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性別がヘン2

「……」


 本日2度目のログイン。

 先ほどの路地裏。

 前回落ちたところから始まるようだ。

 まずは、自分の服装、キャラクター情報をチェック。


「……」


 やっぱり、夢じゃなかった……。

 ログインし直したら……という期待もあったんだけど、結果はご覧のありさま。


「来たか」

「りょーちゃん?」


 すぐ後ろから声がかかる。


「待っててくれたの?」

「調べ物するついで」


 ちらっと手元をのぞき込むと、スキル表の一覧が出ていた。

 ボクもスキル振りを考えないと……の前に!


「運営さんに連絡しなきゃ……ナビ子さんに聞けばいいのかな?」

「はいはーい」


 ぬるりと現れる。 


「えっと、あの……ボクの性別が間違ってるようなのですが」

「と、申されますと?」

「現実のボクは男なのに、なぜか女性として登録されてしまったみたいで……」

「あー、なるほど。性別判定の問題ですね。同じような報告が何件か上がってますよ」

「そうでしたか」


 よかった。

 ボクだけじゃなかったんだ。

 たくさん報告があれば、きっとすぐに対処してくれるよね。


「あー、今GM(※1)の中の人がこっち来れそうですよ。せっかくだから、直接不満をぶちまけてやりましょう」

「わざわざ呼び出しちゃってもよいのでしょうか……?」

「どうせ愚痴を聞くためだけの存在なんですから、遠慮なくののしってやればいいんですよ」

「ただのバグ報告ですけど」

「お、到着するみたいなんで、あとはごゆっくりー」


 ナビ子さんが、光の中に消えていく。

 それと入れ替わるように、大きな人影が現れた。


『いつもMOFメモリーオブファンタジーをご利用いただきありがとうございます。GMのタスティンです』

「こ、こんにちは!」


 わぁ。

 生のGMさんだ。

 他のゲームだと、イベントの時くらいしか会ったことがない。

 ちょっと感動する。


『不具合の報告があると聞いておりますが』

「はい! その……実際のボクは男なのですが、間違った性別で登録されてしまったようです」

『キャラクター情報の不具合ですか?』

「そうです」

『……確かに、そういった報告がありますね。現在社内で検討中です』

「ありがとうございます。修正はどれくらい時間がかかりそうですか?」

『具体的な日にちまでは答えられませんが、出来るだけ早く対応したいと思っております』

「そう、ですか……」


 どうやら、即日対応できるわけでもないみたい。

 それまでは、この状態で過ごさなきゃいけないということに……。


『弊社のスキャンシステムにより、美容手術を受けた方や性同一性障害の方などには不便を強いる結果となってしまい、誠に申し訳ないと思っております』

「こちらこそ、わざわざ呼び出してしまって申し訳あり……えっ?」

『みなさまの意見を真摯に受け止め、今後の運営、開発に生かせるよう全力を向けて参ります』


 あれ?

 今、性同一性障害がどうのって……。


『今後ともMOFをよろしくお願い致します』

「ちょ、ちょっと待ってください!」


 あわてて呼び止める。


「そうじゃなくて、本当に男です!」

『はい。もちろんあなたの人格を否定するわけではありません。現実では男性として過ごしていたとしても、遺伝子情報から女性と認識してしまうシステム上の問題ですから』

「遺伝子も男です!」

『こちらの問題につきましては、対応状況を順次公式ホームページに掲示して参ります。どうかご了承下さい』


 全然伝わってない気がする!

 どうやら、最初にやったスキャンの情報が正しいと思っているみたい。

 そこから間違っているのに……。


「性別を詐称したら、どうなるんだ?」


 ずっと黙って話を聞いていたりょーちゃんが、口を開いた。

 そうだ。

 りょーちゃんから説明してもらえれば、GMさんにもわかってもらえるはず!


