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このゲームで一番危険なダンジョン3

 カサカサ……。


 倒す順番と、行動の優先順位。

 よく考えながら、しっかりと立ち回らないと。


 チュウチュウ。


 黄ふさ獣がやってきたので、詠唱される前に弓を構える。


 バリバリバリ……ぶすり。


 詠唱中の無防備なところに、矢を当てる。

 そのすきに、近くにいた黒つや虫に攻撃される。

 でも、魔法よりは痛くない。

 単体だけなら連続攻撃してこないし。


 チュウ!


 詠唱を止められた黄ふさ獣が、その場にふせる。

 体が光り出す。


「!?」


 きりもみ回転しながら、頭から突撃してきた。

 反射的にステップで避けようとするけど、足元にいる黒つや虫のせいでステップが阻止される。


 どふーん!


 小さな体からは想像できない威力で、後方に突き飛ばされる。

 強制ダウン中に状況を確認。

 りょーちゃんは、4匹ほどの黒つや虫と格闘中。

 こちらには、黒つや虫2匹と黄ふさ獣。

 黄ふさ獣の体が青白く光り出しているので、まだ何かスキルを使ってきそう。


「っ!」


 起き上がるのと同時に、その姿が見えなくなる。

 とにかくステップをすると、すぐ横を風が通り抜けていった。

 なんとか回避できたっぽい……?


 どふーん!


「!?」


 背後から衝撃を食らい、前方に押し倒される。

 2体いた!?

 すぐに周りを確認するけど、黄ふさ獣は1匹しかいない。

 そうなると、高速の移動系スキル?

 一連の攻撃で、HPが2割くらいまで減っている。

 魔法だけじゃない。

 物理攻撃も強い!


 チュウ!


 再びその場にふせる。

 これは回転突進だったはず。

 黒つや虫に邪魔されなないよう、距離を取る。

 早く対処法を考えないと、また黒つや虫が……3匹に増えてる!

 足止めされた時点で終わってしまう。

 回転突進のタイミングをはかって、うまくステップを……。


 バリバリバリ……。


 魔法使ってる!

 フェイントもしてくるようだ。

 この距離で魔法を連発されたら、ステップだけじゃ回避しきれない。

 どう動くか迷っているうちに、詠唱が終わり……。


 ドゴォ!


 背後に忍び寄っていたりょーちゃんが、一撃で黄ふさ獣を刈り取る。

 助かった。

 残りの黒つや虫を誘導する。

 途中で追いつかれて攻撃されるけど、ポーションのじんわり回復でギリギリ生き残る。


 ズババババ!

 

 りょーちゃんの範囲で、まとめて撃破。

 なんとか切り抜けられた。


「ありがとう、りょーちゃん。助かったよ」

「そっちで黄ネズミのタゲ取ってくれたからな。そうじゃなきゃ死んでた」

「ボクだったら、黒つや虫4匹の時点でやられてるけど」

「火力の違い」

「囲まれると、攻撃すらできないんだけど……」


 範囲スキルより詠唱時間が短いヒールでも、近くでまとわりつかれたら発動できない。

 りょーちゃんはどうやってその時間を確保してるんだろう?

 火力の違いより、中の人性能の違いを実感する。


ダブステ(ダブルステップ)(※1)や移動技もあるからな」

「りょーちゃんのスキル構成って、どんな感じなの?」


 『短剣一撃特化型』というのはわかるけど、それ以外に何を取っているのかわからない。

 ほとんど火力用なんだろうけど。


「短剣の一撃ツリーとパッシブ、刀剣共通のソニブ(ソニックブーム)ムースラ(ムービングスラッシュ)リミブレ(リミットブレイク)、斧でバーサーク、あとは冒険者のダブステや範囲だな」

「あの範囲攻撃って、冒険者スキルだったんだ」


 短剣で斬りつけているから、てっきり短剣スキルだと思っていた。


「武器がないとダブルラリアットになる。長ドス持ち愛用のスキル」

「どす?」

「刀のこと」


 普通の剣と違って、何か特殊効果でもあるのかな?

 ゲームによって仕様が違うし、あとで調べてみよう。


 カサカサ……。


 また近くで黒つや虫が現れた。

 会話をやめて、迎撃の準備をする。


「?」


 なぜかこっちに向かってこないで、奥のほうへと移動していく。

 他に誰かいるのかな?


