小部屋2
「……」
一定の距離を保ったまま、動いてこないダークローグ。
早くなんとかして、暗闇状態のりょーちゃんの手助けに行きたいんだけど……。
ドゴォ!
チラッと横を見ると、別のダークローグを吹き飛ばしていた。
あとを追っていき追撃。
起き上がりの攻撃は、ステップで回避。
密着状態を維持したまま、相手を追い込んでいく。
「……?」
普通に戦ってるような……?
黒いもやもやはあるので、まだ暗闇が効いてるはず。
シュッ。
気を取られているうちに動きがあった。
ステップでかわそうとするけど、少しタイミングが遅れる。
「っ!」
黒いロープが足にからみつき、転びそうになる。
拘束系のスキル。
鈍足とは違うようで、この場所から動けない。
弓を構えたまま、相手の動きを見る。
チャンスをうかがっているようで、じりじりと距離を詰めてくる。
「……」
これ以上近づかれたら、近接攻撃のほうが有利になってしまう。
先手を取って、矢を放つ。
「!」
低い姿勢で突っ込んできた。
頭上を通り抜ける矢。
接近を許し、短剣で斬られる。
ズバッ。
ダメージは……そこまで大きくない。
ズバッ。
連続攻撃になるけど、なんとか耐えられそう。
ズバッ。
ダメかも!
相手の攻撃が止まらない。
普通ならノックバックが発生するはずだけど、足止めされているのでそれがない。
のけぞり硬直だけは残っているので、一方的に攻撃され続けることに。
ズバッ。
体力がどんどん減っていく。
攻撃力が低いといっても、一撃で2割ほどのダメージがある。
ポーションすら使えない状態なので、スキル効果が切れるのを待つしかない。
ズバッ。
残りHP1。
今から足止めが解けても、次の攻撃は避けられない。
再び短剣を振り上げて……。
ズバッ。
地面に倒れると思って、目を閉じる。
……。
……。
……。
「……?」
HPが残っている。
「りょーちゃん?」
いつの間にか、すぐ隣にいた。
最後の音は、りょーちゃんの攻撃音だったらしい。
「もう1人のダークローグは?」
「倒してきた」
さらっと言ってのける。
暗闇状態でも、あんまり関係がないらしい
これで、残りのダークローグは1体。
隠れた状態から強襲される心配もなくなった。
2人で挟み込む。
ぶすり。
りょーちゃんに気を取られているところを、後ろから狙撃。
ドゴォ!
りょーちゃんがスキルで飛ばす。
あとは、いつもの流れ。
起き上がり行動はバックステップだったので、追いかけてスマッシュを当てる。
ダメージプラスを詠唱して、りょーちゃんの一撃が……。
カスーン。
「あれ?」
いつもと違う音が鳴る。
ダメージも30ちょっと。
何か間違えたかな……?
「あっ」
表からの攻撃になってる!
バックステップ分の距離がずれて、背後から狙えなかったようだ。
ズバッ。
反撃でりょーちゃんが倒される。
低目の火力も、りょーちゃんには関係なかった。
ダークローグの行動は隠れるだったので、復活薬を投げる。
「スマッシュだとダメだった?」
「投げにすれば、ある程度の距離調整はできる」
「なるほど」
『背後から当てた場合に大ダメージ』という条件があるわけだし、今後は飛ばす距離も考えよう。
「逆からでも、うまく狙えば裏当てできるが」
「そういう技もあるんだ」
「だいたい他の部分に吸われる(※1)」
「難しいんだね」
失敗したら大変なことになるし、できるだけ背後から狙えるように注意したい。
プッ!
姿を現したローグが、暗闇攻撃を仕掛けてくる。
それを見たりょーちゃんが……当たりに行った!?
黒いもやもやをまといながら、ローグを飛ばしてくる。
ダメージ判定はないようなので、攻撃を優先したのかな?
