ステータス振り
「りょーちゃんは、ぬいぐるみを取ってある?」
「もらってないぞ」
「えっ?」
食べ物だったら、もらえるって……。
「ちょうどいいところに石ころがあった」
「いじめたらかわいそうだよ!」
食べても大丈夫な物にしようよ!
さっさと攻略したい人なら、料理を作る時間も惜しいというのはわかるけど。
「歯ごたえがあるって言ってた」
「石だからね!」
食べ物にはない歯ごたえだと思うよ!
「ちなみに、ぬいぐるみは10Gで売れる」
「換金するほどでもないね」
せっかくもらったんだし、保管しておこう。
見た目もかわいいし。
「ステータスは……どうしようかな」
ステータス振りが解禁されたのはいいけど、何を優先させるべきか悩む。
支援型だと……。
ヒール回復量が伸びる『INT』
MP最大値が増える『MND』
詠唱時間が減少する『DEX』
HPを増やして安定性を高める『VIT』
この辺りが候補。
物理ダメージが伸びる『STR』と、クリティカルが出やすくなる『LUK』は、そこまで必要なさそう。
「迷わずS全振りだが?」
「りょーちゃんはそうだろうけど……」
同じように全振りしたら、すぐにやられる自信がある。
VITに全振りしたら耐えそうだけど、今度はただの的になりそう。
「IMDに振っとけば間違いない」
「下げるなら何がよさそう?」
「SLは切ってもいい」
「やっぱり」
攻略サイトの支援おすすめステータスでも、そんな感じだった。
「重鎧着て盾持つならS欲しいし、魔クリ型支援目指すならL欲しいが」
「そういうこと言われると、また悩んじゃうんだけど……」
いろいろ考えていたら、フラットバランス型になってしまいそう。
あとで振り直しもできるみたいだし、まずはやってみよう。
ステータス画面を開いて『割り振り』を選択する。
すべてのステータスが、中央である『5』にセットされている。
「うーん……」
現状で一番欲しいのは、MPかな。
2人分の支援スキルと弓スキル使ってるだけで、MPがカツカツだし。
方向性が決まったので『MND』を1つ増やす。
『下げるステータスを選んでください』
『MND』以外のステータスがピカピカと点滅して、動かせるようになる。
ひとまず『STR』を下げて、OKボタンを……。
「あれ?」
反応しない。
あ、そういえば。
前に言われたことを思い出す。
ステータスを上げる場合は、他をより多く下げなきゃいけなかったはず。
『LUK』も下げると、OKボタンが押せるようになった。
『所持量が変化するステータスが含まれています。所持上限を超えたアイテムは倉庫(※1)へ送られます』
『STR』に所持量増加効果もあったっけ。
倉庫もあるみたいだけど、町のどこかにあるのかな?
あとで探してみるとして、ひとまずOKを押す。
『次回レベルリセット時まで変更できなくなります。よろしいですか?』
確認メッセージが出てきたので、そこもOKを押す。
ちゅるりーんという効果音が流れ、ステータス割り振りが完了する。
「えーと……」
アイテム数を調べる。
ポーション28個。
復活薬9個。
大幅に減ってるわけじゃないけど、地味に減っていた。
同じ幅で減っていったとすると『STR』が1の時は……。
ポーション22個。
復活材6個。
こうかな?