『インフェルノ!』


 地面が赤く染まり、灼熱の炎が噴き上がる。

 その上を通った黒つや虫が、なすすべもなく倒れていく。

 炎の向こうから現れたのは、1人の男性。

 動きやすそうな軽装に、短めの杖を持っている。


『ブレス!』


 自己支援をしてから、黒つや虫が集まっているほうへ歩いていく。


『インフェルノ!』


 細かく動いて位置を調整し、炎の中へと敵を集めていく。

 5、6匹の黒つや虫が、まとめて倒れていく。


『ヒール!』


 まとめる時に受けたダメージは、自己ヒールで回復。

 魔法&支援型。

 安定した戦い方をしている。


「ここって、1人でもいけるんだね」

「設置魔法の詠唱タイプだな。インフェの持続ダメージはSLv(スキルレベル)依存だから、I切って速度重視にしてる」

「思い切った型だね」


 魔法使いの主力であるINTを切るとなると、かなり特化したスキル構成になりそう。

 言われてみれば、INT依存であるヒールの回復量は少なかったかも。


「黒つや虫は火属性弱点だから、相性はいい」

「そういえば、属性もあったっけ」


 属性があるスキルはヒールとブレスくらいなので、ボクにはあんまり関係がない。


「属性レベルにもよるが、最大で2倍くらいのダメージ差になる(※2)」

「2倍はすごいね」

「条件厳しいから1.5倍くらいまでが現実的」

「1.5倍でも大きいような?」

「そうだな」


 属性がある魔法系にとっては、狩場選びも重要になりそう。

 2人がかりでも安定してないのに、ソロでさくさく狩っている。


「ちなみに、設置スキルにも弱点がある」

「?」


 りょーちゃんが示す方向に、黒いネズミがいた。

 ノンアクティブのモンスターなのか、攻撃せずにうろうろしている。

 移動範囲は結構あるようで、魔法使いの人のほうへ歩いていく。

 そして、設置してあるインフェルノの中に入っていった。


『!!』


 その瞬間、黒いネズミがアクティブに切り替わる。

 後ろ足で立ち上がり、前足を振る。


「えっ?」


 魔法使いの人が倒れる。

 何かのスキル?

 エフェクトや効果音なんかは、何もなかった。


「魔法カウンターの即死」

「即死って……」

「しかも、一定時間その場復活できない呪いつき」

「とんでもない攻撃だね」


 町で復活を選んだのか、すーっと魔法使いの人が消えていく。


「対処法はないの?」

「即死耐性積んでくるか、視界に入らない場所まで逃げるか。よほどの装備がないと耐性は50%くらいまでしか盛れないが」

「運に頼るしかないんだ」


 装備を全部耐性面でそろえちゃうと、今度は攻撃面で問題が出てきそう。


「カウンターだから、そもそも魔法当てなきゃ使ってこない」

「じゃあ、物理で?」

「物理攻撃当てると取り巻き召喚してくる。5匹」

「取り巻きも強かったり?」

「本体と同じくらい。その辺のボスより強い」

「それって……倒せるの?」

「βの時に数百人規模で討伐したことはあった。通常MOB扱いだからドロップがまずい」

「だから放置されてるんだ」


 ドロップの中身や経験値がよければ、ここの最下層のボスみたいに人が集まるはず。

 ただ強いだけのモンスターなら、誰も手を出さなくなる。


「こっちに来たけど……?」

「即死は死にボーナスもないし、放っておくのがいい」


 こっちから攻撃しない限りは大丈夫。

 こうやって近くで見ると、愛らしい姿をしているかも?


「?」


 立ち上がって、前足を広げてくる。

 攻撃モーションではなさそうだけど、なんだろう?


 くいくい。


 手招きをしてくる。

 大丈夫……なのかな?

 恐る恐る近づくと、ぎゅっと抱きしめてきた。

 思ったより、ふかふかしてる。


 ぶんぶん。


 さらに握手をしてくる。

 すごくフレンドリー。


 ぴゅるるーん。


 前足を振ると、かわいらしい効果音が聞こえてきた。


「?」


 何か支援をもらった?

 自分のHPの横に、支援マークが付いている。


『ハハッ』


 用事が済んだのか、鳴き声のようなものを残して去っていった。


「いろいろ支援してもらえた」

「その行動は知らなかった」


 りょーちゃんでも知らない行動だったようだ。

 初心者用のお助けキャラなのかな?

 せっかくたくさんの支援がもらえたんだし、このままレベルを上げちゃおう。 

 いつの間にか19まで上がっていたし、20まであとちょっと。

 危険なダンジョンのイメージをツイッターに上げました。

 モザイクですら危険だったので黒塗りになっています。

https://twitter.com/yosagenanamae/status/1138448862518108162


※1、ダブルステップ:ぴょんぴょんする。

 ステップのスキルレベルが5まで上げると、2連続でステップできるようになる。

 連撃を避けられるようになるので、対応できるパターンが大きく増える。

 ただ、ダブルステップしたあとは、ヒザを負傷したおっさんが飛んだくらいの硬直時間が発生するので、むやみに使うと強烈な確定反撃をもらうことになる。


※2、属性値: 同じ属性でも強さが違う。

 属性Lv1~10まである。

 とろ火~中火~チャーハンパラパラ、の違い。

 数値が高くなるほど有利属性に対する与ダメージ、不利属性からの被ダメージが大きくなる。

 ただ女の子が好きという軽い属性の人より、裸バンソーコーでランドセル背負った女児のリコーダーになって熱い吐息を浴びながら『ク○リネットをこわしちゃった』を奏でたいといった大盛属性の人のほうが、世間からの視線が冷たくなるのと同じ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ま、まさか最後のネズミは… 夢の国からの出張者か?そうだとしたら…… やめ、やめろぉ!!なんだ、なにがあっt((
2020/08/10 07:42 みるみるみるきー
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