ファーストダンジョン3
今回は部屋じゃなかった。
通路がずっと続いている。
「……?」
かすかな物音が聞こえる。
何かいるのかな?
薄暗くて、よく見えない……。
バサバサバサ!
「わっ!」
顔のすぐ横を、何かが通り抜けていく。
「な、何? 鳥!?」
ふらふらと、空中で動くナゾの物体。
2つの赤い光が、動きに合わせて揺らめいている。
「コウモリ?」
動き方や羽音が、鳥っぽくない。
さらに、通路の奥には、同じ赤い光が無数に……。
「!」
また接近してきた。
「えいっ!」
ロッドを振り回しても、空中にいる相手にはなかなか当たらない。
「こいつら射程短いから、近づいてきたところを叩けば落とせるぞ」
「そうは言っても……」
囲まれていて、どこから来るかわからない。
左右に揺れる動きが、行動を読みづらくさせる。
「『攻撃』と『様子を見る』の2パターンしかないから、落ち着いて対処すれば余裕」
「落ち着いて……」
動きに惑わされないよう、近づいてくる敵だけに集中する。
「そこっ!」
キィ!
振り上げたロッドが命中する。
HPは高くはないようで、当たってしまえば1発だった。
「っと」
背後から迫ってきた1匹を避け……。
キィ!
動きが止まったところを叩き落とす。
なるほど。
数は多いけど、攻撃してくるのは1匹ずつ。
行動パターン自体は単調なので、慣れちゃえばどうということはなかった。
キィ!
最後の1匹も倒して対処完了。
いきなり来るから驚いたけど、それ以外はスライムとそう変わらない。
次からは、もっと楽に……。
ガシャーン!
「ひぅっ!」
突然の物音に、身を固くする。
「今度は何!?」
崩れ落ちた壁の中から、白い何かが飛び出してきた。
前後にそれぞれ1匹ずつ。
大きさは中型犬くらいで……犬のスケルトン版?
もしかしたら、オオカミとかキツネだったりするかもしれない。
骨格を見ただけじゃわからない。
「わわっ!」
いきなり飛びかかってくる。
なんとかギリギリで避けると、もう1匹がすぐ近くまで迫っていた。
「こいつらは2匹同時に攻撃してくる」
「そうみたい!」
とっさにステップで回避。
もう1匹に注意しつつ、距離を取る。
スケルトンよりも動きが早いし、コウモリと違って同時に襲ってくる。
序盤の難所といった感じ!
グルルルル……。
まずは壁を背にして、死角をなくす。
かみつきか前足が攻撃手段みたいなので、射程はこっちのほうが長いはず。
冷静に1匹ずつ先制していけば、これもきっと対処可能……。
ワォーーン!
ワォーーン!
「やっぱり、同時に来るよね!」
別方向からきているから、回避は難しい。
どちらか攻撃するにしても、もう片方からは無防備な状況でやられてしまうことになる。
「!」
崩れた壁の一部が、段差になっている。
もう考えている時間はない。
その段差を足場にして、思いっきりジャンプ!
キャン!
キャン!
目標を見失った2匹が、壁に激突する。
その反動で、あお向けにひっくり返った。
今がチャンス!
動けなくなっているところを、上からポコポコ殴る。
きゃうーん……。
かわいい声を残して、崩れ消えていく。
犬で合ってたのかな?
もう1匹もしっかり止めを刺す。
「問題なかったようだな」
「……びっくりしたよ」
ダンジョンに仕掛けがあるのは定番だけど、急に来るのは心臓に悪い。
もう少し前兆とか欲しかった。
「ちなみに、こいつら火力低いから、起き上がり無敵使った反撃だけでも倒せるぞ」
「もう倒しちゃったよ!」
初見でステータスもわからないから、とりあえず避けたくなる。
見た目がリアルなせいもあって、かまれたら怖いし。
「当たり配置だったな」
「?」
りょーちゃんに手招きされて、穴の開いた壁をのぞき込む。
「宝箱?」
「ランダムで出現するタイプ。運がよければ、そこそこのアイテムが入ってる」
「そうなんだ」
ゲームとか映画でよく見るような、木製の宝箱。
大きさといい重厚感といい、実物を見るとなかなか感動するものがある。
いや、これもゲームなんだけど。
「開けていいぞ」
「いいの?」
「ああ」
ふたに手を伸ばす。
「ワナとかないよね?」
「初心者Dにはない」
「それ以外にはあるんだ」
宝箱のワナといったら、やっぱりミミック(※1)かな?
