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体育の時間

「っしゃー! こいやー!」


 田中くんが叫ぶ。

 体育の授業でのバドミントン。

 ボクはりょーちゃんとペア。

 相手は、田中くんと鈴木くんのペア。

 体育は……あんまり得意じゃないけど、りょーちゃんの邪魔にならないようにがんばりたい。


 ぽーん。


 りょーちゃんのサーブからスタート。


 ぽーん。


 相手がそれを返し……。


 ドゴォ!


 走り込んできたりょーちゃんが、ジャンピングスマッシュを決める。

 目にも止まらぬ一撃が、相手のコートに突き刺さる。


「……」

「……」


 沈黙する田中くんと鈴木くん。

 うん。

 ボクが邪魔にならなければ、それだけで勝てそう。


「ナツ狙いでいくぞ!」

「わかった!」


 こちらに狙いを定めてきた。

 あのスマッシュを見たあとでは、当然の選択かもしれない。


 ぽーん。


 りょーちゃんがサーブを放つ。


「っしゃーオラァ!」


 宣言通り、こちらに向かって飛ばしてくる。


 ぽこん!


 頭上のシャトルを叩きつける。

 りょーちゃんほど鋭くはないけど、うまいこと2人の間に落ちた。


「ナツも決めてくるじゃん!」

「マジかよ! 見るからにぽや~んってしてるのに!」


 最初からこっちに来るとわかっていたおかげ。


「くそ! こうなりゃ真ん中狙いだ! お見合いさせてやるぜ!」

「おうよ!」


 次の作戦が決まる。

 全部聞こえちゃってるけど、いいのかな?


 ぽーん。


「ぬぉおおおお!!」


 スカッ。


 思い切り振りかぶった田中くんが、盛大に空振りする。


「当たってすらいねーぞ!」

「たまたまだよ、たまたま! 次はしっかり決めるから!」

「しっかりしてくれよ」


 ぽーん。


「せぃやぁああああ!!」


 鈴木くんが走り込む。


 カツーン。


 ラケットのふちに当たって、あらぬ方向へ飛んでいく。


「お前も返せてねーじゃねぇか!」

「空振りよりはマシだろ!」


 ワイワイと言い合っている。


「せめて前に飛ばせよ!」

「お前もな!」


 ぽーん。


「あ! ちょ、ズル!」


 そんなことを気にせず、テンポよくサーブをするりょーちゃん。


「とーぅ!」


 いい感じのレシーブが返ってくる。

 りょーちゃんが前に出て拾ったので、後ろに下がる。


「もらったぁー!」


 田中くんが飛び上がり、叩きつけるようにラケットを振る。


 かしゅーん。


 頭上を越えて、コートの外へ落ちる。


「ホームランじゃねーか!」

「前には飛んだし!」

「そういうゲームじゃねーから、コレ!」


 シャトルを拾って、りょーちゃんに渡す。


 ぽーん。


「ハァッ!」


 今回も、うまくレシーブしてくる。

 スマッシュされないよう、高さに気をつけながら返す。


「せぃやぁー!」


 鈴木くんが走り込んできて、フルスイングする。


 パッカーン!


