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近所のゲームセンター

「ゲーセン行こうぜ!」


 授業が終わると、田中くんが声をかけてきた。

 いつものゲームセンターに行くようだ。


「ああ、いいぞ」

「あれ?」


 りょーちゃんがOKする。

 てっきり、すぐに帰ってログインするものだと思っていたけど。


「今日はメンテ(メンテナンス)日(※1)」

「そうなんだ」


 公式サイトをチェックしてなかった。

 そういうことなら、りょーちゃんが行くのも納得。


「ナツは?」

「ボクも行こうかな」


 家でゲームする予定くらいしかなかったし、メンテナンスが終わるまで時間をつぶそう。


「おっし! んじゃ、いつもの場所で!」


 田中くんたちと別れて、りょーちゃんと帰る。

 下校中の寄り道は、校則で禁止されている。

 なので、一度家に帰って、着替えてくる必要がある。

 でも、田中くんは家が逆方向だから、直接お店に向かうことが多い。

 そのために、ゲームセンターに行く場合は、いつも家から着替えを持ってきている。


「ちなみに、メンテナンスっていつ終わるの?」

「時間通りなら16時。延長して定期臨時再メンテ(※2)するまでがテンプレだから、19時か20時頃には終わるだろう」

「夜までかかりそうだね……」


 あんまり遅くなるようだと、今日のログインは厳しいかも。

 アップデート情報くらいはチェックしとこう。




 りょーちゃんと別れて、家に帰る。

 着替えを済ませて、何かメールが来てないか確認。


「……あ」


 お母さんからのメールが来ていた。

 『打ち合わせがあるので、夕食はいらない』と書いてある。

 このメールは、三井さんが打ったのかな?

 お母さんだったら、まず電話をしてくる。

 文字入力が苦手なので。

 『わかりました』と返信して、ポケットに入れる。

 夕食はどうしようかな。

 自分の分だけでよくなったので、簡単なもので済ませよう。

 ゲームを始めてからは、ずっとそんな感じだけど。


「よし」


 なけなしのお小遣いを持って、準備完了。

 りょーちゃん家へ。




「おまたせ」


 りょーちゃんと合流して、いつものお店へ向かう。

 ゲームセンターといっても、駄菓子屋さんの店内にあるゲームコーナーのこと。

 店主さんが趣味で集めたそうで、レトロなゲームが並んでいる。


 古いゲームは、1プレイ10円。

 比較的新しいゲームでも、2プレイ50円。


 お小遣いが少ない学生の味方。

 近所の子供たちが、よく集まっている。

 他にも、背広を着たサラリーマンらしき姿も、ちょくちょく見かける。

 お小遣いが少ないお父さんの味方、でもあるのかも?




「お邪魔します」


 あいさつしてからお店の中へ入る。

 今日は、店主さんはいないのかな?

