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没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで 【書籍発売中】  作者: 八神 凪
青年期 ~王都躍動編~

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第二百五十二話 やっと一日が終わります


 「ラース、起きて? お風呂空いたわよ」

 「ん……マキナ?」

 「うん、私よ?」

 

 俺が身を起こすと、そこは灰色の場所ではなく自宅のリビングだった。お風呂上がりのマキナが俺に微笑みかけ首を傾げるのを見て、俺はぼーっとした頭を振り伸びをする。俺の頭があった横にはミニトレントが座っていた。動かないところを見るとまだ眠っているのかもしれない


 「結構話していたような気がするけど、マキナがお風呂に出てくるくらいの時間だったのか」

 「え? 寝ていたじゃないですか。ははは、ラース君は文字通り寝ぼけているみたいですね!」

 「腹立つな……まあ、バスレー先生には後で何かするとして、ちょっとこいつに関して面白いことが分かったんだ」

 「わたし何をされるんですかね!?」


 焦るバスレー先生はさておき、俺はつい今しがた経験した不思議なことを話す。ミニトレントが夢のような場所で語りかけてきたこと、トレントに似たクリフォトという魔物、そしてトレントも狂ってしまい、クリフォトのようになってしまったのだということを。


 「この子が話しかけてきたの……?」

 「ああ、夢の中でいいのかな? よくわからないけど、自分をミニトレントだって言う男の子がそういっていた。カバンがどうの言っていたけど、それはこいつが起きてからにしよう」

 「でもそれが本当なら大発見じゃない……? 授業でも習ったことないわよ『クリフォト』なんて魔物」

 「俺もそう思う。だからバスレー先生、このことを城に言って広めてもらえないか? 各地に伝えれば何か役に立つかもしれない……って、先生?」


 俺がバスレー先生の方を向いて話しかけると、何やら顎に手を当ててぶつぶつ呟いていた。


 「新しい魔物……精霊? だとしたら良いものを退治していたことになる。そして手をかけず、手伝ってくれる可能性を考えたら森での依頼が格段に楽に……。でもそんな話は今まで出たことが……いや、だからこそ未知の大発見……お金がウハウハ……」

 「バスレー先生!」

 「ひゃあ!?」


 だんだんおかしなことを言いだしたので俺は大声でこっちの世界へ引き戻した。するとバスレー先生は咳払いをして俺達へ言う。


 「話は承知しました。幸いわたしは農林水産の大臣なので、トレント騒動の解決の糸口のひとつとして策を練るとします。あとは陛下と防衛大臣に通達し、各ギルドへ報告ですかねえ」

 「うん。そっちは俺に伝手が無いから任せるよ」

 「はい。しかし魔物ではないとはいえ見た目は完全に魔物ですからテイマーの資格は取っておいてください。畜産区域にある大きな木の先にテイマーの施設がありますから明日にでも行ってみてください。ミニトレちゃんには申し訳ないですが、それまで移動は籠に入れてもらえると」


 バスレー先生はキリっとした表情でスラスラと俺にやって欲しいことを伝えてくる。いつもこうならいいんだけど、目はお金のことを考えているので結局プラマイゼロだ。

 するとマキナがミニトレントを持ち上げてから口を開く。


 「全然動かないけど、寝てるのかな? ちょこちょこ動いて可愛いわよねこの子。名前はなんていうの?」

 「それが名前は無いんだってさ。だから俺に名前をつけてくれって言ってたな。当たり障りのない話になった辺りで目が覚めた感じだけど」

 「名前が無いのかあ。折角うちに住むんだし、名前を付けてあげたいわよね」

 

 マキナがそう言ってミニトレントを抱いて俺へ笑いかけてくる。


 「そうだな、ミニトレントやミニトレじゃかわいそ……ふあ……」

 「あ、やっぱり眠いんだ? もう寝る?」

 

 ご飯は食べているからあとは休むだけなのでマキナはお風呂に入らず寝たらという。だけど結構動いたし、ヘレナのライブも熱気が凄かったからお風呂に入らないと気持ちが悪いかな。


 「いや、俺も風呂に入ってから寝るよ。マキナはまた明日から修行だから、先に寝てていいよ」

 「確かに今日は汗かいたから気持ち悪いわよね、それじゃおやすみなさい!」

 「おやすみ。ほら、バスレー先生も仕事だろ?」

 「おお、そうですね。それではわたしはこれで……」


 マキナはミニトレントを連れて部屋に戻り、バスレー先生も部屋へと向かう。俺は嘆息してその背中を見ていると、不意に立ち止まり、ぐるんと首を回して振り返る。

 

 「?」

 「明日はハンバーグですからね……!」

 「分かったよ! そんなに食べたいのか……」

 

 小さくやった、と呟きながら部屋に戻り、俺も風呂へと向かう。

 

 「ふう……」


 湯船で顔を洗い、へりに頭を預けて改めて今日のことを思い返す。


 「チェルは無事で、ヘレナのライブは凄く良かった。今日は慌ただしかったな……。ヘレナ達アイドルはかなり本格的にやっていたし、あれなら衣装をデザインするのも悪くないかもしれない。向こうの世界そのままはちょっと罪悪感あるからアレンジはしているけど、二作品くらいはすぐに出せる。あとはミニトレントか……あいつの情報は貴重だったな」


 できればいざという時のためずっと意思疎通しておきたい。次に話すことができるのはいつになるのか分からないしな。カバンの中も見せてやらないと。それと――」


 ……テイマーの資格を取りに行く必要があることを思い出す。それと同時に、今の状況を顧みてため息を吐いてしまう。


 「冒険者になったはずなのに、なんでテイマーの資格なんだ……。依頼はやってるけど……」


 超器用貧乏の名を上げる為に王都に来たはずなのに、それ以外のことをやっている気がする。まあ、まだ一週間も経っていないから焦ることはないんだけど。……違うか、一週間も経っていないのに騒動が起こり過ぎているのが問題なのか……

 少し自重すべきかと俺は湯船に顔を半分入れてぶくぶくと空気を吐くのであった。

はてさて、次回はテイマー? また変なのが……?


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『まあ順当だけど、そろそろレッツェル達も見たいわね』

もう少しかな? 王都での騒動が終わったら次章に行きます

『章かえないと長いしね……』

うむ……

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