 はるか上空まで舞い上がったシャトルが、隣のコートまで飛んでいく。


「……よし」

「よし、じゃねーよ!」

「いい角度で飛んでいったろ?」

「メジャーリーグでも目指す気か!」


 2人が話している間に、りょーちゃんがシャトルを取りにいく。


「お? その拾い方かっこいいな!」


 その行動を見ていた田中くんが反応する。

 地面にあるシャトルをラケットだけで拾うこと。


「慣れれば簡単だ」


 ラケットをくるりと返して、シャトルを田中くんへと放り投げる。


「渡し方までかっけぇ!」 

「どうやんだそれ」


 いったん試合を中断して、カッコイイ拾い方講座が開催される。




「お、できたわ!」

「これはいいな! 腰への負担が軽くなるぜ!」


 なかなか好評だった。


『おーい、試合しねーなら場所空けてくれ』

「おっと、そうだった」


 外野から声がかかったので、試合を再開する。


「どうやら、本気を出す時が来たようだな」

「くくく、恐怖に震えるがよい」


 何か秘策があるのか、2人が不敵に笑う。


 ぽーん。


「ぬぐぉおおおっ!」


 スカッ。


「なぁーぜだぁああ!?」


 頭を抱えて崩れ落ちる田中くん。

 結局、ほとんど自爆する形で勝負がついた。


「くっ、肩の爆弾さえなければ……」

「腰の調子さえよければ……」


 患部を押さえてうずくまる。

 2人とも調子がよくなかったらしい。

 激しく動いていたみたいだけど、大丈夫かな……?


『田中と鈴木をやった程度で、いい気になってもらっちゃ困るな』

『しょせんは、帰宅部のもやしどもよ』

「お、お前たちは……!?」


 伊藤くんと高橋くんが、ゆっくりと立ち上がる。

 文芸部に入っている2人。


「本当の実力ってやつを見せてやるよ」

「神に祈りをささげておくんだな」




「こ、こんなはずでは……」

「どこで間違えたんだ……」


 がっくりとヒザをついて、うなだれる2人。

 ほとんどりょーちゃん1人でなんとかしてくれた。


「なにしてんだ、お前ら」

「小林!」

「救世主きた! これで勝てる!」

「俺たちのヒーローだ!」

「うぉー! 小林ぃー!」


 負けた4人が小林くんを取り囲む。


「なんなんだ、こいつら……」

「あいつを倒してくれ!」

「カタキを取ってくれ!」

「お願いします小林様!」

「俺の尻でよければ、もんでいいから!」


 必死に勧誘している。

 小林くんは、現役のバドミントン部。

 しかも、学年で1番の長身で、りょーちゃんよりも大きい。

 スポーツ万能のりょーちゃんでも、さすがに勝てないかも。


「別に俺は恨みとかないし」

「リョウに勝てば、女子にモテるぞ」

「……!」

「周りを見ろ。女子の連中が、チラチラこっちを見ているだろ?」

「……」

「ここで注目を集めて、リョウの野郎をぶっ飛ばせば、お前がヒーローになるんだ」

「……この俺が?」

「ああ、お前がナンバーワンだ」

「……しょうがない。そこまで言うなら、やってやろうじゃないか」


 小林くんがやる気になったらしい。


「りょーちゃんとやるなら、ボクは外れたほうがいいかな?」

「いや、2対1でいい。ちょうどいいハンデだ」

「小林かっけぇ!」

「さすがオレタチの小林だぜ!」

「ボッコボコにしてやれ!」

「素敵! 抱いて!」


 野太い歓声が届く中、小林くんとのハンデ戦が始まる。


「サービス権は?」

「そっちが好きに決めていい」


 余裕を見せる小林くん。

 りょーちゃんは、レシーブを選択。


「いくぞ」


 そう宣言すると、ネット際ギリギリの低いサーブを放ってくる。


 パコン!


 逆方向の、遠い場所にレシーブする。


「甘い!」


 すぐに反応し、長身を生かした力強い返球をしてくる。

 やっぱり、打球の速度が全然違う!

 でも、りょーちゃんも負けてはいない。

 しっかり返す。

 しばらく2人のラリーが続く。


「これならどうだ!」


 ドロップショットで、手前に落としてくる。

 近くにいたボクが拾いに行く。

 けど……。


「もらった!」


 高く上げすぎてしまった。

 ラケットを振りかぶった小林くんが、目の前に。

 下がって受けようとするけど、間に合わない!


 ドシュゥ!


「っ!」


 強烈な一撃が右腕に当たる。

 なんとか返そうとしたけど、全然間に合わなかった。


「あっ、悪い……」

「ううん、大丈夫」


 手加減してくれたとは思うけど、それでも迫力が違う。

 来るとわかっていても反応できなかった。

 とあるゲームで540連ぶりにガチャから虹が出ました(虹確率1%)。

 どうにか致命傷で済みました。

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