「……」
起き上がりを狙えそうなので、近づいて準備する。
相手の行動は……。
「!」
バックステップだ。
さっそくチャンスがきたので、投げを狙う。
着地する場所まで走って、投げを……。
「あっ」
つかもうとしたところで、するりと逃げられてしまった。
タイミングが遅かった。
「ごめん、投げられなかった」
「射程が短いから、早めに行動しないと遅れやすい」
いろいろと応用パターンがあるみたいなので、これも練習しておかないと。
フリーになったダークローグに、りょーちゃんが近づいていく。
相手の行動を見ながら、的確に攻撃を当てていく。
……暗闇状態のまま。
「りょーちゃん、見えてるの?」
「近づけば見える」
「見えるといっても……」
距離にして、50cmあるかどうか。
ほぼ密着していないと、何もわからない。
「近づきすぎたら、反応できないような?」
「行動パターンを把握しておけば、動きでわかる」
実際に、話しながら普通に回避している。
りょーちゃんにとっては普通のことらしい。
「ダメージプラス!」
ドゴォ!
普通にりょーちゃんが削り切って、勝利する。
ちゅるりり~ん♪
「あ」
レアドロップ!
しかも、武器!
りょーちゃんが欲しがっていたアイテムかも。
近くに行って確認する。
「……?」
武器……には違いないんだけど、どうも形が短剣っぽくない。
「斧だよね?」
「斧だな」
斧だった。
持っている武器が短剣だから、てっきり短剣がドロップすると思っていた。
違う場合もあるようだ。
りょーちゃんが拾って性能を確認する。
「……使うか?」
「斧は……どうなんだろ」
りょーちゃんから借りて、アイテム説明を見る。
ハンドアックス:絶対深剃りしたいあなたにオススメ。肉ごとこそぎ落とすバグツンの切れ味。忙しい朝をサポートします。
攻撃力:3~18
射程:極短
重さ:ちょい重
スロット:2
OP:未鑑定
「ダメージにムラがありそうだね」
見習いロッドより最大攻撃力は高いけど、最低値は低い(※2)。
重くて扱いづらそうなので、単純な火力アップにはならなそう。
「S上げるかパッシブ取れば、最大ダメージが出やすくなる」
「んー、そこまでの余裕はないかも」
斧を返す。
支援スキルを優先して上げたいし、他の武器を持つのはそのあとで。
「残りも倒すか」
「忘れてた!」
部屋の中央。
ぽつんとたたずむダークアーマー。
ダークローグの対処で忙しかったので、すっかり存在を忘れていた。
「ダークローグと同時には来ないんだね」
「暗闇中に動き回ると、アレのタゲ取る」
「そんなトラップが!」
りょーちゃんがいなかったら、間違いなく引っかかっていた。
最初の奇襲も、暗闇も、足止めからの攻撃も、全部しっかり引っかかってたけど……。
ダークアーマーは1体だったので、特に苦戦することもなかった。
2人で囲んで撃破する。
支援スキルを使いMPを万全にしてから、次の部屋へ。
ステーキが食べたくなったので、近所のスーパーで鶏むね肉を買ってきました。
熱々に熱したフライパンに油をひいて、いざ投入。
油が跳ねて足に直撃。
ライブ中の歌手並みに「アーォ!」とシャウトしながら調理を続けました。
皆様も全裸で調理することは多々あると思いますが、油の扱いには気をつけてください。
※1、吸われる:弱点部位を狙おうとしたら、たるんだ腹などに当たってうまくいかないこと。
スキル攻撃は判定が大きくなるので、より吸われやすくなる。
ボス戦などでは、取り巻きのモンスターが邪魔してくることも。
現実世界で説明すると、食べた分が身長や胸には行かず、すべて腹に直行すること。
※2、攻撃力の幅:狭ければ安定したダメージが出るし、広いとダメージにムラが出る。
『50~50』の武器と『1~100』の武器では、当然前者のほうがダメージが安定して使いやすい。
後者はここぞという時に1ダメージを連発するので、ギャンブラーしか愛用しない。
人気なのは言うまでもなく後者である。




