た目に反して随分カッコいい名前のスキルだな。聞いた感じだとアタッカー系の能力っぽいけどどうなんだろう。


 「どういう効果だ?」

 「僕って木の時はこうごーせーをするんだけど、それがすごくなるみたいだよ。太陽の光を浴びている間は枝の攻撃力とかが強くなる感じかなあ? 他にもいろいろできそうだけど、かごに入っていたり、おうちの中だといつも通りだけど」

 「なるほど、直射日光を浴びるとパワーアップするって思ったらいいのかな? 外なら頼りになりそうだ」

 「任せてよお!」


 何かだんだん言葉遣いとかが女の子っぽくなってきたぞ……? もしかして思った方向に性別が引っ張られて変わるとかじゃないだろうな……? いや、精霊だし性別は無いから大丈夫だろう。


 「あ、ああ、早くテイマー資格を取ってやるからな」

 「うん! あーあ、僕もこの姿のまま一緒に居たいよー」

 「ま、夢の中だからこそだろう。賢者の魂は大切にするよ」


 俺がそういうと満面の笑みで胸にうずくまってくるセフィロ。ちょっと泣いているようだったが、その瞬間視界がぐにゃりと曲がる。


 「目が覚めるみたいだな」

 「そうみたいだね! それじゃ、またよろしくお願いします!」

 「もちろんだ。落ち着いたら【ソーラーストライカー】も見せてもらいたいな」

 「どこか静かな場所でできそうなところがあったら僕が合図するね。あ、目が覚めちゃう――」

 「またな、セフィロ」


 俺の膝にいるセフィロは少しだけ寂しそうな顔でにこっと笑ったのを見届けた後、意識が遠くなる。


 

 「お……?」


 俺はうっすら目を開けると、そこは間違いなく宿の天井で、上半身を起こして伸びをする。そして枕もとで寝たはずのセフィロに恐る恐る目を向けると――


 「Zzz……」


 いつもの木の姿をしたセフィロが枝を広げてだらしなく寝転がっていた。


 「ふう……」


 良かった、人型とかになっていなくて……俺は無駄な安心感を覚え、身支度を整えるのだった。

小さい子は距離感が近い……!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『ひゃっはー! クリスマスイヴだ!』

お、ノリノリだなあ。恋人はどうした? 見つけたのか?

『……』

……悪かったよ……この世の終わりみたいな顔するなって……

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