水と油
なでなで。
baruさんに頭をなでられる。
「髪の手入れはしているの?」
「これといって特に……市販のシャンプーとリンスで洗うくらいです」
「そう」
なでなで。
ひたすらなでられる。
人の髪が気になるのかな?
baruさんはキレイな髪をしているから、普段からちゃんと手入れしていそう。
「普通に和んでいるみたいだけど、SENRIちゃんはそれでいいの? 他に何かやることないの?」
「あ、そうでした」
『お祭りのことを知っていた理由』を教えてもらう予定だった。
baruさんを見上げる。
「ほら……この表情たまらないでしょ?」
「でしょって言われても……まあ、確かに可愛い子だけども」
「あの……?」
「ああ、なぜ祭りを知っていたかだっけ?」
「はい」
「直接見ていたからよ」
「そうだったのですか! ボクは全然気づきませんでした」
「え? あんた何してんの? 現実で手を出したの!?」
「手は出してないわ。1人になるのを狙っていたけど、常に余計な男が周りにいたし」
「おいおいおいおい?」
兎々さんが詰め寄ってくる。
「いくらなんでも現実はまずいだろ。まさか住所特定とかしてないだろうな?」
「さぁ?」
「はい回収!」
ボクをひょいっと抱えて、baruさんから距離を取る。
「SENRIちゃん!」
「は、はい」
「SENRIちゃん! 外で怪しい女に出会っても、絶対についていっちゃダメだからね!? 玄関を開けるときは必ずチェーンロックしてから!」
「大丈夫です」
『怪しい人についていっちゃダメ』とか『戸締りはキッチリする』なんかは、周りの人にもよく言われる。
ちゃんと注意しながら生活している。
『登下校が狙われやすい』とも言われているけど、りょーちゃんと一緒だから安心。
「そうね、怪しい男には注意したほうがいいわ。ちょっと道でも聞かれたらホイホイついていきそうな顔してるし」
「あんたが一番要注意だわ!」
「えっと……baruさんは近くに住んでいるのでしょうか?」
地元でやる小さい祭りだから、わざわざ遠くから来る人はいない。
同じ日にもっと大きな祭りがあるので、多くの人はそっちに行くはず。
「ええ、たまたま近くの祭りに行ったら、たまたま見かけたのよ」
「すごい偶然ですね!」
「ねー」
「いやいやいや、絶対偶然じゃないでしょ! 何かしらの方法で調べたでしょ!」
兎々さんが怪しむ。
調べるといっても……そんな方法あるのかな?
ゲームのシステム上、実際の名前や住所はわからない設定になっている。
見た目の情報だけで日本中から探し出すのは、途方もない気がする。
仮に住所を特定できたとしても、近くに住んでいないと会いに行けないし。
「おい、綿あめ。何している?」
「?」
ザイドさんがやってきた。
隣にジャハルさんもいる。
「こんにちは」
「何をしているかと聞いている」
「今は……」
「キモイ、近寄るな」
鋭い視線でbaruさんが言い放つ。
「なんだ? この女は?」
「ヒゲ生えた男とか無理。汚い」
「なんだと!?」
「まーまー、相手はレディですから」
ジャハルさんが止めに入る。
「ヒゲに関しては私も同意見ですし」
「おい!?」
「男はどこか消えて」
「だそうですよ、ザイド様」
「なぜ俺様が貴様の言うことなど聞かねばならんのだ! そっちが消えろ!」
にらみ合う2人。
出会ったばかりなのに、一触即発の状態になっていた。
ロリコン疑惑vsストーカー疑惑。
ファイッ!