ちょっと不安になる数値。
それまでに『たくさん入るカバン』か『高回復ヒールとリザレクション』を用意しておきたい。
魔法主体でいくなら『マナヒール』を上げて、MP切れをしないようにしないと。
スキルポイントも増えていたので、リザレクションの前提を取っていく。
ヒールを2→3
マナヒールを1→2
もう1つ上げれば『ダメージプラス』が取れるので、優先して覚えるようにしよう。
このスキルも、前提の1つになっている。
「倉庫は……どこだろ?」
「噴水近く」
「えーと……あった」
マップに表示されていた。
「手数料とか必要?」
「自分で出し入れする分にはかからない。インベが満載で倉庫に郵送する場合や、装備落としたまま死に戻りした場合はかかる」
「じゃあ、今ポーションが送られた分は必要になるのかな?」
「店売りで1k以下の物は無料」
「よかった」
所持金が少なすぎて、引き出せなくなるところだったよ。
「お金も預けることできるの?」
「できる。所持金も上限あるから、ある程度たまったら預けとくといい」
「上限あったんだ」
勝手に収納されるから、特に気にしてなかった。
「初期だと100k。安いカバンなら500k。高いやつなら10Mまで入る(※2)」
「露店で売ってる100万Gのアイテムとかは、高いカバンを用意しないと買えないの?」
「倉庫に金が入ってれば引き落としになる。その場合は手数料取られる」
「カバンがあればお得ってことだね」
「そうなるな」
所持量を増やすためにも、早めに入手したい。
いつになるのか、まったくわからないけど。
『ただいまー』
「あ、お母さんが帰ってきた」
外の世界の音が聞こえてくる。
時間的もいい頃合いだし、いったん落ちようかな。
「夕食の準備してくるよ」
「わかった」
ログアウトして、居間へ向かう。
「ちーちゃんっ!」
両手の荷物を放って、抱きついてくる。
「おかえり、お母さん」
「んー、ちーちゃんのにおいだー」
クンカクンカと鼻を鳴らす。
「帰ってきたら、ちゃんと手洗いしないと」
「連れてってー」
「すぐそこなんだけど」
洗面所まで連れていって、手洗いとうがいを手伝う。
「ちーちゃん、ちーちゃん!」
居間まで走っていき、何かを取り出す。
「どう!?」
パッと広げたのは、1枚のワンピース。
リボンやフリルが付いていて、少し子供っぽいデザインな印象。
お母さんは、なんというか……あんまり大人っぽい服が似合わない。
これくらいでちょうどいいのかも。
「うん、かわいいと思うよ」
「はい!」
「?」
その服を手渡される。
「着てみて♪」
「意味がわからないよ?」
「だって、かわいいでしょ?」
「ますますわからないよ」
ボクがコレを着る理由がわからない。
「着てるところが見たいの!」
「お母さんが着ればいいような?」
「自分で着ても、よく見えないし。後ろとか」
「鏡持ってくる? 写真で撮ってもいいよ」
「ちゃんと自分の目で確かめたいの! ふわふわ感とか」
「うーん……?」
ボクにはよくわからないけど、細かい部分でこだわりがあるようだ。
ハンガーにかけて見るだけじゃダメなのかな?
「だから、お願い! ちーちゃん!」
「そう言われても……」
「ちょっと確認するだけだから!」
「……」
手元のワンピースを、じーっと見る。
お母さんの好みだけあって、全体的にふわふわしている。
自分が着る姿など、想像したくもない。
「着ちゃう?」
「そもそも、ボクが着れるとは限らないよ? 最近は、背が伸びてきて『男らしく』なってきてるし」
「じゃあ、オッケーだね!」
「ダメな方向だったんだけど!」
男らしさアピールも、お母さんには伝わらなかった。
「……ダメなの?」
「だって、恥ずかしいよ」
「誰もいないから大丈夫だよー」
「お母さんがいるし」
「……ダメ?」
「……あんまり期待しないでよ?」
「ちーちゃん、愛してる!」
顔を押しつけるようにして、べったりと抱きついてくる。
今までの経験上、お母さんが黙って納得してくれることはない。
長引かせるよりは、さっさと終わらせちゃったほうがいい。
そろそろ『ボクには似合わない』ということをわかってくれるかもしれないし。
「あ、下着もあるよ?」
「必要ないよね!?」
これ以上変なことをされないうちに、さっさと服を着替えちゃおう。
だいたいイロモノ扱いされるLUKさん。
このゲームでも極振りするとかっこいい(強いとは言ってない)。
※1、倉庫:カバンがいっぱいでどうにかしたいけど、売ったり捨てるには惜しい品を保管しておく場所。
たいていの場合は、そのまま使われずに倉庫の肥やしとなる。
現実世界で説明すると、何かに使うかもしれないと残してあるけどまったく使うことがない大量の紙袋とかレジ袋。
※2、カバンの種類:初期状態では容量も少ないが、グレードアップすることにより容量や見た目が変化していく。
生産をメインでやる人はとにかく大容量が必要になるので、見た目がカートとか馬車になっている人も。
現実世界で説明すると、ブリーフ1枚 → 上下ジャージ → ポケットがたくさんあるワー○マンの作業着。




