また学校生活
「おはよう、りょーちゃん」
「おはよう」
いつもの場所で待ち合わせ。
「……?」
りょーちゃんの顔色。
ちょっと疲れているように見える。
「もしかして、夜更かしした?」
「少し」
「学校ある日は気をつけないと」
「善処する」
フラフラしているわけじゃないし、そこまで心配しなくてもいいかな?
ボクもお母さんがいなかったら、もっと遅くまでやっていたと思う。
「あれからずっとレア短剣狙ってたの?」
「ああ」
「出た?」
「いや、レアドロップすら出なかった」
「やっぱり、確率低いんだね」
「ソロだと時間かかりすぎて効率悪い」
「そもそも、ソロで行くような場所なの?」
昨日1回やってみただけでも、かなり難しいクエストだとわかった。
弓や魔法の対処ができないと、ソロだとどうしようもなさそう。
「ソロ10分の動画が上がってたな」
「行けちゃうんだ!」
ペアで行ってあれだけ苦労したし、どんな装備やスキル構成か気になる。
あとで見てみよう。
「ずっとソロで周回してたの?」
「途中から金策狩場行ってた」
「そうなんだ」
「ああ」
「……ちなみに、何時まで?」
「4時」
「少しじゃないよ!」
たっぷり夜更かししてるよ!
「ホントに大丈夫?」
「問題ない」
「つらくなったら、ちゃんと言ってね?」
「ああ」
りょーちゃんのことを心配しつつ、学校へと向かった。
「うーっす!」
教室に入るなり、田中くんたちが声をかけてくる。
「なぁなぁ、対人で強いのってどの職?」
「攻城戦って人数どんだけ必要?」
「パワレベ(※1)できる? やってくれるなら駄菓子くらいおごるけど」
みんなもふオンの話をしてくる。
そろそろ届くと言っていたので、情報を仕入れておきたいようだ。
「タイマンなら弓か魔法」
りょーちゃんが答える。
「えっ、マジで? 双剣やる気なんだけど」
「いや、双剣は俺がやるって決めてただろ。適当に竹やりでも持ってろよ」
「は? お前らが前衛とか無理だろ。おとなしく俺に支援かけとけよ」
さっそくもめていた。
武器を持ち替えればいろんなスキルが使えるので、最初は好きな職でいいと思う。
「攻城戦はソロでも参加可能」
「マジか。ギルド作る必要ないじゃん」
「その場合、占拠できるのは1人になる」
「よし! おーめら、俺を支援しろ」
「おう、真っ先にぶった切るわ」
「リスキル(※2)してやんよ」
始める前から決裂していた。
一緒に戦うなら、ちゃんとギルドを作ったほうがよさそう。
「パワレベは可能。広範囲スキルがないと効率悪いが」
「リョウは範囲取ってねーの?」
「初期スキルしかない」
「だったら範囲特化にしようかなー。双剣は範囲つえーの?」
「強い」
「マジか。もう双剣やるしかないじゃん」
「支援どうすんだよ」
「支援とかめんどくさそーだし、やりたくないぞ」
「だったら、そこらでカワイイ女の子を誘ってくればよくね?」
「お前……天才かよ!」
「テンション上がるわ!」
盛り上がるみんな。
全員火力型というのも、おもしろそう。
「ちなみに、どうやって?」
「そりゃ……」
「もちろん……」
みんなでりょーちゃんのほうを見る。
「リョウ、入ってくれるよな?」
「考えておく」
「俺たちの計画は、リョウにかかっているんだ!」
「頼んだぞ!」
周りを取り囲んでお願いする。
「ナツもやろーぜ!」
「えっ?」
こっちに振り返る。
「おう、やろうやろう!」
「みんなでやったら、めっちゃ楽しいって!」
「う、うん……考えておくね」
あいまいな返事をする。
修正のお知らせはいつ来るんだろう。
早く直してくれないと、一緒に狩りにいけない。
「今日の授業って、何あったっけ?」
「あー、音楽あるわー」
「ん? 合唱?」
「合唱」
「俺の美声を響かせる時が来たようだな」
「ああ、夏の田んぼでよく聞くヤツか」
「そうそう、ゲコゲコゲコ……カエルじゃねーわ!」
「道端に落ちてる犬の『アレ』とかにたかってる感じの」
「ブーーーーーーンって、ハエでもないわ!」
「吉田さん家で飼ってるケヅメリクガメみたいな」
