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体育の時間2

「何やってんだよ小林!」

「狙うのはそっちじゃねーよ!」

「それでもバドミントン部か!」

「当てるならこの俺にしろ!」

「え? なになに? どうしたの?」


 騒ぎを聞きつけて、女子のみんなもやってくる。


「なんか、男子が夏海くんをイジメてるみたい」

「えーっ!? 私のちさタンが!?」

「なつみんがケガでもしたら、どうするのよ!」

「許せん……」

「もぐぞ」


 ひそひそ話している。


「すべて小林がやりました」


 田中くんたちが、小林くんを指差す。


「あ、汚いぞ! お前らがやれって言うから、やったのに!」

「誰がナツを狙えって言った! あっちの男をやれよ!」

「そっち狙う予定だったんだけど、ナツが……」

「やっぱり狙ってたんだ!」

「男子サイテー」

「おい、なつみんに何かあったら、前歯へし折るからな?」

「もぐぞ」

「大丈夫? ケガしてない? なめようか?」


 クラス委員長さんが近づいてきて、心配そうにのぞき込んでくる。


「大丈夫、なんともないよ」

「……クンカクンカ」

「あの、委員長さん……?」

「何?」

「どうして、においをかいでいるの?」

「私、においでケガの具合がわかるから」

「そうなんだ」


 ゲームの中の特殊能力みたいでカッコイイ。


「すーはーすーはー」

「……」

「ンー」

「……」

「ハァハァハァ」


 顔を押しつけたまま動かれると、くすぐったい。


「……もうたまんねぇ!」

「?」


 顔を離したかと思ったら、今度は服の中に手を入れてきた。


「えっ? な、何!?」

「生でかいだほうが、よくわかるからね! 邪魔なモノはポイしちゃおうね!」


 ハァハァと鼻息を荒くしながら、服を脱がそうとしてくる。


「はい、アウトー!」

「おさわりする悪い子は、あっちで反省してもらわないとね」

「何をする! 今、いいところなのに!」


 両腕を抱えられて、ずるずると引きずられていく委員長さん。


「ごめんね。ちょっと頭がアレなだけで、悪気はないから」

「委員長さん、どうかしたのかな?」

「どうかしてるかといえば、どうかしてるけど……」

「どこか具合が悪かったり……?」

「あー、そういうのじゃないから安心して。むしろ、健康すぎるから問題というか……」

「?」


 よくわからないけど、元気ならいいのかな?


「……ダメ、そんな目で見つめないで」

「?」

「ああ、そんな小首をかしげる姿とか……ダメだ、耐えるんだ!」

「大丈夫……?」

「ぐふぅ! そんな風に見つめられたら、あたし……むほぉー! しんぼうたまらんっ!」

「わっ」


 わしゃわしゃと頭をなでられる。


「ハァハァ……いい……」

「あの……?」

「また患者が生まれちまったか……回収班ー! こっちだ!」

「?」

「くっ、早くきてくれー! そう長くは、理性が持たないぞ!」


 苦しげに叫んでるけど、大丈夫かな?