『もし万が一、クライアントの改造やサーバーへの不正アクセスなどで意図的に情報を偽装した場合、アカウントの停止や強制退会処分となる恐れがあります』

「つまり、ウソを言っているわけじゃないし、このままプレイして問題ないんだな?」

『はい。そうしていただけると、こちらとしても助かります』

「わかった」


 その説明で納得したのか、おとなしく引き下がる。

 あれ?

 事情を説明してくれるんじゃ……?


『呼び出し時間の制限がありますので、これにて失礼します』

「あっ」


 深く一礼をすると、光の彼方へと消えていった。


「……」


 がっくりとひざを落とす。

 違うのに……。

 ボクは違うのに……。


「よかったな。GM公認で堂々とプレイできるぞ」

「よくないと思う……」


 根本的な問題が解決していない。

 堂々と、普通の男としてプレイしたい。


「GMを説得するのは難しいだろう。自社のシステムに絶対的な自信を持ってるようだしな」

「バグがある可能性も考えてほしい……」


 実際にこうしてバグが起きているわけだし。


「どうする?」

「どうするって……?」

千里(ちさと)がどうしても嫌だと言うなら、他のゲームを探すが?」

「それは……」


 この姿でゲームを続けるのは、もちろん抵抗がある。

 いくらGMがオッケーだと言っても、やっぱりボクは男なわけだし。

 でも……。


「辞めるか?」

「……やりたい。まだチュートリアルしかやってないし」


 りょーちゃんがやっている話を聞きながら、ずっと期待して待っていた。

 このまま辞めてしまうのは、もったいない。

 お小遣いだって、全部つぎ込んじゃったし。


「なら、さっそく行くか」

「行くって、どこに?」

(インスタンス)(ダンジョン)(※2)が手軽だな」

「任せるよ」

「わかった」


 りょーちゃんが走り出す。

 それについて行こうとしたところで、足を止める。

 路地裏から出るということは、人目につく場所に行くということで……。


「りょ、りょーちゃん」


 建物の陰から呼びかける。


「どうした?」

「女装してる変な男だって思われないかな? やっぱり変だよね?」


 あくまで登録情報が変わっているだけなので、見た目は何も変わっていない。

 このまま歩いていたら、絶対に変な人だと思われちゃう!


「GMも言っていたが、プレイヤーが自在に性別を変えられるわけじゃない。たとえ見た目がゴリラでも、女性用装備しているなら女だと思う」

「で、でも……」

「気にすることはない」

「あ、りょーちゃんっ!」


 1人にされるのは嫌なので、りょーちゃんから離れないようについていく。

 うう、人がいっぱいいる……。

 怖くて会話ログとか見れない。




『ねぇ、見て見て。あのカップル初々しくてかわいい』

『どれどれ……あー、うつむいたまま彼氏の服の端っこを持って後をついてくとか……むしろ仕上がってますわ。プロの動きですわ』

『小学生と……高校生くらい? 兄妹じゃない? カップルだとしたら、若干犯罪臭が……』

『てか、男の子のほうイケメンじゃね? アタックしちゃう?』

『やめとけ。二の腕たるんだアラサーとか見向きもされんだろ』

『イケメンがなびくレベルだったら、三十路の女3人が集まってこんなゲームしてないだろ』

『『それな!』』


『あぁん? カップルだと?』

『ゲーム内でもイチャツキやがって……もげろ』

『はー、いいなぁー。俺もあんなかわいい子に支援されてみてーな』

『ヒールスキル5の回復アップ装備で全身固めた俺が癒してやるよ』

『腹のたるんだおっさんの支援はいらねぇよ! かわいい女の子くれよ!』

『だからって、さすがにアレは犯罪じゃね? どう見ても小学生じゃん』

『だったら、お前はハゲかけたおっさんに支援されて嬉しいのか?』

『かわいいようじょとイチャイチャしたいに決まっている』

『GMさーん! こいつらです!』

『お前が一番ガン見してたよな?』

『ロリコンで何が悪い?』

『『GMさん! 俺たちです!』』




「着いたぞ」

「ここ?」


 無心になって追いかけていたら、いつの間にか到着していたらしい。

 まだ怖くて周りの人の反応が見れないけど、今のところ騒がれてる感じはなさそう。

 大丈夫だよね……?


