逆鱗
「そろそろボスお目覚めの時間よー」
「おっけー」
「撤退撤退」
「乗り遅れるなよ! 絶対だぞ! 絶対だからな!?」
「なんでフラグ立てようとしてんだよw」
「幼女みるくじゃないんだからやらないわw」
ボスの体に飛び乗っていた人たちが戻ってくる。
再び船が動き出すと同時に、ボスの体が赤く染まっていく。
「あれ? 色変わった?」
「おや?」
「やりすぎた?」
「削りすぎたんじゃね?」
「赤くなってんじゃんw」
「まさかのワンターンで発狂モードwww」
「火力出すぎぃー!」
「お前ら自重しろwww」
「調子に乗って削りすぎたヤツ誰だ!?」
「お前らだよwww」
「天使バフあるから気持ちよくなっちゃって……」
「いつもの倍ダメージ出るのマジ楽しいwww」
「少しは考えて殴れよw」
「HPゲージ見えてるんだから自重しろw」
「誰かが調整してくれるかと」
「同じく」
「俺もそう思ってた」
「俺は元々そんなに火力ないし……」
「誰一人自重する人がいないのである!」
「ここまで削っときゃすぐ終わるっしょ。余裕余裕」
「こいつHP減らすとエビ並みにつえーんだって!」
「ある程度減らしてから一気にいかないと大変なことに……大変な攻撃きたー!」
ボスが海の中に潜っていく。
完全に姿が見えなくなり、周りにいたモンスターたちの姿も消える。
さっきまでの激しさがウソのように、波一つない静かな海になる。
『全艦退避ー!』
『何が起きるんだ?』
『とにかく逃げろ! ひたすら遠くにだ!』
『助けてくれ! 帆がやられちまって速度が出ない!』
『波に乗っちまえばいい』
『動けない状態でどうしろと!?』
『運がよければ生き残る。気合でなんとかしろ』
『なぁに、鉱山の1匹目でエンチャドロップするくらいの運があれば生き残れる』
『あいつらのドロップ率0.05%とかだぞw』
『さすがに1匹じゃ無理だが、10匹で2つ落としたことはあったな』
『は?』
『氏ね』
『もぐぞ』
『むしるぞ』
『自分は経験したことないからわからないけど、とりあえず氏んでもらっていいですか?』
『エンチャ出なくてたまりにたまりまくった8千個のポーションの海に沈めるぞ』
『ここから突き落とすぞ』
『おい、ケツ出せや』
『今すぐ魚のエサにしてやろうか?』
『ポーションハンターたちの恨みがマリアナ海溝より深いwww』
さっきまでボスがいた海面に、小さな泡が生まれた。
1つ、2つと増えていき……。
ザパーッ!
海がせり上がった。
周囲の海水を巻き上げながら、空に登っていく。
その中心にいるのは、真っ赤に染まったリヴァイアサン。
長い体のすべてが海面から出るほど上昇し、大量の海水と共に落下してきた。
リヴァイアサン、怒りのただのジャンプ。