 近づいて様子を見ようとしたら、ぷるぷると体を震わせ始めた。

 どこか、体の調子が悪いのかもしれない。

 肩に触れようとした瞬間……。


「もう我慢できねぇ! うひょー! 新鮮なショタの肉体だぁー!」


 むにむにと、ほっぺたをつままれる。


「この触り心地……たまらんぞ……」

「あ、ずるーい! 私にも耳の裏なめさせてよ!」

「そのぷりケツに顔くっつけてすりすりするポジションは渡さん!」

「体液! 体液ならなんでも!」


 どんどん女子が集まってくる。


「お前ら、遊んでないで授業しろよ」


 見かねて先生が注意するも……。


「遊びじゃないです! 本気です!」

「お、おお……そうか……」


 それ以上何か言うこともなく、帰っていった。


『おい、ナツが取り囲まれてるぞ。誰か救出してやれ』

『無理だろ……あの集団の中に入っていったら、前歯ねじ曲げられるわ』

『代われるものなら、代わってほしいわ。俺も女子と触れ合いたい……』

『仕方ねぇな。俺の体をなで回していいぞ』


 男子のほうも、試合は中断していた。


『リョウが行けば、返してもらえるんじゃね?』

『その手があった!』

『旦那の頼みとあれば、ヤツらも手出しはすまい』

『取り返しのつかない事態になる前に、助け出してやってくれ!』


 りょーちゃんがこっちにやってくる。


「続きやるぞ」

「あ、うん」


 さっと道が開いて、女子のみんなが帰っていく。


『さすが公認なだけあるぜ』

『小林だと、こうはいかないな』

『見ろよ、うちの女子たちを。聖母みたいな微笑みを浮かべてやがる』

『ご理解なさってる顔してますわ』


 ともかく、ケガはしてないってことは伝わったようだ。


『というか、この流れで続きやるのは、イヤなんだけど……』

『がんばれ小林! 今なら女子が大注目の的だぜ!』

『汚名返上するチャンスだ!』

『いや、また当てても困るし……』

『モテるぞ』

『……マジ?』

『ああ、スポーツマンらしく正々堂々と勝負に勝てば、評価も逆転フィーバーよ』

『……いけるか?』

『もちろんさ。リョウより強いことが証明されれば、クラス1のモテ男は決まったようなもんさ』

『つまりは、ヤツを倒せばいいわけだ』

『あの野郎にも黄色い声援が飛んでやがるし、一発くらいはお見舞いしてやろうぜ?』

『あのきれいな顔をフッ飛ばしてやれ!』

『……わかった』


 小林くんがコートに戻ってくる。


「そんじゃ、こっちから始め……ひぃ!?」


 サーブを打とうとした小林くんが、凍りつく。

 どうしたんだろう?

 ボクたちを見て……というより、そのさらに後ろを見ているような?

 何かあるのかなと思って、振り返ってみる。


「ちさときゅん♪ がんばって~!」

「漣君もファイトー!」

「あぁ~、英気が養われるわ」

「生まれてきてよかった」


 にこやかに応援している女子の姿。

 これといって、何かがあるようには見えない。


『ヤツらの二面性パネェな』

『これが保護観察対象と、小林との差か……』

『大丈夫だ、小林ぃ! 俺たちがついている!』

『お前を信じる俺を信じろ!』

『……ああ』


 気を取り直したようで、サーブを打ってくる。

 遠くへ返して、まずは距離を稼ぐ。

 小林くんも返して、ラリーが続く……と思ったんだけど。


 ドシュゥ!


 甘く返ってきた球を、りょーちゃんが決める。


「くっ」


 今度はこちらのサーブから。


 ぺこーん。


 ちょっと高く浮きすぎちゃった。

 当然、小林くんがそれを見逃すはずがない。


 ぱこーん。


「?」


 ふんわりとした打球が返ってくる。


 バシュゥ!


 りょーちゃんに決められる。

 急に動きが悪くなったような?

 顔色も悪いし、体調が悪いのかも?


「く、くそぅ……」


 その後も何度かラリーは続いたものの、ほとんどりょーちゃんが決めて勝負がついた。




「大丈夫?」


 試合後に、小林くんの元へと駆け寄る。


「あ、ああ……」


 そう答えるけど、あきらかに顔色が悪い。

 汗もかいている。

 用意しておいたタオルを持ってきて、小林くんに渡す。


「はい、タオル」

「……」

「あ、まだ使ってないから、清潔だよ」

「……俺にやさしくしてくれるのは、ナツだけだよ」

「?」


 弱々しい笑みを浮かべながら、そんなことを言う。

 クラスのみんな、親切な人ばっかりだと思うけど。


「タオルさんきゅ」

「保健室に行かなくて大丈夫?」

「ああ、問題ない」

「具合が悪いようなら、無理しないでね?」

「……もう、女子にモテなくても、いいんじゃないかな」

「?」


 ぶつぶつと、何かつぶやいている。


「もう、男でもいい気がしてきた……」

「ヤバイ! 小林が進んじゃいけない方向に!」

「小林! ダメだ! 戻れなくなるぞ!」

「しっかりしろ! 小林!」


 田中くんたちが集まってきて、必死に声をかけている。

 やっぱり、体調が悪かったみたいだ。


「だって、ほら、こんな俺にもやさしくしてくれるし、この際、性別なんて……」

「早まるな、小林! 気持ちはわかるけども!」

「あっちの方々が手招きしてる! 引きずり込まれるぞ!」

「男でも可愛ければ……」

「ダメだって! あんな見た目でも生えてるんだから!」

「大きめのジャージが男心をくすぐるけど、あれは男なんだって!」

「……」

「小林?」

「おい、どうした?」

「小林……? 小林ぃぃぃ!」


 どこか遠くを見つめる小林くん。

 田中くんたちが必死に呼びかけていた。

 おや?

 小林くんの ようすが なんか へんだぞ?????

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