ヴァニキ参戦
ばっさばっさ。
レイドボスが動き出す。
今まで使っていなかった翼を広げ、大きく羽ばたかせた。
その風圧だけで、近くにいた人たちが吹き飛ばされていく。
ばっさばっさ。
かなり遠くまで効果があるようで、各地で将棋倒しが発生する。
風圧は目で見えないので、回避するのが難しそう。
『うぶるるるるるぅ!』
回転しながら地面に突き刺さる人。
『こっちくん……あぁんっ!』
巻き込まれて、抱き着くように転がる人。
前線にいる人たちも、なかなか近づけない。
『あぶなぁああああぉ!』
「?」
近くにいた男性が叫ぶ。
ボールのように弾みながら、ゴロゴロ転がっていく。
この近くにも突風の影響が……。
「わっ!」
全身に衝撃。
次の瞬間には、空を飛んでいた。
めまぐるしく変わる世界。
上下もわからぬまま、地面に落ちていく。
どさっ!
思わず目をつぶる。
勢いよく飛ばされてしまったので、落下ダメージが……。
「大丈夫ですか? お嬢さん」
「……?」
すぐ近くから、男性の声。
ゆっくりと目を開けると、マスクを付けた男性の顔があった。
自分の体勢を確認すると、抱っこされている形になっていた。
どうやら、この男性が受け止めてくれたらしい。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言って、そっと地面に立たせてくれる。
そして、安心させるかのように微笑む。
すごく紳士的な人だ。
「……」
その男性を見上げる。
まず目に付くのは、仮面舞踏会で使われそうな目元だけのマスク。
髪はオールバックで整えられている。
服装はブリーフ1枚。
日焼けした肌に、割れた腹筋。
腰には、見るからに強そうな武器が差してある。
身長も高いので、とてもかっこいい。
『あ、ヴァニキだ』
『ヴァニキが幼女におさわりしてる……』
『え?』
『NPCにしか興味なかったんじゃ』
『おい、ウソだろ……』
周りの人たちが、ざわざわする。
有名なプレイヤーさんなのかな?
『ついに、この時が来てしまったか……』
『いつかやると思っていました』
『こうなるのは必然であったか』
『NPCのおぱんつだけでは物足りなくなってしまったんだな』
『……ということは、あの子もおぱんつチェックされちゃうのか?』
『狙った獲物は逃がさない主義だぞ』
『逃げてー! 早く逃げてー!』
『助けてGMさーん!』
『ヴァニキがんばれ! 超がんばれ!』
『そんなとこにいたら危なすぎる! 俺のところにくるんだ!』
『何言ってるんだ! 俺が保護する! お前らに任せておけるか!』
『ロリかわ』
『GMさん、ここが現場です』
『落ち着けお前ら。飛ばされてきたあの子をヴァニキが受け止めただけだぞ』
『パンツ一丁のおっさんが幼女に触れた時点で事案じゃね?』
『がっちり抱きしめてたしな』
『うん、アウトだわ』
『もしもし、GMさんですかー?』
たくさんの人が立ち止まって、何か話していた。
やっぱり有名な人っぽい。
『つーか、あの子ちっちゃいな』
『たまらん』
『俺の好みにど真ん中ストレートですわ』
『どう見ても小学生なんですが』
『ヴァニキがでけーんじゃね?』
『180cm超えてんだっけ』
『190はありそうな見た目してる』
『無駄にいい体してるしな』
『あの肉体でお姫様抱っこですよ』
『言い訳できないほどの事案である』
『話したことあるけど普通にいい人だったぞ?』
『いい人でも変態じゃないとは限らない』
『普段から幼女のパンツ見たいとか言ってますよ』
『紳士的な変態だからよりヤバく感じる』
『さすがに手は出さんやろ』
『近寄るだけで逮捕です』
『ブリーフ1枚のおっさんにやましい気持ちはないと言われても、説得力は皆無だな』
『靴下はちゃんと履いてるし!』
『あと蝶ネクタイも』
『うん、まごうことなき変態ですわ』
『あ、GMさん、今レイド中なんですけど……』
「それでは、失礼します」
「あ、はい。ありがとうございました」
「素敵な冒険を」
そう言って一礼すると、レイドボスのほうへ走っていった。
あっという間に人々の中に紛れて、姿が見えなくなる。
「……あ」
ぼーっとしていたので、支援するのを忘れていた。
お礼くらいしたかったのに。
取り巻きのワイバーン「んー……ネクタイしてるからセーフ!」




