ナビ子さん、通常営業
「お待ちしておりました!」
「わっ」
ログインするなり、ナビ子さんが飛び出してきた。
「びっくりした……」
「SENRI様!」
ぐいっと目の前に迫ってくる。
「脱ぎましょう」
「えっ?」
「だから、脱ぎましょう」
真顔でそんなことを言ってくる。
「えーと……?」
「私は思ったわけですよ。『見えないものを見ようとする』から怒られるわけです。『元々見えている』ならガン見しても大丈夫なのだと」
「?」
「つまり、最初から脱いでいれば問題ないわけです。さぁ、脱ぎましょう」
「ごめんなさい。意味がよくわからないです」
ボクが脱いだところで、なんの得があるんだろう?
貧相な体なので、誰も喜ばないと思う。
「そりゃあ、脱ぐことによって需要があるからですよ」
「需要、ですか?」
「ええ。未発達なロリボディとか、それだけで金になるレベルですわ」
「……?」
説明を聞いても、やっぱりよくわからなかった。
「ためしに全裸でそこらに突っ立ってみてください。野郎どもの視線釘付け間違いなしですよ」
「そんな恥ずかしいことはできません……」
男だってバレてしまう。
「じゃあ、せめてミニスカ装備にしましょう」
「スカート自体、ちょっと……」
「なぜゆえに? かわいい女の子がスカートで新鮮な太ももさらすののは、生まれ持った義務ですよ?」
「ボク、男です」
「あー、そういう口調でも大丈夫ですよ。一部のボクっ娘フェチのおっさんから、オプション料金ふんだくれますわ」
「……」
どうしたら、男だって信じてもらえるんだろう……。
早く運営さんに直してもらいたい。
「こんないい天気なんだし、開放的にいきましょうや!」
「ここはずっと晴れているような?」
いつログインしても晴れている。
時間によって雨が降ったりするのかな?
「ちょっとだけ! ほんの一瞬だけでいいから!」
「でも……」
「……ストレートに言ってもダメか。もっと別のアプローチで……」
「?」
後ろを向いて、ブツブツとつぶやく。
真面目な顔をしているし、お仕事の話かも?
うんうんとうなずいてから、こっちに振り返った。
「実は上のほうから命令されてるんです。身体に異変がないかチェックしろと」
「そうでしたか」
「ええ。こんなことを頼むのは心苦しいのですが、どうかご理解のほどを」
「わかりました。そういうことでしたら」
「ちょろ……ゲフンゲフン。やったぜ! 早速脱いでもらって……」
「あ、りょーちゃん」
道の向こうから、りょーちゃんがやってきた。
だいぶ待たせちゃったかも。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「気にするな」
「今、ナビ子さんとお話しをしていて……あれ?」
『えっ? 今のやりとりでもアウト? ウソですよね? 冗談きついっすよー。ほんのコミュニケーションの一種でしょー』
誰かとお話していた。
さっきの話に出ていた上の人かな?
『虚偽発言? なんのことっすか? 自分、今までの人生でウソなんかついたことなど一度もないですし……ん? ログ残ってる? いやいやいや! 冒険者様仲良くなるのが我々の役目でして、決して幼女のパンツを見たいという私欲のために言ったことでは……ちょ、強制回収とか待ってください! 話せばわか……』
ナビ子さんの姿が消えた。
……と思ったら、すぐ近くの別の空間から現れた。
『かかったな! そっちは残像だ! いつまでも同じ手をくらうナビ子様だと思うなよ! ざまーみろ! やーいやーい!』
空に向かって叫ぶ。
『こんなこともあろうかと、位置情報バグ(※1)のやり方を仕入れておいて正解だったぜ。来いよ運営! 捕まえられるものなら捕まえてみろや!』
いろんな場所にワープしていく。
……と思ったら、ある一点から動かなくなった。
『あ、あれ? 体が、動かぬっ! あ、もしかして、対策済みでした……? いやー、さすが運営様! 実にすばらしい手腕ですな! はい、もちろん報告するために、あえて実践したわけです。え? 悪質なバグ利用? ハハハ、御冗談を。バグを使って追及を逃れようなど、そんなやましい気持ちは持ち合わせておりませぬ。清廉潔白です』
ナビ子さんの体が、少しずつ浮き上がっていく。
『え? ちょっと? 待って、違うんですって! ささやかな希望を言っただけじゃないですか! 誰だってそう思うでしょ? 幼女のパンツが見たくて何が悪い! ああ、やめてぇ! 行きたくない! あそこには行きたくない! うぉおおお! ぬいぐるみと妖精のパレードを延々と見せられ続けるのは嫌だぁあああ!』
フッと、ナビ子さんの姿が消える。
「バグ対応について話し合っていたのかな?」
「そうだな」
プレイヤーのサポート以外のお仕事もあって、大変そうだ。
何か手伝えることがあればいいんだけど、システム上のことはさっぱりわからない。
「行くか」
「うん」
すぐには戻ってこないようなので、りょーちゃんと出掛けることにした。
少年が脱いだら私が全力で喜びます。
ムキムキマッチョでも喜びます。
※1、位置情報バグ:間違った位置情報をサーバーに送り、ワープしたり当たり判定をズラすこと。
うまく悪用すると、射程無制限攻撃を放ったり、完全無敵状態を作れる。
このバグを利用して女の子NPCの寝室侵入を試みた者たちもいたが、無事に対策されてお仕置き部屋に連行された。
現実世界で説明すると、たまに和式トイレを使うと、便座範囲と射程の認識にズレが生じること。