「カ、カメェー……って、鳴き声知らんわ!」
どうしよう。
今日は合唱の授業があるんだ。
すっかり忘れていた。
「あれ? ナツ元気ないけど、どうした?」
「音楽とか苦手だったっけ?」
「その……合唱だと、パートがあるから……」
「あぁー……」
なかなか声が低くならないので、どうしても女性パートに入れられてしまう。
そろそろ背もメキメキ伸びて、声もグッと低くなる予定なんだけど。
「いいじゃん。よく考えたらハーレムだぜ」
「そうだぞ。田中なんか女子に『キモイ、近づくな』って言われてるんだぞ」
「言われてないわ! 話しかけようとしたら『息吸うのやめてくれます?』って言われただけだ!」
「お前、何したんだよ……」
みんなが励ましてくれるけど、やっぱり恥ずかしい。
「ボクは、みんなと一緒がいいな」
「ナツ……」
「そこまで俺たちのことを……」
「よっしゃ、任せろ! お前を1人にはさせないワー(裏声)」
「アタシたちがついてましてヨー(裏声)」
「ぐおぉぉぉぉ(野太い声)」
「空気読めや!」
「ナツを見捨てる気か!」
「いや、裏声の出し方がわからん」
「えっ? マジで?」
「高い声出そうとしたら、勝手に出るだろ?」
「イ゛ェアアアア!」
「なんでデスボイスになるんだよ!」
「田中に追われる少女の気持ちになるんだ」
「キャァアアアア!!」
「出るじゃん」
「なんでだよ!?」
ワイワイ騒ぎながら、対策を考えてくれる。
「ありがとう、みんな」
「いいってことよ」
「仲間じゃないか」
「さあ、俺たちのハーモニーを奏でようぜ!」
「ダメに決まってるでしょ」
さっそく先生に提案するも、却下されてしまった。
「なぜゆえ!?」
「拙者の美声を聞き入れぬと申すか!?」
「殿中でござる! 殿中でござる!」
食ってかかる田中くんたち。
「じゃあ、できる限り高い声出してみて」
『きぇえええええええっ』
『ごぁああああああああ!?』
『グケガァァーーッ!』
「はい。テナー、テナー、バス」
「くっ! あと1歩のところで……」
「あと50歩くらいよ」
「この美声を評価されぬとは……」
「奇声は合唱と関係ないわ」
「高さだけなら勝てたのだが……」
「耳鼻科か脳外科に行ってこい」
3人ともダメだった。
「くそぅ、ナツとハーモニーする作戦が……」
「ハモりたいなら、なおさら別パートであるべきだろう」
「……その発想はなかった」
「目からウロコだ」
「天才かっ!」
「お前らと比べたら誰でも天才になるわ」
結局、いつものパートに。
高速バスに乗っている時にお尻に問題が発生したので、車内トイレを利用しました。
揺れ動くので難易度が高いです。
ふいている途中で激しい横揺れが来たので、危なくセルフ〇〇○○プレイするところでした。
※1、パワレベ:強い人に付き従って甘い汁をじゃぶじゃぶいただくこと。
パワーレベリングの略。
強いプレイヤーにPTを組んでもらって、強い敵を狩ってもらうと、楽々レベルアップ。
『1時間○○円ぽっきり!』とパワーレベリングを商売にする人もいる。
現実世界で説明すると、
「社長! いい店を見つけましたよ!」
「ほぅ……本当かね?」
「もちろんですよ! 社長が好きな50代でムチムチボディーな色白で巨乳な主夫もいますから!」
「……わかってるねぇ」
「今晩とかどうっすか?」
「そんなこと言って、またこの私におごらせようと思ってるんでしょ?」
「滅相もございません! 社長に有益な情報を伝えたいという一心です!」
「まったく……。君、『2名』で予約を取っておいて。支払いは私がするから」
「ありがとうございます!」
※2、リスキル:復活地点で待ち構えて念入りにぶっ殺すこと。
リスポーンキルの略。
復活してから何秒間は無敵時間があるので、その間に逃げきれば問題ない。
逃げきれなかった場合はまたリスポーン地点に戻されるので、永久に同じ場所で殺され続けることになる。
現実世界で説明すると、食中毒によりトイレの中で神への祈りを永久に繰り返すこと。