 なかなか自由な人なので、お店にいないことも多い。


「おっ、来たか!」


 先に来ていた田中くんたち4人。

 それと、隣のクラスの山本くんと、佐々木くんがいた。


「あれ? リョウがくるのは珍しいじゃん。最近ずっと引きこもってるって聞いたけど」

「オレっちが怖くて、逃げ回っていたのさ」

「小学生にも負けてるヤツが何言ってんだ」

「アレは、たまたまだよ!」


 さっそく格闘ゲームを取り囲んで、盛り上がっている。

 他のお客さんはいないみたいなので、貸切状態だ。


「ナツは……」


 そこまで言ったところで、佐々木くんの表情が固まる。


「ちょっと……」


 ゲームをしている田中くん以外が集まって、なにやら内緒話を始める。


『なぁ。ナツの私服って、いつもあんな感じなのか……?』

『まあ、だいたいあんな感じだな』

『だいぶ、もう……アレじゃね?』

『どう見てもアレだよな』

『どう見ても女装』

『ぼかしてるんだからはっきり言うなよ!』

『服だけ見れば、男が着てもおかしくないんだが……』

『いやー、俺はちょっと無理かな』

『俺もだ』

『ないな』

『ただでさえアレなのに、あんなんされたらアレだよ』

『まあな』

『……本人に指摘したほうがいいのか?』

『どうだろうか。本人はアレなこと気にしてるし』

『やんわりと触れる程度にしたほうがいい』

『わかった』


 みんなが戻ってくる。


「どうかしたの?」

「いや、なんでもない……」


 そうは言うけど、こちらを気にしている様子。


「もしかして、何か変だった……?」


 自分の姿を確認する。

 いつもの私服。

 お母さんが熱心に勧めてくるような、フリフリな服ではないはず。


「そうじゃなくて……その服は、どこで買ったのかなぁ、と」

「この服?」

「おう」

「お母さんが買ってくるから、どこで買ったかまでは……」

「ああ、わからないなら別にいいんだ」


 そう言って、再び集まっていく。


『犯人は母親らしいな……』

『自分の息子を、どういう方向で育てたいんだ?』

『あそこまでそっち方面が似合うなら、そう仕向けたくなる気持ちもわからないでもないが』

『つーか、ナツのかーちゃんって、ナツにそっくりだよな』

『だよな! 最初見た時は『あ、姉がいるんだ』って普通に思ったわ』

『俺もだわ』

『親子には見えないわな』

『仲のいい姉妹だよな』


 ひそひそと話しているので、内容までは聞こえてこない。

 ゲームの対策の話かな?


『うちのゴリラどもと交換してくれねーかな。ケンカしたら普通に殴り倒されるわ』

『お前ん家の妹はまだポチャカワじゃん。うちの姉なんぞ、ほぼ力士だぞ』

『5兄弟みんな男なんだが? 家の中が男臭いんだが?』

『いや、女だってくせぇぞ。ハーブがどうたらで、変なニオイ垂れ流すし』

『服とか脱ぎ散らかすしな』

『……ナツって、いいニオイするよな』

『それ以上いけない』

『マジなんだって。体育のあととかでも、野郎臭さがないというか……』

『深く考えるんじゃない、小林みたいになりたいのか』

『えっ? 小林って、そっちの趣味に……?』

『ああ、小林は、もう……』

『いいヤツだったのに……』

『小林……』

『……』


 しんみりとした雰囲気になっている。

 キャラクターの下方修正でもあったのかな?


「おーい! 誰か入ってこいよ! 早く乱入(※3)してくれないと、俺がNPC(コンピューター操作)に殺されっからな?」


 1人でやっていた田中くんが叫ぶ。

 りょーちゃんが歩いていって、コインを投入する。


「おっと、いいのか? しばらく離れていたのに、いきなり挑んでくるなんて……最初の1試合くらいトレモ(※4)してやろうか?」


 乱入を見るなり、そんな言葉をかけてくる。

 相当自信があるようだ。

 

「必要ない」

「ほぅ……それならそれで構わないが、負けた時の言い訳にするなよ?」


 田中くん対りょーちゃんの試合が始まる。

 小林くんは無事に踏み外したようです。


※1、メンテ日:週に1回メンテナンスを行って、アップデートやバグ修正をすること。

 このゲームは月曜日の10:00~16:00が定期メンテナンス時間。

 なお、その時間内に終わったことは一度もない。


※2、定期臨時再メンテ:知ってた。

 時間がオーバーすることを、メンテナンス延長。

 予定外の時間にやることを、臨時メンテナンス。

 一度終わったはずのメンテナンスをもう一度やり直すのが、再メンテナンス。

 臨時なのに毎回やっている場合は、定期臨時メンテナンスと呼ばれる。


 例:16時に終わる予定が16時30分まで延長し、それでも終わらなくて18時まで再延長し、一度終わらせるけど18時20分頃にまたメンテナンスを開始し、19時終了予定がオーバーし、その後は終了時間未定になって運営の反応がなくなる。


 この場合は『定期延長再延長臨時再延長メンテナンス』となる。

 現実世界で説明すると、夏休みの宿題。


※3、乱入:対戦相手が入ってくること。

 向かい合って対戦するゲームの場合は、相手が来るまでNPCと戦う1人モードで時間をつぶすことになる。

 私ほどの実力になると、相手がちょっと両替に行ったすきにボッコボコにされて倒されることくらいは余裕である。

 現実世界で説明すると、たまに学校内に侵入してくる犬とかタヌキ。


※4、トレモ:トレーニングモードの略。

 動かない相手をボッコボコにできる練習モードのこと。

 100円を入れて相手の華麗なコンボを死ぬまで眺める観戦モード付きのゲームも存在している。

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