 ピコーン。


『krbrx様からPT(パーティー)申請が届きました』


 そういえば、まだフレンド登録しただけだった。

 『はい』を選ぶと、左上のほうにりょーちゃんのステータスが表示された。



 Lv:31

 HP:65/65

 MP:65/65



「レベル差かなりあるけど大丈夫?」


 チュートリアル終わった時点で、1つしか上がってない。

 その差29。

 このゲームの公平パーティーのレベル差って、いくつまでなんだろう?


「Lv差による経験値増減はない。公平設定なら同じ経験値が入る(※3)」

「そうなんだ」


 そういうことなら、りょーちゃんを待たせなくて済むかも。

 だいたいどんなゲームでも、りょーちゃんレベル上げ早いし。


『インスタンスダンジョンの受付はこちらになります』


 NPCのお姉さんが、声をかけてくる。

 目が合うと、にっこりと微笑んで手を振ってきた。


「準備はいいか?」

「あ、スキルまだ取ってない」


 せっかくヒーラーに転職したんだし、ヒーラーっぽいスキルは取っておきたい。


「必須スキルって何かある?」

「支援なら『ヒール』『ブレス』『DC』『マナヒ』あたりだな。あとは何に特化するかで変わってくる」

「う、うん?」

「ヒール、ブレッシング、ディレイカット、マナヒール」

「えーと……」


 スキルタブを開いて、それらしきスキルを探す。


「あった」


 今、取得できるのは……『ヒール』と『ブレス』だけっぽい。


 『ヒール』は、対象1人のHP回復。

 『ブレッシング』は、対象1人のステータス増加。


 他のゲームでもおなじみの効果。

 スキルツリー構造(※4)になっているので、他のスキル取得はもう少し先になりそう。


「スキル取ったよ」


 とりあえず、その2つを取得。

 ついでに、見習いロッドも装備しておく。


「行くか」

「うん!」


 さあ、いよいよゲーム本番スタート!

 この作者はとても小心者なので、投稿ボタンを押すときはいつもワキ汗びちょびちょになってます。


※1、GM:ゲームを運営している会社の中の人。

 ゲーム内でのトラブルを解決したり、悪い人を処分したり、ゲームに対する文句を言われたり、権限外の要望を言われたり、『おもしろいことしてよ』と無理難題ふっかけられたり、イベントの進行を邪魔されたりで大変だったりする。


※2、ID:インなんとかダンジョンの略。

 インスタントなのか、インスタンスなのか。

 違いがよくわからないけど、なんとなく使っている。

 他のプレイヤーが入ってこれない自分たちだけダンジョン。

 現実世界で説明すると、カラオケの個室。

 でも、たまに酔っ払いが間違えて乱入してくることがあるので、完全なID化は難しい。


※3、パーティー設定:公平、個別の2種類。

 公平だと、パーティー内全員で同じ量の経験値を分配。

 個別だと、与えたダメージで経験値の比率が変化。

 ドロップアイテムも同じように変更可能。

 私の端末に狙ったSSRキャラがガチャから出てこないのは、きっと個別設定になっているせい。


※4、スキルツリー:スキルがツリーしてること。

 いろいろと枝分かれしていてゴチャっとしている。

 最初から全部のスキルは解放されてないので、欲しいスキルがあるなら前提スキルを調べておくのがおすすめ。

 男同士を取得すると、メガネや筋肉が解放され、さらにバリタチ坊主とかドM淫乱ヤクザとかあほかわビッチなどに発展してくのと同じ感じ。

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