攻撃力とか高そうなイメージ。
「丸太に吹っ飛ばされたり、おにぎりが腐ったりする」
「ミミックじゃなかった!」
そういったワナも、地味にいやらしそう。
カパッ。
宝箱を開けて、中のアイテムを調べる。
「……お金?」
銅と銀色のコインが数枚。
「これは当たりなの?」
「113ゴールド……ポーションよりはマシだな。1個5ゴールドだし」
「それほどってわけじゃないんだね」
「エンチャが出れば、10~20k(※2)くらいで売れる。出れば」
「確率は?」
「お察し」
つまり、出ないってこと。
序盤は特にお金が欲しいから、これでもありがたい。
ドロップも公平分配設定になっているので、56ゴールドゲット!
ホクホクしながら、次の部屋へ進む。
「……弓持ってるのがいる」
通路先の部屋に入ると、スケルトンとレッドスケルトン。
そして、茶色の服を着たアーチャースケルトンが追加されていた。
「前衛と2タゲになるから、うまく連携されると死ぬ」
「とりあえず死んじゃうんだね……」
「なんせ、裸より被ダメ多いからな」
「楽しそうだね」
りょーちゃんだから成り立ってるけど、ボクがやったらずっと復活待ちになっちゃう。
少なくとも、敵と密着する近接職でやる気にはなれない。
「遠距離の簡単な対処法ならあるぞ」
敵陣に突っ込んで行って、赤スケルトンと弓スケルトンのタゲを引き受ける。
赤スケルトンの攻撃を避けながら、弓の攻撃を……。
パーン!
飛んできた矢を切り払う。
「な?」
「いやいやいや」
簡単そうに言うけど、普通に矢が速いよ?
「切り払いを合わせるだけだから楽だぞ」
「それもスキル?」
「ああ、冒険者スキルだからどの武器でも発動できる」
「スキルだったら、発動までに時間がかかるんじゃ?」
「先読みしておけばいい」
簡単じゃない。
どう考えても、簡単じゃない。
「射線を見てずらしてもいいし、ステップ無敵で避けてもいいし」
いろいろな対処法を教えてくれるけど、参考になるかなぁ……。
弓だけなら、ずっと見てればなんとかなるかもしれない。
でも、他との同時対処は難しそう。
「そっちにもタゲいったぞ」
「わかった!」
とにかく、やってみるしかない。
こたつに座っていると、姪っ子Aが股の間に入り込んできて、姪っ子Bが背中をよじ登って首を締め、甥っ子Cが股の間に乱入しようとしてケンカが始まり、一番下の子Dが太ももの上に立って骨をぐりぐりする。
大きいお友達向けアニメくらいゆっくり見させてほしい。
※1、ミミック:宝箱に擬態しているモンスター。
間違って開けると、長い舌でべろんべろんにされる。
驚かせることに生きがいを感じているので、ミミックだとバレてスルーされると悲しむ。
ツボとか、段ボールとか、ムフフな本に擬態しているタイプもいる。
※2、お金の表記:このゲームのお金はゴールド。
100ゴールド=100Gなどと表記される。
1000000000Gといった単位になると非常に見づらいため『k』『M』『G』といったパソコンで使うような表示が代用される。
1k=千、1M=百万、1G=10億。
10億ゴールドだと1GGとわかりづらい表記になり、やってしまった感。




