キックベース
最初の広間のような、大きな部屋。
そこに、たくさんのダークシリーズが集まっている。
20人くらいいるかもしれない。
警戒すべき状況なのかもしれないけど……。
「……」
何かをやっている。
床には、石灰で書いたと思われる白線。
その白線をつなぐように、4か所に配置された白いベース。
見た目としては、野球の設備。
でも、誰もグローブを付けていないし、投げている物はサッカーボール。
「キックベース?(※1)」
「そうだな」
全身鎧で包んだ2メートルはありそうな大人(?)たちが、ワイワイとキックベースをしている光景。
どう反応していいのか、ちょっと困ってしまう。
「『缶けり』や『だるまさんがころんだ』のパターンもある」
「楽しそうだね」
仲がいいらしい。
「ここでは、何をすればいいの?」
「腕に自信があるなら、全員まとめて倒せばいい」
「さすがにこの数は……」
それなりのパーティーを組まないと、数の暴力で押しつぶされそう。
部屋全体に散らばっているので、1人ずつというわけにもいかない。
「だったら、参加するしかないな」
「キックベースに?」
「ああ」
こちらの存在に気づいたダークアーチャーが近づいてくる。
反射的に構えるも、りょーちゃんがそれを制する。
ガシッ。
手をつかまれ、ホームベースのほうへ連れていかれる。
「えっと……これって、ルールは?」
「2空振りかファールで交代」
「アウトになった場合、ペナルティーとかある?」
「特にはない」
「よかった」
アウトになってもいいなら、気楽にやれる。
「負けたら味方チームからボコられるだけだ」
「よくなかった!」
アウトになったら、負けが近づいてしまう。
足を引っ張らないようにしたい。
「……」
スコアボードを見ると、7回裏ランナーなし1アウト。
1ー0で負けている。
勝つためには、なんとかして塁に出たいところ。
転がしたほうが確率は高そうかな?
ゴロゴロゴロ。
バッターボックスに入るなり、すぐに投げてくる。
まずは様子見。
『アーイッ!』
審判がストライク(?)を宣言する。
思っていたよりは、普通のボールだった。
これなら前に飛ばすくらいはできそう。
ゴロゴロゴロ。
2投目を放ってくる。
ファールにしないよう、センター方面を意識して……。
ぺこーん。
「あっ」
フラフラ~っと上がったボールが、ピッチャーの元へ飛んでいく。
パシッ。
ダイレクトでキャッチして、アウトになる。
これで2アウト。
「ごめん、りょーちゃん」
「問題ない」
りょーちゃんにあとを任せて、ベンチに下がる。
『『『……』』』
見られてる。
すっごい見られてる。
アウトになったのかまずかったのか。
チームの方々が赤い目が、突き刺すようにこちらを見ている。
お願い、りょーちゃん!
ゴロゴロゴロ。
ほどよいコースに1投目が放たれて……。
ドシュゥゥゥゥ!
強烈な打球が、外野まで転がっていく。
全力で塁を回るりょーちゃん。
外野がボールを取りにいって……。
メコォォォォ!
うっかり蹴り飛ばす。
フルフェイスのせいで視界が悪いのか、細かい動作に影響があるらしい。
その間に、2塁を回って3塁へ向かう。
ようやくボールが返ってくるけど、りょーちゃんは3塁でも止まらない。
中継からのバックホーム。
それに対し、ヘッドスライディングで飛び込む。
本塁でのクロスプレー。
審判の判定は……。
『!』
両手を横に振るジェスチャー。
セーフ!
『ウォオオオオ!!』
沸き立つベンチ。
天を仰ぐピッチャー。
「りょーちゃん、すごい!」
戻ってきたりょーちゃんと、ハイタッチする。
「そこまで守備うまくないから、適当に転がせばなんとかなる」
「その適当が難しいんだけど……」
ボクが全力で蹴っても、あんなに飛ばない。
りょーちゃんの真似しようと思っても、肉体的にも技術的にも無理がある。
「次の打席までは味方の応援?」
「いや、これで終わり」
「同点になったところだよね?」
ランナーはなかったし、スコアボードにも1ー1と書いてある。
「プレイヤー全員の打席が回れば終わる」
「同点のままでも?」
「ああ、勝つとアイテムがもらえる。負けると戦闘。同点ならそのまま次へ」
「そういうミニゲームなんだ」
同点にできてよかった。
ボクが塁に出ていたら勝てたのかもしれないけど。
「経験値とドロップが欲しいなら乱闘するが?」
「倒される未来しか見えないよ……」
これだけの数に囲まれていると、スキルを使う間もなくボコボコにされそう。
「なら、次行くか」
ワイワイとはしゃいでいるみんなの間を通って、次の部屋へ進む。
初めてキックベースで三振した時に、自分の足の長さが思っていたより短いことに気づきました。
一生知らないままでいたかったです。
※1、キックベース:野球を足でやるやつ。
『サッカーやりたい!』『いや、野球だろ!』となった場合に妥協案として選ばれる場合が多い。
Zガン○ムの本体にザ○の頭を乗せたZ○クみたいな感じ。




